手札看破とフェンリルさんで最強へ~魔法はカードだと真理に到達してない世界でデッキ構築!~

白慨 揶揄

文字の大きさ
22 / 58

第22話 八つ当たりにお漏らしに

しおりを挟む
「ふ、ふざけんなぁ! 本当は俺達のパーティーが【選抜騎士】に選ばれるはずだったのに、アディを金で引き抜きやがって――!!」

 魔法を防がれたアルさんは、仕切り直しと言わんばかりに、バックステップで距離を取る。こちらとしては、距離を取って貰えた方が有難い。
【斬撃波】の他にも、【爆発《ボム》】と【三連火弾《トリプルファイア》】を選択してるからね。

 対するアルさんの魔法残数はゼロ。
 手札看破で見抜いたから間違いない。

「くそ……。くそぉ!! よくも俺の計画をぉ!」

 折角、距離を取ったというのに、腰に携えた剣を引き抜き振り上げる。その動きにも無駄はなく、日々努力していることが伝わってくる。

 けど、どんなに頑張ろうと剣じゃ魔法には勝てない。

「てい!」

 選択していた【爆発《ボム》】をアルさんの足元目掛けて投げ付ける。地面に着弾した魔法が、ボカンと熱と風を生み出した。
 直撃すれば、オーガも吹き飛ぶ魔法だ。爆風だけでも身体を吹き飛ばす威力はあるようだ。

「ひ、ひぃぃぃぃぃ!」

【爆発《ボム》】に飛ばされたアルさんは、背中から木の幹にぶつかる。爆発の威力で張り付けになっていたが、やがて、枝から落ちる枯葉のように地面に倒れ込んだ。

「ば、化物ぉ……!」

 ガタガタと視線を震わせて立ち上がろうとする。だが、腰が抜けているのか、上半身だけしか動かないらしい。
 動く上半身を使って、深く頭を下げる。

「許してくださいぃ。俺が悪かったんですぅ」
「いや、そんな大袈裟なことしたつもりはないんですけど」

 化物と言われることはない――と思ったけど、魔法が30枚使えるだけで充分、その領域に足を踏み入れているのか。

 全てロウが僕に与えてくれた力。

 改めてロウって何者なんだろ? 何度か聞いてみたけどいつも話を反らされる。リュックの上で眠る自称フェンリルさんは今も気持ちよさそうに眠っていた。

 ロウと話すのはまた今度にしよう。
 今は、アルさんと決着を付けないと。

「大体、【炎の闘士】からアディさんが抜けたのは、僕と関係ないじゃないですか」

 引き抜いたのはバニス。
 むしろ、アディさんの引き抜きに成功したから、僕を追放するに至ったのだ。結果的には、僕と残された【炎の闘士】のメンバーは被害者と呼べるのではないか?

 裏切りの誘いをしたバニス。
 裏切りを決意したアディさん。

 利害が一致することはあっても、争う理由にならないはずだ。
 僕の問いかけに顔を上げたアルさんは、「へへへ」と笑う。

「そ、そうなんですけど……。つ、つい、カッとなって。だから、どうか許してください!」

 ガバァ~。

 今一度、膝を付き上半身全てを使って、仰ぐように頭を地面に付けた。

「……分かりました。許しますから顔を上げてください」

 僕は近付き手を差し伸べる。
 【炎の闘士】は街で1、2を争うパーティーだったことは事実。そのリーダーが僕なんかに頭を簡単に下げない方がいい。
 街に近い森だ。
 誰が見てるか分からないから。

 だが――アルさんは近付く僕に怯えていた。

「ひ、ひぃいいいいい! ごめんなしゃーい」

 涙と恐怖で顔をぐしゃぐしゃにしたアルさんは、最初に会った時とは別人のようだ。
 星ではなく涙と鼻水が宙を舞う。

 アルさんが最初に不意打ちをしたように、僕もやり返すと思ったのだろうか。恐怖で震える目は、やがて動きを止めて色を失う。

 バタン。

 アルさんは倒れた。
 どうやら意識を失ってしまったらしい。しかも、余程怖かったのか、足元には水溜りが作られていた。
 少し……黄色いよね……。

「こ、困ったな……」

 いくら、先に攻撃を仕掛けてきたとはいえ、意識を失った相手も森には置いて行けない。この森に魔物は少ないが、存在はしている。
 一人で寝ていたら喰われてしまう可能性はある。

「放っておくわけには行かないよね」

 仕方がない。

「【選択領域】、発動!!」

 ブンと目の前に6枚の魔法が表示される。
 
【強化の矢】【腕力強化《小》】
【強化の矢】【泡弾《フォームショット》】
【治癒】  【腕力強化《中》】

「よし、丁度良く、【腕力強化】系が二枚手札に揃ったぞ」

 二枚選んで【選択領域】を閉じる。アルさんが怪我をして意識を失ったのであれば、【治癒】で良かったんだけど、外傷は治せても精神は治せない。

 だから、街までアルさんを【腕力強化】で、運び休ませようと言うのが考えだ。

 アルさんを担いで街に戻っていると、ロウが目覚めた。

「あれ? なんで街に引き返してんだ? ってか、こいつ誰だよぉ!」

 担いだアルさんの顔が目の前にあったからだろう。
 ロウが驚き叫んだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...