手札看破とフェンリルさんで最強へ~魔法はカードだと真理に到達してない世界でデッキ構築!~

白慨 揶揄

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第48話 三つの斬撃

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「動けぇ!」

 全身の力を叫びで呼び起こそうとするが、僕の闘志が身体に届くことはなかった。膝は地面に貼りつけられたみたいに動かない。
 駄目だ。
 捕まる!!

 触手が僕を掴もうとする。だが、巻き付こうとした瞬間、

「させるかよ!!」

 ロウが僕に体当たりをして、身代わりとなった。

「グ、アアアア!!」
「ロ、ロウ!? なんで!?」
「なんでって、言ったろ。今、クルルを助けられるのはお前しかいないんだ。だから、お前が捕まったら終わりだ。俺の心配はいいから、なんとか凌いでくれよぉ!」
「……っ!!」

 触手に巻き付かれ苦しいだろうに、ロウは「ニィ」と笑ってみせた。
 その心意気に応えたい。
 例え腐臭で身体の力を奪われようとも、避けるべき触手の本数が増えたとしてもだ。

「くそ、動け、動けよ!!」

 7本の触手が扇みたいに広がる。僕を触手で叩き潰す気だ。

「ど、どうすれば……」

【選択領域】の再使用まで残り数十秒。
 せめて、それだけの時間が稼げれば――

「【脚力強化《中》】!!」

 どこからか、魔法を発動した声が響いた。
 無意識に救いを求めたのか?
 だが、奪われていた力が回復したように、一気に身体が軽くなる。

「これなら、動ける!」

 振り下ろされた触手たちの隙間を縫うように身体を捻った。
 力が回復しただけじゃない。
 僅かながら脚力が増加していた。

 クラウケンシュタインの頭上に跳ねた僕が目にしたのは、アディさんだった。
 そうだ。
 アディさんは付与魔法使い。
 自分やメンバーを強化する魔法を多く持っているんだ。でも、なんで彼女がここに!?

「ユライ! 考えるのは後だ! まずはこいつをぶっ飛ばせ!」

 ロウが僕に叫んだ。
 真上から見ると、序くしゅを振り下ろしたことで弱点である疑似餌部分が頭上からは剥き出しだった。

「【選択領域】!!」

 これが最後のターンだ。
 多分、ここで止めをさせなければ、僕たちの負けになる。そんな予感と共に空中で静止した。
 手札には、三枚の魔法が揃っていた。

「【斬撃】【斬撃波】【斬伸撃】――」

 ロウに教わった魔法進化。その材料となる斬撃系魔法三枚。僕は一つずつ、魔法を選択する。すると、魔法を示すカードは光と共に重なり一対の剣として眼前に現れた。

「魔法が剣に!?」
「そいつを使えば、こいつは倒せる!!」
「……うん!」

 空中で剣を背負い投げるように振るう。身体能力を強化する魔法を持っていなかった僕は、剣技を学ぶのを諦めていた。
 だから、お世辞にも見事な太刀筋とは言えなかったけど――

「【三全斬撃】!!」

 ビュン。

 僕の剣技を補い余り得る威力が魔法進化にはあった。円状の泉が真っ二つに引き裂かれる。当然、その中心にいたクラウケンシュタインの身体も二つに別れてずるりと倒れた。

「や、やった!?」

 ザバアン。

 切り裂かれた泉の黒い水が、倒れたクラウケンシュタインを食らうように戻っていく。死体は浮いてこない。
 まだ、生きてるのかも……。
 地面に倒れた僕はなんとか立とうと力を込めるが、付与魔法の効果が切れたのか立てなかった。

「頼む、姿を見せないでくれ!」

 泉の中心に祈りを投げる。だが、非情にも泉の水面からブクブクと泡が噴き出してくる。
 駄目か、倒しきれなかったのか?
 なら、別の魔法で――!

「プハァ、く、くせぇ!!」

 だが、姿を見せたのはロウだった。バタバタと水面をロウが掻き始めると同時に身体の内側から、キュウンと力が漲ってくる。この感覚は魔法を手に入れた証だ。

「た、倒したんだ……!!」
「おい、安心するのはまだはぇぞ! 手に入れた魔法はなんだ!?」

 ロウが泉から上がる。毛から滴る水を払う暇も惜しいと問いかけた。

「えっと……」

 魔物によっては複数の魔法が手に入る場合もある。それは上位種でも同じことが言えるようだ。もしかしたら、入手した魔法が、クルルちゃんを治すのに必要な魔法でない可能性もあるのか。
ステータス画面を開いて魔法を確認する。

□■□■□■□■□■□■□■□■

【泡弾《フォームショット》】×4
【反射の盾】
【毒喰らい】

□■□■□■□■□■□■□■□■


「手に入ったのは【毒喰らい】みたいだ」

 これが――必要な魔法なのか?

「お前……ソレ!!」

 僕の言葉にロウがブルブルと身体を震わす。まさか、違うのか?
 もう一度、別のクラウケンシュタインを探して倒さなければならないのか?
 ロウがへたりと座り込む。

「よくやった。これでクルルは治るぞ」
「え、本当!?」
「ああ。今の俺は嘘つく余裕もねぇよ」
「もう、だったら、紛らわしい表情しないでよ!」
「そんなこと言われてもしょうがないだろ! 俺は元々こういう顔なんだよ!」

 でも、本当に良かった。
 クルルちゃんは助かるんだ――。

 ザッ。

 背後から足音が聞こえてきた。
 そうだ。
 僕を助けてくれたのはアディさんなんだ。

「これは――どういうことだ? 上位種の魔物に二人で戦いを挑むなんて――常識じゃ考えられないぞ!?」
「その……実は……」

 クルルさんの症状は病気ではなく魔法が原因。
 そのために魔法を手に入れようとした。
 なんて、魔法の真理を知らないアディさんに、ここで説明をしても信じて貰えるかどうか。

「とにかく、話は後だ! 急いで戻ってクルルを助けるぞ!」

 ロウがブルルと身体を震わせながら、船に向けて駆けて行った。
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