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Anniversary 1st Season
『体育祭権謀術数模様 -Happy Days!-』【3.中盤戦】 [1]
しおりを挟む『体育祭権謀術数模様 ~Anniversary -Happy Days!-』
【3.中盤戦】
「…つーワケで、これはもう“拉致監禁”しか無いと思うのだ!」
どう思うよ平良? と、唐突にもホドがあるってくらいに突然イキナリそんなことを問いかけられても……俺は目を丸く瞠っては何も言えずに座ってた椅子からズリ落ちるくらいしか、出来ないではないか。
――朝、会うなり開口一番の挨拶がサワヤカにソレかよ……!!
一応、良識ある高校生として、「とりあえず法に触れることだけは止めておけー?」と、止めるだけは止めておく。――つーか、そもそも何の話だ一体?
「…まあ、黙って見ていろ平良」
「天文部の平穏は、俺たちが守る!」
そうしてフフフフフ…とブキミに笑って去ってゆくヤツら三人の耳には……「じゃあ今すぐ天文部から出ていけオマエら」という唖然とした俺の心底イヤそげな呟きなど、都合よく聞こえていないに違いなかった―――。
*
「――つーか、マジでやるかそれをッ!!」
このスカポンタンどもがーッッ!! と怒鳴りつつ、同時に目の前の三人を真横から本気で蹴り飛ばした。
横並びに並んで座っていた坂本・葛城・田所の三人が、ドンガラガッシャン! と派手な音を立てながら、折り重なるようにしてテント内のスミっこにまでフッ飛んでゆく。
うららかに晴れた体育祭当日。そして、ここは救護テント内。
「…って、イキナリ何すんだよ平良!!」
「その言葉、ソックリ返してやるぜテメエら!!」
バキバキと指を鳴らしつつフッ飛んだ三人の前に仁王立ちで屹立した俺は、――既に何の言葉にも聞く耳ナシ。
「こちとらなあっ……これから応援合戦やら控えて忙しさの余りに殺気立ってるんだよッッ……!!」
口許をヒクヒクさせながらそれを言う俺のイデタチは、黒い学ラン姿。…しかも長ラン。
そして額には黄色い長ハチマキ。
語るまでも無く、俺たちC組応援団の応援合戦に臨むコスチュームである。
「そんな殺気立ってるってー時に……コレは何だ!!?」
おまけに白い手袋まではめた手で、俺がビシッと人差し指を突きつけた、その先には……、
――パイプ椅子に座らされビニール紐でグルグルに縛られた挙句、ガムテープ貼られて口まで塞がれている、三樹本の姿。
「このクソ忙しい時にカンジンなウチの副団長、なァーに誘拐してやがるんだよキサマらは!!?」
言った途端、「あ…あれえっ…?」と、三つの引きつり笑顔と共に発せられるマヌケな三声ユニゾン。
「ななな、なァんで……?」
「ココが……?」
「わかっちゃったのかなぁ……?」
「わからいでか、この三バカモンがーッッ!!」
――ことの露見は、遡ることおおよそ今から二十分ほど前。
“午前の部”の最後の競技に出場する選手に集合を促すアナウンスが聞こえて、俺はそろそろ応援合戦の方の準備だな…と立ち上がった。
着替えやら何やらとあることだし、集合しなくてはならない時間よりも早めに集まって最終的な打ち合わせをすることを、予め決めてあったからだ。
しかし……時間になっても、その集合場所に三樹本が来なかったのである。
普段、時間に遅れるようなことの無い奴が、これは珍しい。――つーか、何かあったとしか思えない。
何となくイヤな予感に襲われつつ、早乙女を『ちょっと呼んでこい』と使いに出すも……『応援席には見当たりません』と帰ってくる始末。
そこで俺はハッキリと確信した。――ヤツらの仕業だ、と……!!
「…まったく、自分たちが目立たないとでも思ってるんですか先輩がた?」
呆れたようにタメ息を吐きつつ、早乙女が、三樹本を縛って拘束しているビニール紐に手をかけた。
「アンタらみたいに必要以上にデカくて知名度のある人間が三人も集まって、挙句の果てに三樹本先輩まで拉致して連れ歩いてれば、目立たないハズが無いでしょうが」
――早乙女の言う通りだ。
俺らが応援席で聞き込みをしたところ、あっけないほどスグに目撃情報が飛び出した。
『みみみ三樹本なら、ささささきほど《三連山》の方々に、つつつつつ連れていかれましたけどっっ……!!?』
そそそそれが何かッ!? と、可哀想なくらい汗ダラダラたらしてはドモって答えてくれたソイツにとって……長ラン姿に長いハチマキ締めて『おい三樹本がドコいったか知らねえか!?』と怒鳴り込んで詰め寄った俺が、マジで怖かったらしい。――これだからイヤなんだ学ランは。こんなにも俺は人畜無害な人間だというのに、ヘタにタッパがある所為か、印象がどこぞの“番長”だか“族長”だかになってしまう。
ともあれ、それを聞いてすぐさま生徒会のテントへと直行しようと走って……いた途中、救護テントの中で養護教諭とノンキに茶ーしばいてはくつろいでいる件の三人を見つけて、即座にその場で方向転換、こうして駆け込んできたようなワケだった。
「…つーか島崎先生も。黙って見てないで止めなよ、仮にも生徒が不当に校内で拘束されてんだから」
ビニール紐の結び目に苦戦する早乙女が、やっぱりタメ息吐きつつ言って見上げた、その視線の先には……「あら、どうして?」と、ベッドに腰掛けて優雅にお茶を飲みつつ答える、我が校のマドンナ、保健室に咲く一輪の花、男子生徒の心のオアシス、――養護教諭・島崎 操先生の姿が。
「可愛い生徒が縛られている姿なんて……しかも三樹本クンみたいな美少年なら、目の保養じゃなぁい♪」
「…ウットリと言わないでください、そんなこと」
「おほほほほ、ああお茶がオイシイわ~!」
「…………」
見た目フツーに美人のクセして……中身は“女王様”ですか。そうですか。ド“S”ですか。――サスガ、あの碓氷センセーの“先輩”なだけのことはある。風のウワサで漏れ伝え聞いたトコロによると、大学時代のサークル仲間、だったんだそうな。
しかし、幾らココに居る面々が天文部員――つまり“碓氷センセーの本性に通じている人間”同士、だからって……仮にも一応は生徒の前なのに、アナタまでも本性出しまくりやがってくださいますか。いつもはキッチリ猫かぶってるクセして。
…つーか、ウチの教師はこんなんばっかか。…教師までイロモノか。
「まあ、そう責めてやるな早乙女。操ちゃんは、天文部存続の危機を憂う俺たちが断腸の想いでこうやって起こした行動に、憐れみと理解を示してくださっただけなのだから」
「はあ!? 『天文部存続の危機』って……ナニ言ってんですか!?」
アンタらがこんなことする方が、よっぽど『天文部存続の危機』じゃないですか! …と云う早乙女の言い分の方が、至極ご尤もなことである。
「あああもう、これキツくて解けないし! …島崎先生、ハサミ貸してください」
「つーか、そこ!! なんでワザワザ縛ったのに解こうとしてるかな早乙女!!」
「しかもフツーにハサミとか使おうとすな!! チャレンジ精神というものが無いのかキサマ!!」
「…じゃかあしい!!」
不当な拘束を解くのになァにが『チャレンジ精神』だと、そこで能書きが復活してきたヤツらを再び黙らせるべく殴り付けようとするも、しかし今度はヒラリとかわされてしまう。――そういえばヤツらも俺と同門、忘れがちだがナニゲに空手有段者でもあった。しかも俺と同等の腕前だ。
フッ飛んでいた姿勢から、ヤツら三人とも、俺の拳をかわしつつ素早い動きで飛び起きて立ち上がると、田所が結び目にかかっていた早乙女の腕を掴み上げ、葛城がハサミの入っているだろう救急箱を死守、そして坂本が俺の胸元に飛び込んでくる。…くそ、油断した!
咄嗟に受け身をとったものの、今度は俺がフッ飛ばされる番だった。なんとかコラえ、ブザマに地べたに転がるようなことには、ならなくて済んだが……折角もう少しで三樹本を取り戻せるところまで来ていたにもかかわらず、これでイキナリ形勢逆転。早乙女も早乙女で、両腕を掴み上げられたまま微動だに出来ず硬直している。
「――キっサマらぁ……!!」
「足掻くな、平良!」
吼えかけた俺を、ピシャリと坂本が牽制した。片手を広げて俺へと向けて突き出した体勢に、隙は無い。…ヘタに動くに動けないし。ちきしょう。
「何としても、このレースが終わるまでは、指一本だって三樹本には触れさせん!!」
「『このレース』……?」
――パァン!!
ふいに銃声が響いた。――スタートピストルの合図。
ハッと我に返って気付いてみると……それは“午前の部”最後の競技が、今まさに始まったという合図だった。
…ようするにアレだ。例のイロモノ競技。――《WANTED! ~ミッション・イズ・『ウォーリーを探せ!』トライアル☆(“借り人”競走)》、まずは女子の回。
『さあ、各コース一斉にスタートを切りました!』
放送席から、放送部のアナウンサーがこの調子でルール説明だの何だのサンザン喋っていたのを、何となく聞いてはいたハズだったが……どうやらコイツら三人のことをどーにかしようとしていたあまり、耳で聞いてはアタマの向こう側でそのまま流してしまっていたらしい。
(――てか、すっかり忘れてた……!)
思い出したようにグラウンドの向こうを見やると、順番を待つ走者の列の中に、――問題の小泉の姿が。
「わかったか平良? このレースに於いて、断固として我々は小泉と三樹本との接触は防がなければならんのだ!」
「よって小泉が走り終わるまで、このまま三樹本は隠しておかねば!」
「聞き分けろ平良! ひとえに天文部のためだ」
「…って、だーから何なんですかソレは!?」
そこでついに早乙女がキレた。ワケもわからないまま田所にガッチリ両手を拘束され、しかも自力じゃどうもがいても解けないものだから、次第にイライラしてきたらしい。
「さっきから聞いてれば『天文部のため』とか『天文部存続の危機』だとか……そこに何で三樹本先輩と小泉とが絡んでくるのかは知りませんがっ……そぉんなことよりも、まず目先の応援合戦の方が大事でしょうがっっ!!」
「甘い! それは生クリームにアンコまぶしてメープルシロップふりかけたくらいに甘いぞ早乙女!!」
…『甘い』っつーより、ソレむしろキモチワルイし。
「オマエは、この競技の真のオソロシサを知らんから、そんなことが言えるのだ……!」
…確かに『真のオソロシサ』という点では、『生クリームにアンコまぶしてメープルシロップふりかけた』くらいのキモチワルサは、あるかもな。
しかし何も知らない早乙女は、「『真のオソロシサ』? はア!?」と、“なに言ってんだコイツ!?”くらいの表情で一刀両断。
「何を言い出すかと思えば……こんな“指定された条件の人間を探してくる”というだけの《“借り人”競走》なんつーイロモノ競技の、一体どこが『オソロシイ』っていうのか……!!」
――パン、パァン!!
そこで、早乙女の言葉を遮るように鳴らされた、銃声二発。
どうやら、それは“尋ね人捜索時間終了”の合図らしかった。三分以内にクリアできなかった走者がゴールへと取って返していくのが見える。
「…まあ、ココを黙ってしばらく見ていろ早乙女」
「は……?」
そして再び早乙女が“なに言ってんだコイツ?”的いぶかしげな表情を浮かべる、――と同時に。
『さあて、走者が皆ゴールへと戻ってきたようですねー』
被ってきた放送席からの実況アナウンス。
『それでは、いよいよ査定ですね! 果たして“指令”に指定された条件をクリアした人物を、各選手、探し出せているのか!? ――ではゴール中継の方にバトンタッチいたしましょうか』
『はーい、こちらゴールでーす! それでは僭越ながら、各選手の引いた“指令”を読み上げさせていただきまーす! では、まず一位の方から。B白組の選手が連れてきた方は……おや、同じくB組の方ですね。お二人とも同じクラスですか? 一年B組の、…コチラお名前どうぞー?』
「…って、この茶番が何だって言うんですか!?」
まさに“ボクこれでもかなりガマンしてるんですっ!”とでも言いたげに怒りを湛え額に青スジを浮かべては呻くように言う、そんな早乙女も何のその。
「フフフフフ……これからが本番だよ、早乙女クン」
それを、相変わらず俺を動けないように牽制しながらのポーズで、勝ち誇ったような不敵な笑みと共に、坂本が告げる。
「俺たちがアタマを寄せ合って搾り出したアイディア競技のオソロシサ……充分に堪能してみるがいい」
『――おーっと、これは初っ端から大穴が出ましたーーーーッッ!!』
ふいに、スピーカーがキーンと鳴るくらいにマイクを通して発された、ゴール中継の放送部員の、あまりにもエキサイトした大声。
ナニゴトかと、一瞬目の前の三人のことも忘れ、俺も早乙女もバッとグラウンドを振り仰いだ。
『では発表します! 一位B組の選手に与えられた“指令”の条件とは、――ズバリ、「アナタの好きな人」!!』
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