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Anniversary 1st Season
『体育祭権謀術数模様 -Happy Days!-』【5.後半戦】 [2]
しおりを挟む『そして、優勝候補のもう一角! 第四コースは皆様お馴染み生徒会チぃーーームっ!! ついでにバトンもお馴染み、二年C組、吉原生徒会長でっす!!』
そこで響いたチーム紹介のアナウンスに、再び俺はゲンナリする。
スタート地点に視線を戻せば、ウチの高階と小泉の隣で、客席に向かい手をブンブン振ってはピョコピョコ跳ねている由良の姿。
この競技にこんなこと言ってもムダだと思うから敢えて言わないが。――絶対に仕組んでるだろ、この並びは?
ちなみに、例の《三連山》の面々は……アンカーの坂本をはじめ、第二走者に田所、第三走者に葛城。そして、いま由良の隣にいる第一走者と俺の隣にいる第四走者は、現生徒会役員の書記&副会長だ。
「ちっくしょう……! アンカーに坂本がくると分かってりゃあ、センセーでも置いといたのに……!」
今はあんなスチャラカ人間筆頭のようなヤツでも、一応はモト生徒会長。食えなさ加減もハンパじゃない。
こう言っちゃナンだが、三樹本をぶつけるのには、ちと荷が重すぎたかもしれない。
しくった…という俺のボヤきを聞き止めたか、「相手が悪かったですね」と、ふいに隣からニコヤカに声が投げかけられる。
生徒会チームの第四走者――現副会長の武田である。
振り返るなり俺の目に映ったのは、そんな声に負けず劣らずニコヤカな笑みと、三樹本と並ぶホドの端正な顔立ち。いわゆる“イケメン”。
一説によれば、コイツと三樹本とで全校女子生徒の人気を二分しているとも云われているホドである。おまけに顔の系統も何となく似てるしな。見た目二人とも“軟派”っぽいトコロが。
…三樹本の場合は、見た目だけで中身はそうでもないんだけどな。
…しかしコイツは、中身からして根っから軟派だ。
そして、やっぱり例によってコイツも二年C組在籍。――コイツらにこそ『2-Cの《Kinki Kids》』という呼称を与えても、全くもって違和感どころか梨田サンからの異論反論も無いだろうと思うのだが。
また加えて言うと、コイツもやっぱり天文部員、だったりもする。…ただし幽霊部員も甚だしい限りだけどな。生徒会の方で忙し過ぎて。
そんな武田に向かい、ややブスッと俺は返す。
「…オマエがアンカーに来ると思ってたんだよ、コッチは」
なぜならば、コイツは由良の“自称・カレシ”であるからだ。
よって俺は、尊敬と敬意を込めて、武田に『ロリコン』の称号を与えてやった。…モノズキは世の中に幾らでも居るモンだよな。
まあ、由良の方で内心どう思っているのかは知らないが……少なくとも、武田の気持ちが報われていることは無いだろう。
おまけに由良は由良で、きっと武田ではない別の方向を向いていることにも、間違いは無いしな多分。…“懐いている人間”限定、とはいえ、本人の態度が誰に対しても常にああブッ飛んでいるもんだから、これといった確信は無いけれども。
コイツもコイツで、そのことをシッカリ覚っているにも関わらず、それでもなお由良を追い回している根性と気力には頭が下がる。
――武田といい早乙女といい……ウチ部の後輩は、こんなんばっかか。報われないブラザーズか。あー可哀想に。
ともあれ……そんなコイツだからこそ、“由良を抱えてゴールテープを切る”ことの出来る“アンカー”という晴れのポジションなぞ、絶対に他人には渡さないだろうと踏んでいたのだが……「ま、当たらずしも遠からず、でしたけどね」と、にこにこアッサリと否定された。
「そうしたいのはヤマヤマだったんですが……でも、最後の障害が障害ですからねえ、それ考えたら誰が見ても坂本先輩以外に適役はいないよーな気もするし……まあ、単に否応もなく梨田に順番決められただけ、っつーこともありましたけど」
ああ、梨田といえば、災難でしたねー入場門でのインタビューは! と、そこで思い出したように付け加えられた言葉に、俺の片頬がピクリと攣った。
そーだ思い出した、コレがあったか。
「――つーかオマエだろ、俺と梨田のネタ放送部に売ったのは?」
ハッキリ言って……そんなこと知ってるヤツなんぞ、去年の生徒会と天文部の関係者の中にしか、居るハズもないし。
出所なんて、隠されたトコロですぐ知れる。俺だけじゃなく梨田女史もまた、ソコらへん、もうとっくに気付いてるハズだ。
「やだなあ、ボクがそんなこと言うハズなんて無いじゃないですかーお兄さんっ!」
「…『お兄さん』言うな!」
しかも、コイツがそう『お兄さん』言っては誤魔化そうとする時ホド、図星を突いた証拠でもある。…ってコトを、シッカリ俺は心得ている。
「俺はキサマの『お兄さん』になった憶えなぞ無い!」とピシャリと言いつつ、そのまま何気なくゲシッと武田の後ろアタマを殴り飛ばして。
「まあ、でも……ここで俺が何を言うまでもなく、オマエにも相応の報復があるだろうしな梨田サンから後でタップリ」
「そっ…そおんな怖いコト、言わないでくださいよおっっ!!」
「〈自業自得〉だろーが、このボケ」
「せんぱぁあああいっっ……!!」
だってボク放送部の滝本クンに弱み握られてて仕方なかったんですうっ…! という、ドコまで本当なのか分からない極めてウソくさい言い訳など、俺はアッサリと聞かなかったことにした。
『さてさて、ようやくチーム紹介も終わりましたことですし……』
…と、タイミングもよろしくスピーカーから響いてくる、そんな放送部員・滝本の声。
『そろそろスタートです。各チーム、スタートライン上に並びました』
見ると、正しくその言葉通りの光景が、スタート地点で繰り広げられている。
スタートラインの横で、係がスッと片手を上げて。
『位置に着いて……よーい……』
スピーカーから降ってくる声。――次の瞬間、
――パアン!!
スタートピストルの合図が鳴り響き、各コース一斉にスタートを切ったのが見えた。
真っ先にアタマ一つ分前に出たのが高階。――サスガ、リレーの選手にも選ばれているだけのことはある。その瞬発力はスバラシイ。…あのスバラシイ反射神経の無さを誇る小泉を片手に引きずっているにも拘らず、だもんな。
そして一位のまま、第一関門に突っ込んでゆく二人。
この《部活動対抗障害物リレー》、第一の障害。――それは“着せ替え”。
自分でも言ってて馬鹿らしいと思うが……でも事実なのである。
その馬鹿らしい“着せ替え”という名の障害物は、指定された格好にバトンを着替えさせること、でクリアとなるのだ。
走っていった高階が、地面に置かれた紙を拾い上げ、目を通すや否や、コース脇に用意されていた衣装の中から一つを選び出し、用意された中が見えないようになっている“お着替え用テント”に突っ込んでゆく。――ちなみに、ココでの衣装提供は主に演劇部。あとその他もろもろ。よって、この最終レースに至るまでに、ものごっつう正視に堪えない姿となったバトン各位もちらほらと見受けられた。例えば、男のセーラー服とか。男のシンデレラとか。…笑うに笑えないから。
サスガにバトンが女子の場合、そういうことは無いだろうと思うが……それでも前例を考えると不安なのは確かである。
しかし、あの高階が付いているのだ。きっと何とかしてくれるだろう、という根拠の無い期待もあるし。
ルールの上では、バトンは自分から動くことを許されない。全て走者によって着替えは為されないと、その場でペナルティ。彼女たちが突っ込んでいった“お着替え用テント”の中にもシッカリ係の者がスタンバっており、抜け目なくチェックの視線を光らせているハズだ。
『ぅおっとう! ようやくトップの走者が出てまいりましたね!』
数分の後……そんな中、案の定というか何と言うか……突っ込んでいった反対側にあるテントの出口から、真っ先にアタマを出してきたのは高階。
続いてその後ろ、テント内から引っ張り出されるように出てきた小泉を……見るなり俺はガックリと脱力しそうになった。
(――よりにもよって、ゴスロリかい……!!)
何て言うか、白いフリル過多のメイド服のようなエプロンドレスのような黒地のそれに身を包んだ小泉は。
似合わないのでは無い。――似合い過ぎてる。いや力説するけどマジでホントに。
あまりにも似合い過ぎて……逆に脱力。
あんなフリフリビラビラの洋服を、ここまで可愛らしく着こなせる人間も、そう滅多に居ないに違いない。
しかもサスガ高階、服をカンペキに着せただけでなく、頭にもシッカリ共布のフリフリ満載ヘッドドレスを忘れてはいない。
その姿は、まるで等身大のフランス人形がスニーカー履いて走ってるよーなモンであり。
しかし、そう思っているのは俺だけでは無いだろう。その証拠に、そんな小泉がテントから全身を出した途端、観客は一斉にどよめいてたし。隣では武田が、「あの子めちゃくちゃ似合ってねえ…?」なんてビックリした呟きを洩らしてたし。おまけにスピーカーからは、『なんとゴスロリです! 可愛いです! 似合い過ぎです小泉選手!』の連発が聞こえてくるし。――コレこそ、マニアが大勢いることだろうな。
よかったなー小泉、これでまたファンが増えたぞ。…とは、サスガに三樹本を前にしちゃ言えないけどな。恐ろしすぎて。
『おおっ!? 続きますのは生徒会チームですね!! これまた吉原生徒会長も、可愛いスギですっっ!!』
そんな実況中継にハッとしてソチラに目を向けると。――またもや脱力。
『なんと、ロリータちゃんに続くのはチャイナガール! チャイナドレス、しかもミニ! コチラも似合い過ぎです生徒会長! 可愛いです! これは男子生徒にとって目の保養だーーーっっ!!』
――放送、エキサイトし過ぎだから。
しかし、アタマのお団子効果もあるんだろうか、由良も小泉に負けず劣らず、ミョーにチャイナドレスが似合ってる。兄である俺から見ても“似合う”んだから、やっぱ正真正銘“似合い過ぎ”なんだろう多分。
隣で武田が「いやー、由良はチャイナも似合うねえ…♪」なんてニヤニヤしてることだし。…つーか絶対、太腿のスリットしか見てないだろオマエ?
ともあれ、このチャイナで由良も“マニア”という名のファンを増やしたことは、もはや言うまでも無いだろう。
…後日、写真部が売り出すだろうハズである今日の写真の売れ行き№1と2が、見えたよなコレで。
『さあて、もうそろそろ第二走者へとバトンタッチ! 一位二位の差はホトンドございません!』
そうして次のレーンに視線を向けた俺の目に真っ先に映るのは、五人並んだ中でもひときわ目立つガタイの良い二人。――碓氷センセーと田所の姿。
まず最初に到着した高階が、そのまま引っ張ってきたロリータな小泉をセンセーに手渡して。
そしてセンセーが、まるで材木を抱え上げるかの如くヒョイッと軽々、小泉を肩の上に抱え上げるや否やクルリと方向転換して走り出す。
と同時に生徒会チームでも、田所へとチャイナな由良の受け渡しが行われる。
その差、多分三秒も無い。
そして《部活動対抗障害物リレー》、第二の関門。――ココはオーソドックスな障害物、“平均台”。
人を抱えている走者を考慮してか、そこまでの高さは無いものの。しかし腐っても平均台は平均台。バランスを崩せば即ケガを作れるくらいの高さは充分にある。しかも、渡らなければならない距離も充分、あり過ぎるくらいにある。
にもかかわらず、そこはそれ、サスガ碓氷センセー。そのガタイはダテじゃない。
片側の肩に小泉を抱え上げているというのに、全く危なげない足取りでラクラク平均台をクリアしてゆく。…きっとセンセーにとっては、運ぶってことには、小泉も材木も変わらないのかもしれないよな。
そして、続く田所も同様に、由良を抱えてラクラク平均台クリア。
結局、タイム差は縮まらず。
そのまま平均台を抜けてバトン受け渡しゾーンに到達したセンセーは、肩から抱え上げていた小泉を下ろすと、そこに待ち受けていた早乙女の背中へとポスッと乗っけた。――事前の俺の指示である。如何に受け渡しゾーンではバトンを地面に下ろすことが許されているとはいえ、下ろしたら下ろしたでそれだけのタイムロス、なるべく小泉は地面に落とさないように受け渡しを済ませること! と。
それに、早乙女が向かう次の障害に対するには、小泉を身体の前面で抱きかかえていくよりも、背中におぶってる方が格段に都合が良い。
なぜならば、そんな《部活動対抗障害物リレー》、第三の関門は。――なんと“筆記試験”、だからである。
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