ダンジョン入るの面倒臭いから、ボスここまで呼んで〜究極接待ゲームライフ

RYOMA

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悪い意味で庶民派

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女神の行きつけの店は小さな町の路地裏にあった。なぜヴァーチャルな世界でこんな質素な店で飯を食わなきゃいけないのかというくらい庶民的な店で、沸々と怒りが込み上げてくる。

「おい、女神なんたらよ、なんなんだこの店は──」
「私の行きつけの店ですよ」
「いや、それはわかった、俺が聞いてるのは、どうしてこの俺様をこんな貧乏臭い店に連れてきたのかと聞いているのだ」
「見た目はあれですけど味はすごく美味しいんですよ、ぜひ、プレイヤー様に食べてもらいたいです、それに私……持ち合わせもあまりありませんし……あまり高い店は……」
「貴様、女神なのに貧乏なのか」
「恥ずかしながらそうなんです……私のお給金は基本給+歩合制でして……プレイヤーを一人案内する毎に歩合が貰えるシステムなのですが、ここ五千年、一人も案内できていませんので、ずっと基本給しかもらえてないのです」
「そんなの設定をちゃちゃっと変更すればいいだろう」
「私にゲーム設定を変更するようなマスター権限はありませんよ……」
「待てよ……そんな貧乏女神ってことは、冒険の準備資金とかってのは貰えないのか?」
「あっ、それは大丈夫ですよ、私に自由にできるお金がないだけで、プレイヤー様に既定の報酬を与えることはできます」
「だったらその報酬とやらを今よこせ、俺がもっといい店で奢ってやる」
「プレイヤー様はまだキャラメイキングも終わってないじゃないですか、ちゃんとゲーム進行フラグが立たないと何も渡せませんよ」
「ちっ、役に立たない奴だな、まあいい、今はこの貧乏臭い店で我慢してやる」
「絶対美味しいですから、食べたら私のこと褒めたくなりますよ」

食事後──確かに、庶民的な店にしては美味かったが、まあ、想像を超えるものでもなく、女神を褒めるほどでもなかった。
「大げさに言いよって……それほどでもないではないか」
「そうですか……すごく美味しいと思うんですけどね……」
おそらくこの女神、五千年も庶民的な生活をしていて味覚が貧相になってるのだろう。
「そもそもハードルを上げすぎなんだよ、なかなか美味しいですよとか、値段の割には美味しいですよとか控えめな表現にしておけばいいものを……貴様のせいでこの店に対する俺の評価が下がったのだぞ、責任を感じろ、責任を!」
別に怒っているわけではないが、ここは今後の力関係をはっきりさせておく為に強めに責め立てた。
「申し訳ありません……そうですよね、過度な期待をさせた私が悪いですね……」
「馬鹿者! 俺より先に、店に謝罪するのが筋ってものじゃねえのか! 見てみろ、あの店主の悲しそうな表情を……うちの料理に問題あったのかな──やっぱりうちって不味いのかな……そんな不安そうな顔ではないか! それもこれも全て貴様が過度な期待を俺にさせたのが原因なのだぞ! さぁ、どうするのだ! どう責任をとるのだ!」
俺の理不尽な言葉が心に響いたのか、女神はウルウルと瞳をにじませて勢いよく店主に土下座する。
「おやじさん! ごめんなさい! 私……私とんでもないことしちゃった……うっ……もっと控えめに言っていればこんなことには……あっ……もう取り返しがつかないよ……」
そんな女神の態度とは違い、店主は状況がわからないのか狼狽えてる。
「いや……リンシャンテンちゃん……どうしちゃったの?」
「私、大げさにこの店の料理のことを言っちゃって……そうでもないのに絶対美味しいからって嘘ついちゃって……普通なのに! 本当は普通レベルの味の料理なのに……値段が安くて普通レベルならそれはもう高級店の美味しい料理より上だって思っちゃったの──」
「ちょ……ちょっとリンシャンテンちゃん……普通、普通ってそんなに言われると、おじさん、あまりいい気分じゃないよ……」
「ご……ごめんなさい、でも、ここの焼き魚定食、10Gであのボリュームは普通じゃないです! 城門前の啄木鳥亭の焼き魚定食なんて小さな魚が二匹付いてるだけで20Gもするんですよ! まあ、味は美味しいですけど……ここのは大きな魚一匹に、さらに小さなエビのフライまで付いて10Gなんて絶対すごいですよ! まあ、味は普通ですけど……値段の安さだけならここは間違いなく一番です! それは自信を持って言い切れます! まあ、味は普通ですけど」

悪気はないのだろうがこの女神……店主をどんどん不快にさせている……さらに女神の天然の毒舌は続き……結果……どうやら、やんわり出入り禁止になったようだ……
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