9 / 11
牢獄
しおりを挟む
蟻の兵隊たちに拘束された私たちは、石階段を登らされた。
随分、石階段を上ったが、まだ全然先が見えてこない。
普段の不摂生がたたり、まともなスタミナが無い私は、フラフラになりながら階段を上る。
イヌくんとネコちゃんは体が小さいのもあり、木製のカゴに入れられていた。籠は蟻たちに担がれて運ばれているので楽そうである。
お気楽そうな二人を見て、私は少し皮肉を言いたくなった。
「あなたたちは楽そうでいいわね……」
悪気は無いのだろうけど、イヌくんがそんな私の皮肉に無邪気な顔でこう答えた。
「おう! 楽だぞ!」
ネコちゃんはツンとした冷ました表情で──
「何なら代わって差し上げてよ」
そう、あと猫のことはイヌくんに合わせて、ネコちゃんと呼ぶことにした、なんか言葉遣いが女性ぽいし、本当かどうかわからないけど記憶がなく、自分の名前もわからないそうなので……
私の体力が限界間際になった時、階段の終わりが見えてきた。
やっとか……長かった……
階段を上がった先には、都心の繁華街にある雑居ビルの、裏口のような扉があり(なぜか丸型のゴミ箱まで置かれている)両脇に蟻の兵隊さんが立っている。
「こっちだ、早くこい!」
扉の先は、12畳ほどの小部屋になっていて蟻の兵隊さんが数人待機していた。その部屋の奥には大きな鉄格子があり、その先には複数の牢屋が並んでいる。私たちは一番奥の牢屋にまとめて入れられた。
記憶が無いとの話なので期待はしていないが、一応、ネコちゃんに事情を聞く。
「ネコちゃん、どうしてこんなところに入れられるか心当たりない?」
「私は記憶がございませんのでわかりかねますわ」
その答えに、ちょっと疑いの目で、イヌくんが問う。
「なんか盗みでもしたんじゃないのか」
「失礼な犬コロですわね! 私育ちが良いのでそんなことしないですわ!」
「ちょっと待てよ! 記憶が無いのに、どうして自分が育ちが良いってわかるんだよ。お前やっぱり記憶があるんじゃないのか」
「言葉の綾ですわ! 私は間違いなく記憶はございませんわ!」
そんな二人(二匹?)が言い合いをしていると、牢屋の奥の暗がりから怒鳴り声がしてきた。
「ちょっとうるさいぞ、少しは静かにできないのか新入り!」
私たちはその静かだが重い言葉に硬直する……
そして声のした奥の方を、恐る恐る奥の方を覗く……暗がりでよく見えないが、何やら黒い大きい塊が動き出した。
暗がりから現れたのは鎧兜に身を包んだ、大きなゴリラだった。
その体の大きさにビビりながらも、私はそのゴリラに謝罪した。
「お騒がせしてすみません、静かにさせますので……」
「ウホ、まーいいけどな、寝るのは邪魔するなよ」
今、ウホって言ったよね……やっぱりゴリラってウホって言うんだと、どうでもいいことに妙に感心する。
「おい、ウホって何だ?」
イヌくん! それは何だか聞いちゃいけない気がする。
「ウホ?」
言っている自覚が無いのか、イヌくんの質問にキョトンとするゴリラさん。
「いや~何でもないですよ、ハハハハハァ……」
牢屋の中には、畳まれた布団一式と、丸いテーブルが一つ、座布団が人数分置かれ、なぜかポットとお茶とお茶受けが置かれている。
「牢屋にしては待遇がいいわね……」
ゴリラさんも私の言葉に同意して、こう説明してくれた。
「ここは快適だぜ、飯も1日5回あるし、お代わりもできる。あっ、もうすぐ夕飯の時間だな」
そんな話をしているそばから、蟻の兵隊がやってきた。
「飯の時間だ!」
「時間だ!」
そう言いながら、カタカタと配膳を配り始める。
「今日の夕飯はトンカツ定食だ!」
「トンカツだ!」
「残すんじゃないぞ!」
「ないぞ!」
うわ……普通に美味しそうなんだけど……刑務所とかの食事とか入ったことないから知らないけど、こんなに普通なものが出てくるもんなのかな。
配膳が終わると、丸いテーブルを囲み、みんなで夕飯をいただく──
なんか最初はビビッていたけど、食事中に色々と話してみると、ゴリさん、そんなに悪い人じゃないみたいだ。あっ、なんかゴリラさんって言いにくいので、ここはゴリさんと呼ばせていただくことにした。なんかゴリさんもそう呼ばれると心なしか嬉しそうだ。
随分、石階段を上ったが、まだ全然先が見えてこない。
普段の不摂生がたたり、まともなスタミナが無い私は、フラフラになりながら階段を上る。
イヌくんとネコちゃんは体が小さいのもあり、木製のカゴに入れられていた。籠は蟻たちに担がれて運ばれているので楽そうである。
お気楽そうな二人を見て、私は少し皮肉を言いたくなった。
「あなたたちは楽そうでいいわね……」
悪気は無いのだろうけど、イヌくんがそんな私の皮肉に無邪気な顔でこう答えた。
「おう! 楽だぞ!」
ネコちゃんはツンとした冷ました表情で──
「何なら代わって差し上げてよ」
そう、あと猫のことはイヌくんに合わせて、ネコちゃんと呼ぶことにした、なんか言葉遣いが女性ぽいし、本当かどうかわからないけど記憶がなく、自分の名前もわからないそうなので……
私の体力が限界間際になった時、階段の終わりが見えてきた。
やっとか……長かった……
階段を上がった先には、都心の繁華街にある雑居ビルの、裏口のような扉があり(なぜか丸型のゴミ箱まで置かれている)両脇に蟻の兵隊さんが立っている。
「こっちだ、早くこい!」
扉の先は、12畳ほどの小部屋になっていて蟻の兵隊さんが数人待機していた。その部屋の奥には大きな鉄格子があり、その先には複数の牢屋が並んでいる。私たちは一番奥の牢屋にまとめて入れられた。
記憶が無いとの話なので期待はしていないが、一応、ネコちゃんに事情を聞く。
「ネコちゃん、どうしてこんなところに入れられるか心当たりない?」
「私は記憶がございませんのでわかりかねますわ」
その答えに、ちょっと疑いの目で、イヌくんが問う。
「なんか盗みでもしたんじゃないのか」
「失礼な犬コロですわね! 私育ちが良いのでそんなことしないですわ!」
「ちょっと待てよ! 記憶が無いのに、どうして自分が育ちが良いってわかるんだよ。お前やっぱり記憶があるんじゃないのか」
「言葉の綾ですわ! 私は間違いなく記憶はございませんわ!」
そんな二人(二匹?)が言い合いをしていると、牢屋の奥の暗がりから怒鳴り声がしてきた。
「ちょっとうるさいぞ、少しは静かにできないのか新入り!」
私たちはその静かだが重い言葉に硬直する……
そして声のした奥の方を、恐る恐る奥の方を覗く……暗がりでよく見えないが、何やら黒い大きい塊が動き出した。
暗がりから現れたのは鎧兜に身を包んだ、大きなゴリラだった。
その体の大きさにビビりながらも、私はそのゴリラに謝罪した。
「お騒がせしてすみません、静かにさせますので……」
「ウホ、まーいいけどな、寝るのは邪魔するなよ」
今、ウホって言ったよね……やっぱりゴリラってウホって言うんだと、どうでもいいことに妙に感心する。
「おい、ウホって何だ?」
イヌくん! それは何だか聞いちゃいけない気がする。
「ウホ?」
言っている自覚が無いのか、イヌくんの質問にキョトンとするゴリラさん。
「いや~何でもないですよ、ハハハハハァ……」
牢屋の中には、畳まれた布団一式と、丸いテーブルが一つ、座布団が人数分置かれ、なぜかポットとお茶とお茶受けが置かれている。
「牢屋にしては待遇がいいわね……」
ゴリラさんも私の言葉に同意して、こう説明してくれた。
「ここは快適だぜ、飯も1日5回あるし、お代わりもできる。あっ、もうすぐ夕飯の時間だな」
そんな話をしているそばから、蟻の兵隊がやってきた。
「飯の時間だ!」
「時間だ!」
そう言いながら、カタカタと配膳を配り始める。
「今日の夕飯はトンカツ定食だ!」
「トンカツだ!」
「残すんじゃないぞ!」
「ないぞ!」
うわ……普通に美味しそうなんだけど……刑務所とかの食事とか入ったことないから知らないけど、こんなに普通なものが出てくるもんなのかな。
配膳が終わると、丸いテーブルを囲み、みんなで夕飯をいただく──
なんか最初はビビッていたけど、食事中に色々と話してみると、ゴリさん、そんなに悪い人じゃないみたいだ。あっ、なんかゴリラさんって言いにくいので、ここはゴリさんと呼ばせていただくことにした。なんかゴリさんもそう呼ばれると心なしか嬉しそうだ。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
馬小屋の令嬢
satomi
恋愛
産まれた時に髪の色が黒いということで、馬小屋での生活を強いられてきたハナコ。その10年後にも男の子が髪の色が黒かったので、馬小屋へ。その一年後にもまた男の子が一人馬小屋へ。やっとその一年後に待望の金髪の子が生まれる。女の子だけど、それでも公爵閣下は嬉しかった。彼女の名前はステラリンク。馬小屋の子は名前を適当につけた。長女はハナコ。長男はタロウ、次男はジロウ。
髪の色に翻弄される彼女たちとそれとは全く関係ない世間との違い。
ある日、パーティーに招待されます。そこで歯車が狂っていきます。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる