路地裏のアリス

RYOMA

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牢獄

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蟻の兵隊たちに拘束された私たちは、石階段を登らされた。
随分、石階段を上ったが、まだ全然先が見えてこない。
普段の不摂生がたたり、まともなスタミナが無い私は、フラフラになりながら階段を上る。
イヌくんとネコちゃんは体が小さいのもあり、木製のカゴに入れられていた。籠は蟻たちに担がれて運ばれているので楽そうである。
お気楽そうな二人を見て、私は少し皮肉を言いたくなった。
「あなたたちは楽そうでいいわね……」
悪気は無いのだろうけど、イヌくんがそんな私の皮肉に無邪気な顔でこう答えた。
「おう! 楽だぞ!」
ネコちゃんはツンとした冷ました表情で──
「何なら代わって差し上げてよ」
そう、あと猫のことはイヌくんに合わせて、ネコちゃんと呼ぶことにした、なんか言葉遣いが女性ぽいし、本当かどうかわからないけど記憶がなく、自分の名前もわからないそうなので……

私の体力が限界間際になった時、階段の終わりが見えてきた。
やっとか……長かった……
階段を上がった先には、都心の繁華街にある雑居ビルの、裏口のような扉があり(なぜか丸型のゴミ箱まで置かれている)両脇に蟻の兵隊さんが立っている。
「こっちだ、早くこい!」
扉の先は、12畳ほどの小部屋になっていて蟻の兵隊さんが数人待機していた。その部屋の奥には大きな鉄格子があり、その先には複数の牢屋が並んでいる。私たちは一番奥の牢屋にまとめて入れられた。
記憶が無いとの話なので期待はしていないが、一応、ネコちゃんに事情を聞く。
「ネコちゃん、どうしてこんなところに入れられるか心当たりない?」
「私は記憶がございませんのでわかりかねますわ」
その答えに、ちょっと疑いの目で、イヌくんが問う。
「なんか盗みでもしたんじゃないのか」
「失礼な犬コロですわね! 私育ちが良いのでそんなことしないですわ!」
「ちょっと待てよ! 記憶が無いのに、どうして自分が育ちが良いってわかるんだよ。お前やっぱり記憶があるんじゃないのか」
「言葉の綾ですわ! 私は間違いなく記憶はございませんわ!」
そんな二人(二匹?)が言い合いをしていると、牢屋の奥の暗がりから怒鳴り声がしてきた。

「ちょっとうるさいぞ、少しは静かにできないのか新入り!」
私たちはその静かだが重い言葉に硬直する……
そして声のした奥の方を、恐る恐る奥の方を覗く……暗がりでよく見えないが、何やら黒い大きい塊が動き出した。
暗がりから現れたのは鎧兜に身を包んだ、大きなゴリラだった。
その体の大きさにビビりながらも、私はそのゴリラに謝罪した。
「お騒がせしてすみません、静かにさせますので……」
「ウホ、まーいいけどな、寝るのは邪魔するなよ」
今、ウホって言ったよね……やっぱりゴリラってウホって言うんだと、どうでもいいことに妙に感心する。
「おい、ウホって何だ?」
イヌくん! それは何だか聞いちゃいけない気がする。
「ウホ?」
言っている自覚が無いのか、イヌくんの質問にキョトンとするゴリラさん。
「いや~何でもないですよ、ハハハハハァ……」

牢屋の中には、畳まれた布団一式と、丸いテーブルが一つ、座布団が人数分置かれ、なぜかポットとお茶とお茶受けが置かれている。
「牢屋にしては待遇がいいわね……」
ゴリラさんも私の言葉に同意して、こう説明してくれた。
「ここは快適だぜ、飯も1日5回あるし、お代わりもできる。あっ、もうすぐ夕飯の時間だな」
そんな話をしているそばから、蟻の兵隊がやってきた。
「飯の時間だ!」
「時間だ!」
そう言いながら、カタカタと配膳を配り始める。
「今日の夕飯はトンカツ定食だ!」
「トンカツだ!」
「残すんじゃないぞ!」
「ないぞ!」
うわ……普通に美味しそうなんだけど……刑務所とかの食事とか入ったことないから知らないけど、こんなに普通なものが出てくるもんなのかな。
配膳が終わると、丸いテーブルを囲み、みんなで夕飯をいただく──
なんか最初はビビッていたけど、食事中に色々と話してみると、ゴリさん、そんなに悪い人じゃないみたいだ。あっ、なんかゴリラさんって言いにくいので、ここはゴリさんと呼ばせていただくことにした。なんかゴリさんもそう呼ばれると心なしか嬉しそうだ。
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