路地裏のアリス

RYOMA

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開錠

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食事が終わり、私はみんなにお茶を入れて、いい感じに寛いでいた──
「ウホ、お前は別世界から来たのか?」
思い切ってこれまでの話をしてみると、意外にゴリさんは理解を示してくれる。そして親身に話を聞いてくれた。
「そうなの……気がついたらよく分からない場所で……」
そんな話をしてると、イヌくんもボソリとこう話す。
「俺も気がついたらここにいたんだぜ」
「え! そうなのイヌくん?」
「おう!」
 なぜか勢いよく返事をしてくれる。
「ここで始めにあったのがお前だ!」
「へぇ~そうだったんだ」
とか、話してると、なんか話に入りたいのか、ネコちゃんが話に割り込んでくる。
「私も同じですわ、気がついたらここにいたのですわよ。たぶん別世界から来たと思いますわ」
無理に話を合わせてないかネコちゃん……なんかすごく言い方が胡散臭いんだけど……そう思ったが、否定すると面倒くさそうなので、ここはスルーする。
「ウホ、じゃーお前は元の世界に帰りたいんだな」
「もちろん帰りたいです」
「よし、俺には帰り方とかわからないけど、そういう事に詳しい奴を一人知っているから紹介してやるよ」
「え! 本当ですか⁉」
「もちろん本当だ。名は【下水道の魔女】、偏屈なヤツだから手を貸してくれるかわからんけどな」

希望だ……今まで意味もわからなく彷徨っていたけど、初めて希望らしい話が出てきた。
しかし、そうなると、ここから出てその下水道の魔女とやらのところへ行かないといけないのだが、どうしたもんか……などと考えていたけど、今日はさすがに疲れていたのか、夜食に出た塩ラーメンを食べたらすぐ眠ってしまった。

翌朝、アジの開き、卵焼き、刺身盛り、伊勢海老の味噌汁、お新香、納豆、などの、なぜか必要以上に豪華な朝ごはんを食べたあと、ここから脱出する為の作戦を考えることにした。
「見て、見張りは基本、1人なのよね、あれをどうにかすれば行けそうじゃない?」
私の発言に、おもちゃのキューブをいじりながらイヌくんがクールにこう言う。
「でもあの鉄格子の向こうの部屋には何人もいるぜ」
自分の毛並みを揃えながら、ネコちゃんは眠そうにこう発言した。
「見張りもそうですけど、そもそもこの牢屋から出る方法を考えないとダメなんじゃないですの」
「ウホ、そうだな、鍵さえ開けば見張りは俺がなんとできると思う」
さすがゴリさん、セリフに重みがあって、なんか頼りになるな。
「ゴリさん、ここの壁とか壊せない?」
「前に試したけど、さすがに無理だった」
試した後だろうか、確かに壁がボコボコに凹んでいる。

意見は出るが決定的な脱出方法まではなかなか進まず、まとまりのないまま、作成会議がグダグダになってきたところで、珍しくイヌくんが感情的になって騒ぐ。
「やった! やったぞ!」
「いきなりどうしたの、イヌくん……」
全員がイヌくんの方をみる。
「見てくれよ! やっと揃ったんだぜ!」
そう言いながら、おもちゃのキューブを私たちに見せてくれる。見ると確かにキューブの面の図柄が揃っていた。
「なんだ、おもちゃのことか……それにしても、そのおもちゃにしては地味な図柄ね、それ」
図柄はデフォルメされた鍵の絵である。
イヌくんが注目されているのが気に入らないのか、ネコちゃんが唐突にイヌくんに絡みだす。
「私にもやらせなさいよ!」
そう言ってキューブを取り上げようとした。もちろん、それを嫌がるイヌくんはキューブを持って逃げる。そしてイヌくんが鉄格子の扉の前方に近寄った時……
ガチャ!
「うん……今ガチャって……」
音のした鉄格子の扉をじっと見ていたイヌくんが、おもむろに鉄格子のノブを回す。
ギギギッと開く扉──
「ちょっ……ちょっと! 鍵が開いてるわよ!」
「しぃ────静かに……」
騒ぐ私をたしなめ、小さい声でゴリさんがこう言う。
「騒ぐと扉が開いたことが気付かれるぞ……」
確かにそうだ……無言で頷きあうとテーブルの周りに集まる一同。
鍵の図柄が揃ったキューブのおもちゃを見て、ネコちゃんが言う。
「このおもちゃで開いたのかしら」
「鍵の図柄だし、もしかしたらそうかもな」
イヌくんもネコちゃんと同じ意見なのかそれを肯定する。
私はキューブをいろんな角度から見る。
「おもちゃだっと思ってたけど、なかなかすごい物なのね……六面体だから後、5面あるのよね、他はどんな図からかしら」
「こりゃ~噂に聞く、魔導具ってやつだな」
感心したようにゴリさんが言う。
魔道具……よくわからないけど、すごい掘り出し物を手に入れてたのね……こんなのおまけでもらって、あの商人にはちょっと悪い事しちゃったかな。
「ウホ、さて……これで扉は開いた、あとは出るだけだな」
そんなゴリさんに、ちょっと心配になってこう聞いた。
「ゴリさん、こんな快適な場所から、私の為に脱出なんかして大丈夫……もしかしたら危険なことになるかもしれないし……」
「ウホ、いや、俺もそろそろ、ここから出る頃合いだと思っていたからな、ま~気にするな」
ゴリさんの優しい心遣いに感謝する。
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