3 / 8
希望の明かり
しおりを挟む
発電機に燃料となるガソリンを入れ、エンジンをかける。簡単な構造なので仕組みを理解して動かしているだけなのだが、天野さんは俺の出際の良さに感心する。
「桜宮くん、凄いね。どうしてそんな機械の動かし方わかるの?」
「前に本で読んだことがあるだけだよ、たまたま知っていただけ」
「たまたまでも凄いよ、桜宮くんって博学なんだね」
天野さんの反応は意外だった。本ばかり読んで他人に興味がないと思っていたけど、こういう普通の会話するんだと新たな発見をした。
エンジンが回り始め、大きな振動音を響かせ発電機が起動した。すると部屋にあったパネルが点灯して操作可能になったので、校内の全電源を非常用の電源に切り替える。
「天野さん、そこにスイッチがあるから電気をつけてみて」
「うん、わかった」
天野さんがスイッチを操作すると、地下室がパッと明るくなった。どうやら発電機は正常に動いているようだ。これであの怪物からの攻撃をしばらく防ぐことができるだろ。
通電したことがすぐにわかったのか、生徒会長たちの放送がはじまった。内容は電気が回復したので、明かりをつけること、怪物は明かりが苦手だということ、あと、状況の確認と、今後の行動を話し合う為にクラスから二名の代表が生徒会室へとくるようにと伝えていた。
この放送を聞いて一つの疑問が出た。どうして生徒会主導で話が進んでいるんだ? 普通に考えて、こんな状況になって、まず動くのは先生たちだろう。しかし、騒動の当初から先生が動いている様子はなかった。騒動時は先生たちは職員室で会議中だったことから一か所に集まっていたと予想される。もし、職員室で不測の事態が起こったとすれば……どちらにしろ先生たちに何かが起こっているのは間違いないだろ。
そんな事を考えていると、我が耳を疑うような内容が放送された。
「最後に、クラスの代表とは別に、二年六組の桜宮良太くんもこの話し合いに参加して欲しいので生徒会室へ来てください」
「嘘だろ、なぜ、俺を……」
校内放送でフルネームを呼ばれるなんて、こんな目立つような事は望んでいない。
「生徒会長さんたち、桜宮くんのこと信頼しているようだったから意見を聞きたいと思ったのかな」
「そんなに面識ないのにどうしてかな……まあ、放送までされて呼び出されたのに行かないわけにはいかないか……」
半ば諦めの気持ちで、俺は生徒会室に向かう。天野さんを一人で教室に帰らせるのもどうかと思ったので、一緒に生徒会室まで付いて来てくれるかと提案した。彼女は少し考えると、一人で行動する不安もあってか、それを了承してくれた。
校内は明かりが付けられたことで、あの化け物の活動が止まったようだ。あっちこっちで聞こえていた悲鳴などは収まり、不気味な静けさだけが残っていた。それと明るくなったことで惨状が丸見えとなり、今、この学校がどのような状況にあるか如実に表せていた。廊下には食い荒らされたいくつもの死体が転がり、人の臓物と血が廊下を見えなくするくらいに散乱していた。
俺は厳しい状況を目の当たりして、吐き気とめまいで倒れそうになる。それは天野さんも同じようで、険しい表情で口を押え、必死に何かを耐えていた。
「私たち、どうしてこんな目に……」
「理不尽だが、現実に起こっていることだ。今は自分が生き残る術を考えよう」
別に元気づける為に言ったわけではないけど、彼女は何か納得したように表情に生気を戻した。
生徒会の役員数人が待っていた。放送をしていた生徒会長と副会長はまだ戻ってないようだ。それにクラスの代表もまだきていない。おそらく明かりはついたが、まだ混乱が収まってないのもあり、代表を誰にするか決めるのに時間が掛かっているのだろう。
「君たちはどのクラスの代表ですか」
何かの書類を書き込みならがそう聞いてくる。
「いや、俺はクラスの代表ではなく、名指しで指名された桜宮です」
「あっ、会長が言っていた方ですね。分かりました、こちらにどうぞ」
そんな感じにやり取りしていると会長たちが戻って来た。二人は俺を見ると笑顔で握手を求めてくる。
「桜宮くん、来てくれて嬉しいよ」
「あんな放送されたら来ないわけにもいかないじゃないですか」
「それはそうだね、まあ、君の意見はどうしても聞きたかったから、少し強引に事を運ば差せて貰ったよ」
そう言って笑顔で言われると怒るに怒れない。
それから各クラスの代表が集まり始めた。そんな代表の中には制服が血だらけの者もいて、凄惨な現状を思い出される。さっきまでにこやかだった会長も真剣な表情になってそれを向かい入れていた。
「桜宮くん、凄いね。どうしてそんな機械の動かし方わかるの?」
「前に本で読んだことがあるだけだよ、たまたま知っていただけ」
「たまたまでも凄いよ、桜宮くんって博学なんだね」
天野さんの反応は意外だった。本ばかり読んで他人に興味がないと思っていたけど、こういう普通の会話するんだと新たな発見をした。
エンジンが回り始め、大きな振動音を響かせ発電機が起動した。すると部屋にあったパネルが点灯して操作可能になったので、校内の全電源を非常用の電源に切り替える。
「天野さん、そこにスイッチがあるから電気をつけてみて」
「うん、わかった」
天野さんがスイッチを操作すると、地下室がパッと明るくなった。どうやら発電機は正常に動いているようだ。これであの怪物からの攻撃をしばらく防ぐことができるだろ。
通電したことがすぐにわかったのか、生徒会長たちの放送がはじまった。内容は電気が回復したので、明かりをつけること、怪物は明かりが苦手だということ、あと、状況の確認と、今後の行動を話し合う為にクラスから二名の代表が生徒会室へとくるようにと伝えていた。
この放送を聞いて一つの疑問が出た。どうして生徒会主導で話が進んでいるんだ? 普通に考えて、こんな状況になって、まず動くのは先生たちだろう。しかし、騒動の当初から先生が動いている様子はなかった。騒動時は先生たちは職員室で会議中だったことから一か所に集まっていたと予想される。もし、職員室で不測の事態が起こったとすれば……どちらにしろ先生たちに何かが起こっているのは間違いないだろ。
そんな事を考えていると、我が耳を疑うような内容が放送された。
「最後に、クラスの代表とは別に、二年六組の桜宮良太くんもこの話し合いに参加して欲しいので生徒会室へ来てください」
「嘘だろ、なぜ、俺を……」
校内放送でフルネームを呼ばれるなんて、こんな目立つような事は望んでいない。
「生徒会長さんたち、桜宮くんのこと信頼しているようだったから意見を聞きたいと思ったのかな」
「そんなに面識ないのにどうしてかな……まあ、放送までされて呼び出されたのに行かないわけにはいかないか……」
半ば諦めの気持ちで、俺は生徒会室に向かう。天野さんを一人で教室に帰らせるのもどうかと思ったので、一緒に生徒会室まで付いて来てくれるかと提案した。彼女は少し考えると、一人で行動する不安もあってか、それを了承してくれた。
校内は明かりが付けられたことで、あの化け物の活動が止まったようだ。あっちこっちで聞こえていた悲鳴などは収まり、不気味な静けさだけが残っていた。それと明るくなったことで惨状が丸見えとなり、今、この学校がどのような状況にあるか如実に表せていた。廊下には食い荒らされたいくつもの死体が転がり、人の臓物と血が廊下を見えなくするくらいに散乱していた。
俺は厳しい状況を目の当たりして、吐き気とめまいで倒れそうになる。それは天野さんも同じようで、険しい表情で口を押え、必死に何かを耐えていた。
「私たち、どうしてこんな目に……」
「理不尽だが、現実に起こっていることだ。今は自分が生き残る術を考えよう」
別に元気づける為に言ったわけではないけど、彼女は何か納得したように表情に生気を戻した。
生徒会の役員数人が待っていた。放送をしていた生徒会長と副会長はまだ戻ってないようだ。それにクラスの代表もまだきていない。おそらく明かりはついたが、まだ混乱が収まってないのもあり、代表を誰にするか決めるのに時間が掛かっているのだろう。
「君たちはどのクラスの代表ですか」
何かの書類を書き込みならがそう聞いてくる。
「いや、俺はクラスの代表ではなく、名指しで指名された桜宮です」
「あっ、会長が言っていた方ですね。分かりました、こちらにどうぞ」
そんな感じにやり取りしていると会長たちが戻って来た。二人は俺を見ると笑顔で握手を求めてくる。
「桜宮くん、来てくれて嬉しいよ」
「あんな放送されたら来ないわけにもいかないじゃないですか」
「それはそうだね、まあ、君の意見はどうしても聞きたかったから、少し強引に事を運ば差せて貰ったよ」
そう言って笑顔で言われると怒るに怒れない。
それから各クラスの代表が集まり始めた。そんな代表の中には制服が血だらけの者もいて、凄惨な現状を思い出される。さっきまでにこやかだった会長も真剣な表情になってそれを向かい入れていた。
0
あなたにおすすめの小説
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる