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生存への会議
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「みなさん、集まっていただきありがとうございます。生徒会長の日恵野です。これから、今、本校に起こっている事象と、これからのことを話し合いたいと思います」
会長がそう宣言してすぐ、手をあげて意見を言う人物がいた。三年生の誰かで名前は知らない。
「それはいいが、どうして生徒会が主導してるんだ? 先生たちはどうした?」
「先生たちがどうなったか実はわからないんだ。この状況だからね、僕も一番に先生たちと相談しようとしたんだけど、職員室前の廊下が埋まっていて中に入ることもできなかった」
衝撃的な話に、クラスの代表できていた女子たちが小さく呻く。
「先生たちは全員死んだってことかよ!」
「いや、中の様子がわからないから全員が亡くなっているとも言えない。しかし、現状、先生たちの生死がわからない以上、この不測の事態に対して、生徒会が指導的立場にあると認識している」
確かに誰かが中心になって動かなければ混乱すら抑えることはできないだろう。
「それで、この会議では何を話し合うんだ」
「最初に被害状況の確認をしたい。各クラス、生存者の割合を報告して欲しい」
要は生き残ったのは何割かという話だ。かなりの人数が犠牲になっているようだけど、惨状を思い出させる嫌な質問のように思えるが、実は今後の対応に繋がる重要な情報ではあった。
「三年一組は半数ほどが犠牲になりました……生徒会長、何が起こっているのですか!? どうすればいいんですか! もう何がなんだかわかんなくて気が狂いそうです」
「三円二組は六割が生存、しかし、怪我人が多くて、まともに動けるのは四割ほどです。怪我している連中も、治療できない状況ではいつまで持つかわからないです」
「三年三組は──」
各クラス報告が続き、全体の生存者数を把握していく。あまりにも犠牲者が多くて、生徒会長の表情も曇る。
全てのクラスの報告が終わり、全校の状況が分かってきた。生存者は全体の六割ほど、怪我人多数で、すぐにも医療処置を施す体制が必要だということだった。しかし、生徒会長の話では、職員室の通路先にある保健室も今は状況がわからないようで、保健の先生の安否がわからないどころか医療品が手に入るかも不明であった。
「次にこれからの行動についてだが、意見のある者はいるかい?」
生徒会長のその問いに答える人物はいなかった。みんな現状を報告するのがやっとで、これからどうしていいのか考える余裕がないのだろう。
「それでは桜宮くん、君はどう考えてるか教えてくれるか?」
生徒会長が俺を名指しで指名してきた。それを聞いた俺のクラスの代表を中心にザワザワと動揺が広がる。
「ちょ、ちょっと生徒会長、そもそも二年六組の代表が俺たちです。どうしてコイツがここにいるんですか! こんな奴に意見を聞いても無意味ですよ!」
自分をないがしろにされプライドが傷ついたのか、クラス委員長の城之内が必死にそう訴える。
「それでは城之内くんはどうすればいいと思うか発言してくれるかい」
そう聞かれた城之内は言葉が止まる。そもそも自分の考えもなく、気に入らないという理由だけで言った言葉に責任を取れるはずもない。
「発言はないんだね? それではすまないが黙っててくれるかい? 僕たちには個人的な偏見を聞いている余裕はないんだ」
生徒会長の冷たい言葉に城之内は押し黙った。全校生徒に尊敬されている優等生の言葉は重いようだ。
「それではすまない、あらためて桜宮くんの意見を聞かせて貰えるかい」
この流れでは意見は無いとは言えなくなった。城之内への冷たい言葉はそれを計算して言ったかもしれないと気づくと、やはり生徒会長は侮れない人だとあらためて思う。
「ここまでの話を聞いて早急に行わないといけないと思ったタスクは三つ、一つは職員室までのルートを確保すること、これにより先生たちの安否を確認して、さらに医務室を解放することができます。今の怪我人の多い状況では、医務室にある医療品の入手は最優先事項の一つです。次に必要なタスクは物資の在庫状況の確認です。人が生きる為に必要な水と食料がどれくらい校内にあるか確認して、分配スケジュールを組む必要がある。計画的な消費を考えなくてはあっという間に物資は枯渇するでしょう。最後に安全の確保、未知の生物に多数の生徒が殺された事からわかるように、我々は危険にさらされています。窓を塞いだりバリケードを作るなりして対応する必要があると考えます」
スラっと俺が答えると、生徒会長は同意するように頷く。
「そっ、そんなの俺たちにもわかっていたよ! 偉そうに自分だけの意見みたいに言うんじゃないよ!」
城之内は下だと思っている俺が意見するのがよほど嫌らしい。絞り出すように負け惜しみの言葉を投げつけてきた。俺はそんな城之内の言葉を無視する。それがさらに彼の自尊心を傷つけたのか表情をこわばらせて怒りをあらわにした。そんな彼に生徒会長はさらに冷たい口調でこう質問する。
「城之内くん、そう思うなら桜宮くんの発案に訂正や追記する項目などの意見はあるんだろうね」
指名された城之内は、まさかそんなふうに言われるとは思って無かったのか言葉がなかなかでてこない。やっと発言したのは短い言葉だった。
「い、いえ、ありません」
生徒会長はそう答えるのを予想していたのか、特に反応することもなく、無視するように他の出席者たちにも同じような質問をした。
「他に意見のある者はいるかい? いないなら桜宮くんの意見にそってすぐに行動を起こそう。まずは担当の割り振りだね」
そう言うと、各クラスに明確な指示を与え始めた。その内容はあまりに的確すぎる。生徒会長は最初から何をする必要があるのかなどわかっていたようだ。それでもあえて俺に意見させてのは何か意図があったのか……。
会長がそう宣言してすぐ、手をあげて意見を言う人物がいた。三年生の誰かで名前は知らない。
「それはいいが、どうして生徒会が主導してるんだ? 先生たちはどうした?」
「先生たちがどうなったか実はわからないんだ。この状況だからね、僕も一番に先生たちと相談しようとしたんだけど、職員室前の廊下が埋まっていて中に入ることもできなかった」
衝撃的な話に、クラスの代表できていた女子たちが小さく呻く。
「先生たちは全員死んだってことかよ!」
「いや、中の様子がわからないから全員が亡くなっているとも言えない。しかし、現状、先生たちの生死がわからない以上、この不測の事態に対して、生徒会が指導的立場にあると認識している」
確かに誰かが中心になって動かなければ混乱すら抑えることはできないだろう。
「それで、この会議では何を話し合うんだ」
「最初に被害状況の確認をしたい。各クラス、生存者の割合を報告して欲しい」
要は生き残ったのは何割かという話だ。かなりの人数が犠牲になっているようだけど、惨状を思い出させる嫌な質問のように思えるが、実は今後の対応に繋がる重要な情報ではあった。
「三年一組は半数ほどが犠牲になりました……生徒会長、何が起こっているのですか!? どうすればいいんですか! もう何がなんだかわかんなくて気が狂いそうです」
「三円二組は六割が生存、しかし、怪我人が多くて、まともに動けるのは四割ほどです。怪我している連中も、治療できない状況ではいつまで持つかわからないです」
「三年三組は──」
各クラス報告が続き、全体の生存者数を把握していく。あまりにも犠牲者が多くて、生徒会長の表情も曇る。
全てのクラスの報告が終わり、全校の状況が分かってきた。生存者は全体の六割ほど、怪我人多数で、すぐにも医療処置を施す体制が必要だということだった。しかし、生徒会長の話では、職員室の通路先にある保健室も今は状況がわからないようで、保健の先生の安否がわからないどころか医療品が手に入るかも不明であった。
「次にこれからの行動についてだが、意見のある者はいるかい?」
生徒会長のその問いに答える人物はいなかった。みんな現状を報告するのがやっとで、これからどうしていいのか考える余裕がないのだろう。
「それでは桜宮くん、君はどう考えてるか教えてくれるか?」
生徒会長が俺を名指しで指名してきた。それを聞いた俺のクラスの代表を中心にザワザワと動揺が広がる。
「ちょ、ちょっと生徒会長、そもそも二年六組の代表が俺たちです。どうしてコイツがここにいるんですか! こんな奴に意見を聞いても無意味ですよ!」
自分をないがしろにされプライドが傷ついたのか、クラス委員長の城之内が必死にそう訴える。
「それでは城之内くんはどうすればいいと思うか発言してくれるかい」
そう聞かれた城之内は言葉が止まる。そもそも自分の考えもなく、気に入らないという理由だけで言った言葉に責任を取れるはずもない。
「発言はないんだね? それではすまないが黙っててくれるかい? 僕たちには個人的な偏見を聞いている余裕はないんだ」
生徒会長の冷たい言葉に城之内は押し黙った。全校生徒に尊敬されている優等生の言葉は重いようだ。
「それではすまない、あらためて桜宮くんの意見を聞かせて貰えるかい」
この流れでは意見は無いとは言えなくなった。城之内への冷たい言葉はそれを計算して言ったかもしれないと気づくと、やはり生徒会長は侮れない人だとあらためて思う。
「ここまでの話を聞いて早急に行わないといけないと思ったタスクは三つ、一つは職員室までのルートを確保すること、これにより先生たちの安否を確認して、さらに医務室を解放することができます。今の怪我人の多い状況では、医務室にある医療品の入手は最優先事項の一つです。次に必要なタスクは物資の在庫状況の確認です。人が生きる為に必要な水と食料がどれくらい校内にあるか確認して、分配スケジュールを組む必要がある。計画的な消費を考えなくてはあっという間に物資は枯渇するでしょう。最後に安全の確保、未知の生物に多数の生徒が殺された事からわかるように、我々は危険にさらされています。窓を塞いだりバリケードを作るなりして対応する必要があると考えます」
スラっと俺が答えると、生徒会長は同意するように頷く。
「そっ、そんなの俺たちにもわかっていたよ! 偉そうに自分だけの意見みたいに言うんじゃないよ!」
城之内は下だと思っている俺が意見するのがよほど嫌らしい。絞り出すように負け惜しみの言葉を投げつけてきた。俺はそんな城之内の言葉を無視する。それがさらに彼の自尊心を傷つけたのか表情をこわばらせて怒りをあらわにした。そんな彼に生徒会長はさらに冷たい口調でこう質問する。
「城之内くん、そう思うなら桜宮くんの発案に訂正や追記する項目などの意見はあるんだろうね」
指名された城之内は、まさかそんなふうに言われるとは思って無かったのか言葉がなかなかでてこない。やっと発言したのは短い言葉だった。
「い、いえ、ありません」
生徒会長はそう答えるのを予想していたのか、特に反応することもなく、無視するように他の出席者たちにも同じような質問をした。
「他に意見のある者はいるかい? いないなら桜宮くんの意見にそってすぐに行動を起こそう。まずは担当の割り振りだね」
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