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ダンジョンウォー
ある恋の歌
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その者が気がつくと、人間の少女が、彼の傷口に何やら野草を刷り込んできた。それは癒しの効果のある薬草で、その者の傷は、瀕死の状態から少し動けるまで回復していた。
なぜこの人間は自分を助けるのだろう、理解できないその行動に困惑していた。その者は、おもむろに少女を掴んでみた。その気になればそのまま握り潰せる。そんな状況でも少女の表情は変わらなかった。彼は考えていた。これは人間の娘ではなく、自分の知らない魔物の一つなのではないのか、こうやって油断させて、自分に害を及ぼそうと考えているのではないか、そんな風にしか考えようがなかった。
手を離すと、少女は食べ物を差し出してきた。森になる果物や木の実で、肉食の彼にはとても食欲をそそる物ではなかった。しかし、何も言わずそれを食べ始める。
不味い・・すごく不味い。それに自分の大きな体には、とても足りる量ではなかった。だけどなぜか自分の何かが満たされていくのを感じる。それが何かはわからなかったが、今までに感じたことのないその感情が大きくなっていくのがわかった。
その者はその不意の攻撃を察知することができなかった。鋭い爪で、黒い影は少女に襲いかかる。とっさの攻撃に反応できなかった。もはや死の爪から少女を守るには自分の体を盾にするしか方法がなかった。とっさの判断とはいえ、その者は自分の体を犠牲にして、どうして人間の少女を守ろうとしたか説明はできない。爪はその者の背中を深くえぐる。激しい激痛が意識を飛ばそうとする。このままではその黒い刺客の餌となってしまうだろう。気力を振り絞り、攻撃してきた敵に反撃する。
力いっぱい殴りつけて、そのままその黒い獣に馬乗りになる。何度も拳をたたき込む。黒い獣は、その者の首にその牙を食い込ます。喉から大量の血が噴き出し、血だらけになりながらも、拳をたたき込むのをやめなかった。やがて鈍い音が響き、黒い獣はその動きを停止させた。
意識は朦朧とする、いたるとことから血が噴き出している。しかし、その者に痛みは感じていなかった。薄れる意識の中、その者は無事な少女の姿を見て幸せな気持ちになっていた。それは何かをやり遂げた幸福感であったかもしれない。
血を吹き出して倒れたその者を見て、少女は悲しい顔をしながら必死に薬草を揉んでほぐす、それをその者の傷口にすりこもうとしていた。しかし、それはもう意味のないものだった。死体に薬草は役に立たないからである。
★
リンスの絶対探索で、娘はすぐに見つかった。娘は体中血だらけで、二体のモンスターの死体の近くで泣いていた。血だらけの彼女だが、彼女自身は傷一つついてなかった。
「この状況を見て、どう思う?」
「理由はわかりませんが、モンスターに襲われた娘を、別のモンスターが命をかけて守ったように見えます・・まあ、そんなことがあるとは思いませんが・・」
アスターシアが静かに話し始める。
「聞いたことがありますわ、人の心を持ってしまったモンスターの話を・・それはいつも悲しい結末を迎えると言われているの。もしかしたらこれはそんな悲しいお話かもしれないですわね」
俺は死体となったモンスターを見つめていた。なぜだろう、そのモンスターは何か幸せそうな顔で亡くなっているように見える。それは気のせいかもしれない、でもそうであってほしいとなぜか思ってしまった。
なぜこの人間は自分を助けるのだろう、理解できないその行動に困惑していた。その者は、おもむろに少女を掴んでみた。その気になればそのまま握り潰せる。そんな状況でも少女の表情は変わらなかった。彼は考えていた。これは人間の娘ではなく、自分の知らない魔物の一つなのではないのか、こうやって油断させて、自分に害を及ぼそうと考えているのではないか、そんな風にしか考えようがなかった。
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不味い・・すごく不味い。それに自分の大きな体には、とても足りる量ではなかった。だけどなぜか自分の何かが満たされていくのを感じる。それが何かはわからなかったが、今までに感じたことのないその感情が大きくなっていくのがわかった。
その者はその不意の攻撃を察知することができなかった。鋭い爪で、黒い影は少女に襲いかかる。とっさの攻撃に反応できなかった。もはや死の爪から少女を守るには自分の体を盾にするしか方法がなかった。とっさの判断とはいえ、その者は自分の体を犠牲にして、どうして人間の少女を守ろうとしたか説明はできない。爪はその者の背中を深くえぐる。激しい激痛が意識を飛ばそうとする。このままではその黒い刺客の餌となってしまうだろう。気力を振り絞り、攻撃してきた敵に反撃する。
力いっぱい殴りつけて、そのままその黒い獣に馬乗りになる。何度も拳をたたき込む。黒い獣は、その者の首にその牙を食い込ます。喉から大量の血が噴き出し、血だらけになりながらも、拳をたたき込むのをやめなかった。やがて鈍い音が響き、黒い獣はその動きを停止させた。
意識は朦朧とする、いたるとことから血が噴き出している。しかし、その者に痛みは感じていなかった。薄れる意識の中、その者は無事な少女の姿を見て幸せな気持ちになっていた。それは何かをやり遂げた幸福感であったかもしれない。
血を吹き出して倒れたその者を見て、少女は悲しい顔をしながら必死に薬草を揉んでほぐす、それをその者の傷口にすりこもうとしていた。しかし、それはもう意味のないものだった。死体に薬草は役に立たないからである。
★
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「この状況を見て、どう思う?」
「理由はわかりませんが、モンスターに襲われた娘を、別のモンスターが命をかけて守ったように見えます・・まあ、そんなことがあるとは思いませんが・・」
アスターシアが静かに話し始める。
「聞いたことがありますわ、人の心を持ってしまったモンスターの話を・・それはいつも悲しい結末を迎えると言われているの。もしかしたらこれはそんな悲しいお話かもしれないですわね」
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