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魔界奮闘

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アースロッドがドナウの街に入ると、すぐにアトラが出迎えにやってきた。
「アースロッド様!」
「アトラ、数倍の敵を相手に、今までよく頑張ってくれたのう」

アースロッドの労いの言葉に、アトラは少し恐縮して言葉を返す。
「いえ、この場を守るのが精一杯で、アースロッド様を助けにも参れず、申し訳ございません」
「何を言っておる、頼りになる者をよこしてくれたではないか、紋次郎のおかげでワシは生きてここまで来ることができたのだぞ」
「それは紋次郎の手柄であり、私は彼にお願いしただけにすぎません。讃えるのなら彼を讃えてください」
「それでもワシはそれで助かったのじゃ、謙遜する必要はない。二人に礼を言わせてくれ」

アトラは自らの主のありがたい言葉を嬉しく思う。彼女の父は、アースロッドの父に仕える将軍で、二代にわたってその親子に仕えているのだが、その父の昔からの功績があり、アトラは出世していると周りからは思われていた。アトラ自身にもそんな世間の声は聞こえてきており、それを否定するほど自意識過剰ではない彼女であった。だが、アースロッドには、父親の評価を娘に加算するようなことはしていなかった。純粋な評価でアトラを信頼し、そしてその技量を評価していたのである。こんな背景もあり、アースロッドから直接、評価を受けるのは素直に嬉しいアトラであった。


紋次郎とスフィルドは、アースロッドに軍務室に呼ばれていた。相談があるとのことだが何の話だろうか。

紋次郎たちが部屋に入ると、アースロッドは早速本題を切り出してきた。
「すまない紋次郎、ワシたちに力を貸してくれんか」

大凡の予想はしていたが、やっぱりと言うか予想通りのお願いであった。紋次郎は迷わず、用意していた返事を返した。

「ここまで関わりましたから、俺たちに出来ることならお手伝いしますよ」

それを聞いたアースロッドは無邪気に喜びの表情を見せる。隣に座っていたアトラも彼に同調するように嬉しそうな表情をした。
「何から何まですまない紋次郎、国を取り戻したらお主にはその尽力に見合ったお礼はさせてもらうぞ」

お礼と聞いて、紋次郎は今一番知りたい事が頭に浮かんだ。それがわかるのであれば、お礼としては十分だと思い、聞いてみる。

「アースロッド王。少しお聞きしたいのですが、神族の絶対解呪でも解けない石化の呪いを解く方法なんて知ってたりしませんか、俺はその方法を知る事が出来れば十分なのですが・・」

アースロッドは紋次郎のその言葉に最初少し驚き、そして何やら思い出すように思考すると返答した。

「うむ・・神族の絶対解呪でも解けない呪いのう・・難しい話じゃな、ワシにはその答えは分からないが、もしかしたらそれを答える事が出来る者を一人知っておるぞ」

「本当ですか! それは誰ですか! 紹介してもらえませんか!」

「この魔界一番の学者、アルソネじゃ。しかし・・紹介するのは難しいのう・・」
「どうしてですか?」
「いや、あの人はいつもどこかで発掘や調査をしておるからどこにいるかわからんのじゃ」

それを聞いた紋次郎は、スフィルドの顔を縋るようにじっと見つめた。その無言のプレッシャーに押されたスフィルドがやれやれといった顔で口を開く。

「学者アルソネは今、ロザン遺跡にいるようです。ロザン遺跡はここからそれほど遠くないですね」

それを聞いた紋次郎は喜ぶ。アースロッドは、自分でも知らない情報を簡単に口にするその者を見て驚きと感嘆の声を漏らす。
「そんなことがわかるとは・・お主いったい何者じゃ?」

紋次郎がスフィルドに代わって答える。
「彼女は神鳥スフィルドです。すごく目がいいので色々なことを知っているんですよ」

紋次郎の何気ないその言葉にアースロッドは心底驚く。
「あなたは神鳥スフィルド殿でしたか・・まさかこの地に降りてきているとは知りませんでした」

さすがにスフィルドは神の鳥というだけあって有名なのかな。王の前でもスフィルドの名前は出してたけど、まさかあの神鳥だとは思ってなかったみたいだ。

「紋次郎、侵略してきたブファメの軍を撃退できたら、ワシが学者アルソネに紹介文を書こう。アルソネとは古い付き合いなのできっと力を貸してくれるじゃろう」

特に理由がなくても、アースロッドとアトラを手助けしようとは思っていたが、これで利益としての理由もできた。やる気も出てきたところで、俺たちは本格的にブファメの軍をこの国から追い返す作戦を考え始めた。


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