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1章 従者との生活
平和な生活
しおりを挟む「失礼します。夕食のご用意ができました。」
「あ、ありがとうございます。今向かいます。」
いつの間にかあたりは暗くなっていた。
小説を一度切り上げ、マシロがいる寝室に行く。
(どうせなら一緒に食事すればいいよな)
マシロのいる寝室の扉をノックする。
「入るよ」
(・・・て寝てる)
どうやらまだ疲れが取れないのか可愛い寝息を立てて寝ている。
小さく震える布団はさらに愛らしさを増している。
顔のところどころには汚れが付いていた
(確か、まだ風呂に入れていなかった・・・
夕食の前に風呂に入れようかな・・・誰が?
いや、流石に一人で・・・入るだろうか・・・・
ラナンに頼むのもうか・・・いやでもラナンは家事をするのが仕事であって
他人の世話をすることではないし・・・うーむ)
再度マシロの顔を見る。
寝ているマシロは傷があること以外は10代の可愛い女の子にしか見えない。
傷ついた頬に手を当てる。
傷はもう閉じているというもののかなり深いらしい。
おそらく一生消えることはないだろう。
どのようなもので傷つけられたかはわからないが痛いことは見れば理解できた。
そして父の性格もそこから理解できる。
「もう大丈夫だからな」
「お、おいしいです、ラナンさん。」
「ありがとうございます」
ラナンは後ろに落ち着いた様子で控えている。
目の前には洋風の豪華な食事が並べてある。
しかし、それは1人分の量であることが理解できる。
「ラナンさん・・・」
「はい」
「あと2人分作ってくれますか?・・・」
「・・・申し訳ありません。少なかったでしょうか・・・」
ラナンは傍らに来ると45度くらい腰を曲げて謝罪する。
「そ、そうじゃなくて・・・ラナンさんの分とマシロの分もお願いします。」
「え?!」
ラナンは今までに見たことのないように整った目を大きく開け、口を半開きにして固まった。どうも頭で理解していないようだ。
「ラナンさんも一緒に食べましょう。」
「い、いいえ私はこんな豪華なものは・・・」
いつも冷静なラナンは動揺していた。
ラナンはここに来てからいつも峻矢とは別の時間に別の食事をしていることは
分かっていた。
おそらく前はそうだったのだろう。
ラナンが何を食べているかはわからないとは言え、簡素なもので済ましているのは予想できる。
「豪華って、ラナンさんが作ったものですけどね。」
「い、いえ、それはその、なんというかですね・・・」
ラナンは必死に動揺を隠そうとしているらしいが少し赤い顔と
泳いだ目は止まらなかった。いつもと違う表情はとても新鮮だ。
「ラナンさんもそういう表情するんですね。
なんか可愛いです。」
つい思ったことを口にしてしまう。
「か、かわっ、かわいい!?」
淡桃色の肌は濃さを増し熱を帯びる。
「はい」
「いいいいえ、私は可愛いとかそういうものは、その・・・」
「思うんです・・・食事は誰かと一緒に同じものを食べたほうがおいしいと思うんですよ。
だから、我がままを言っていることはわかるんですけど・・・
よかったら3人で食べませんか?」
ラナンはそういっている間にいつもの調子を戻したらしく冷静に峻矢の目を見ていた。
しかし、その表情はすこし温かく柔らかかった。
「峻矢様がいいとおっしゃってくださるのであれば、私もご一緒します」
「ありがとうございます、ラナンさん」
「しかし、今日は先にお召し上がりください。
ご飯は温かいうちに召しあがっていただいたほうがよろしいと思うので」
「そうですね、わかりました。」
「お食事を終えたら食器はそのままにしておいてください。」
ラナンは一礼すると2人分の食事を作りに行ったのだろう、
美しい後ろ姿で部屋を出て行った。
(さっきの顔はやっぱり可愛かったな・・・)
美しいスタイルと整った顔、名前にあるようなきれいなラナンキュラスのような色の髪、そして不意に見せた赤くなった顔は初めて目の前で見せた女性らしい表情だった。
食事を終えた峻矢はラナンの言う通り食器をそのままにして
寝室に向かう。
(やっぱりご飯の前に風呂に入れたほうがいいよな・・・
こ、子供だし!ももも問題ない!)
医師に来てもらうとき、1度体を大まかには拭いたがそれでもやはり
清潔な状態でいたいだろう。
「マシロ、入るぞ」
「・・・」
「マシロ、夕食の前に風呂入ったほうがいい。
一人で入れるか?」
「・・・」
(命令じゃないといけないんだよな)
「こ、答えろ!風呂1人で入れるよな?」
「・・・」
マシロは口を開く代わり首を傾ける。
(え・・・風呂がわからないのか・・・)
「風呂・・・」
「・・・」
マシロはどうやら風呂という単語すらわからないらしい。
首を傾けたまま動かない。
この場合、もう致し方ない。覚悟はしていた。
「立てるか?」
「・・・はい」
「つ、ツイテコイ」
驚いてつい声が裏返る。
「・・・はい」
マシロはベッドから下りる。
細い脚は今にでも折れそうで長い間寝ていたせいか少しふらついた。
「だ、大丈夫か・・・」
「・・・はい」
風呂場に着き、マシロに服を脱げと命令するとなんの抵抗もなく服を脱いだ。こっちが驚くくらいであった。
「今から、風呂の入り方を教えるから覚えて明日からは一人で入れ」
「・・・はい」
その後、少女の裸体を意識しないように髪の洗い方、体の洗い方、顔の洗い方、お風呂場の使い方を教えた。
マシロは教えるたびに同じように
「・・・はい」と答えた。
白い髪の量は多いが1本が細く、肌は傷が目立つもののきめが細かい。
(まあ子供だったら・・・こんなものなのかな)
目は虚ろなものの集中して洗い方を見ている。
瞬きをできるだけ少なくしているせいか人形と言われても区別つかないだろう。
「い、痛くないよな?」
「・・・はい」
それにしても子供であったとしても裸というのは何か意識してしまう。
胸が大きいわけでもなく女性としての魅力は少ないとしても
女という事実はあるわけである。
(意識しないようにしないと!そうだ!次の原稿の話を!)
・・・
・・・
ドライヤーに揺られるさらに綺麗になった銀髪、
慣れない手つきで髪をとかしながら乾かす。
(さらさらしていて触っているこっちもなんか気持ちいい。
なんか癖になりそうだな。)
マシロは特に無表情で遠くを見ながら座っている。
人形の髪をとかしているんではなかろうかと疑いたくなる。
「い、痛くないよな?」
「・・・・・・はい」
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