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1章 従者との生活
白い少女
しおりを挟む「失礼します。お食事を用意しました。」
ラナンの持ってきたワゴンの上には温かそうな食事とパンがあった。
湯気が立ち込めているその食事はとてもおいしそうである。
「ラナンさん。ありがとうございます。」
「いえ、このくらい。」
「それで、この子なんだけど・・・
これからは、マシロと呼んでください」
「承知しました。マシロですね。」
ワゴンから食事を机の上まで運び、ゆっくりとマシロの前に出す。
「マシロ・・・え、えっと食べろ!」
「・・・」
マシロは食事をすると思いきいや、スプーンを見たままなんの反応もしない。
(・・・なんで食べないんだ?)
「マシロ・・・た、食べろ!」
「・・・」
マシロの様子に変化はない。
スプーンでスープを掬いマシロの顔の前までゆっくりともっていく。
「た、食べろ!」
マシロは少しの間の後、ゆっくりと顔をスプーンに近づけようやく口を開いた。
何が問題だったかは不明であったがマシロが食事をして峻矢は安心した。
もう1度、スプーンでスープを掬いマシロの顔の前でもっていく。
それに応じてマシロは口に運ぶ。
どうやらお腹は空いていたらしく、その後はアップテンポで腕が動いた。
マシロをもう1度寝かせた峻矢は腕の疲れを感じながら、リビングの大きなソファに腰かけた。
(腕疲れたなあ・・・まあ生活できないわけではないみたいだ。
ただ、まだ体がやせ細っているから食べさせないと・・・)
「峻矢様」
洗い物を終えたラナンはいつの間にかソファの後ろに控えていた。
「ひ、はい!」
「驚かせて申し訳ございません。
尋ねたいことがございまして・・・」
「なんでしょうか」
「あの、マシロという少女はこれからどうするおつもりですか?」
「そうですね・・・」
地下室に閉じ込められ、ずっと虐待を受けてきた少女。
同情しないかと言われたら、勿論同情してしまう。
女の子の傷口や痣は目をつぶりたくなるくらい悲惨なものである。
しかし休息は必要とはいえ、マシロもそれでは暇であろう。ここで育てるのは当然だ。財政的に問題もない。
「数日は休息させて、マシロがよければ簡単な家事をさせます。
ラナンさんの負担も減りますし、マシロのリハビリにもなると思います。」
「わたくしの負担を・・・」
ラナンは少し顔を伏せ、何かぶつぶつとつぶやく
「ラナンさん?」
「・・・は!はい、ありがとうございます」
「じゃあ、それでよいでしょうか?」
「はい。簡単な家事は私が教えましょう。」
ラナンはここ数日、少しずつであるが明るい雰囲気になったような気がした。
気のせいとも考えられるが、声が少し明るくなり小さな表情の変化も感じられるようになった。
(気のせいだろうか・・・いや前向きにとらえよう!)
書斎に戻り、一息つける。
まだ慣れない環境ではあるが仕事はしておかないといけない。
峻矢は大学中に小説家になることを目標にしていた。もともと子供の頃からの夢だったのもある。
大学を終え、いざ小説家になったもののなかなかうまくは進まなかったが
この大きな家に来る少し前にようやく軌道に乗ってきたのである。
まだまだ非力だとは言えるが、夢をかなえることができてとても嬉しかったのであった。
(それにしても小説家志望でよかったかもな・・・
この家にずっといられるし、少しの間はマシロのことも心配だ。
家事はラナンがしておいてくれるし、集中できる。)
静かな書斎、まだ体が馴染んではいないが小説家のスランプ対策にもなるだろう。
といってもスランプになるほどのことはまだしていない。
(とりあえず、何か書き始めるか・・・)
峻矢は新しい小説の題名をこうつけた
『白い少女』
・・・
・・・
・・・
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