主従の逆転関係

蝸牛まいまい

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2章 従者との日々

レナ

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ラナンがマシロに仕事を教え、マシロも度々家事をしているところも見られた。
どうやら料理などの難しいものはラナンがして掃除、洗濯などを手伝っているらしかった。
ラナンに比べると経験量にしても拙いのはわかるが、もともと器用なのか特別できないわけでもないらしい。

相変わらずラナンの作る食事はいつもよくできており、3人で食事するのも日常になりつつある。
ふと食事をしているラナンを見ると美しい金髪がさらに綺麗になっていることに気が付いた。
おそらくシャンプーとコンディショナーをしっかりと使っているらしい。
マシロの銀髪も同じものを使っているのか、さらさらしている。

(平和な日常だ・・・)

ピンポーン
平和に3人で食事していると突然チャイムが鳴った。
昼下がりの食事中に訪問とは礼儀のなっていないものだとフォークを止める。

(あいつでも来たのか?)

ラナンは峻矢をちらりと見るとすぐに椅子から離れた。
マシロは特に気にせず食事を淡々と続けている。

「私が出ます。」
「あ、ありがとうございます。」

止めたフォークをもう一度パスタに刺す。






「おかえりください。」
「その口の聞き方はなんだ!」
「もう一度申し上げます、おかえりください。」
「お前の主人をここに呼んで来い。話がある!」
「峻矢様は今はお取込み中です、帰りなさい。」

遠くからでも聞こえてくるラナンの声と男の声。
ラナンはいつもより数十倍、強く声を出している。
口調は丁寧とはいえ普段感情をあまり示さないラナンが怒るとは
男ということはあいつではなく別の・・・そうとうめんどくさい訪問販売かなんかだろうか。
フォークの速度を少し休め、耳を傾ける。

「お前の主人を早く出せと言っている!」
「おかえりください」

全く、他人をお前呼ばわりとは・・・
フォークを手前に置き、椅子からどっしりと体を起き上がらせる。

(訪問販売も最近は強引だな・・・)

「ラナンさん、どちら様ですか。」
「峻矢様!申し訳ありません、この方は・・・」

玄関を見ると中年の男が怒った顔で立っていた。薄い金髪が特徴的だ。
姿を見るに高そうな服を身に着け指輪などの装飾品までつけている。
しかし、顔は汚くまるで本当に訪問販売の人間と大差ない。

「お前がレナの今の持ち主か!」

(レナ・・・?レナって誰・・・
とりあえず家に入れるか・・・)

「ラナンさん、お茶をお願いします。」
「・・・・・・かしこまりました」

ラナンは中年男を睨むと後ろをくるりと振り向いて台所へ向かう。

「中にどうぞ」






「それで、今日は何用でいらしたんでしょうか」

男はお茶を飲んで少しは落ち着いたがまだ眉間にしわが寄っている。明らかに機嫌は悪い。

「レナを返してもらおうと思って来たんだ」
「・・・レナ・・・とは誰でしょうか」

知人にそんな名前の人はいない。

「そこにいる奴だよ!」

男は強い口調とともに指を向けた・・・ラナンへと・・・

(ラナンの本名がレナということだろうか・・・)

「・・・ラナンさんのお知り合いですか?」
「・・・」
「俺はこいつの父親だ!」

話によるとこの男はラナン、もともとの名前レナの父親らしい。
男の出した写真には白と黒の服を着て歩いているラナンの姿があった。
おそらくその目立った格好が周りでも噂になったのかもしれない。
しかし、なぜこのタイミングなのかが分からない。
もしかすると父が死んだことによる影響かもしれない。
暴君父がいなくなったという理由の可能性が大きい。

「レナの父親は俺なんだから、そいつの所有権は俺にある!
体もいい感じになってきたし、俺が養ってやる」

男は傲慢な態度でラナンの体をなめるように見る。

「それにしてもいいところに住んでんじゃねーかレナ。
まあ、俺の家はもっと住み心地よくしてやるよ、お前の努力しだいでな、ははは」

ラナンは少し目を伏せているようにも見えるが悲しい目をしながら父親をにらんでいた。

「お前を捨てたことは悪いと思っている、こんないい女になると知っていたなら
最初からちゃんと調教して育てるんだった、すまないな。ははは。
まあ、安心しろ今日からは俺のところでしっかりと育ててやるよ!
それじゃあ、もう用も済んだし、帰るぞレナ!」

耳から入ってくる汚い声が脳を腐らせるような気持ち悪さと痛みを走らせる。
痛みは脳をフル回転させ、そのせいか血管がいくつも切れるような気がする。
血管から漏れ出した熱い怒りの血は体の中を這いまわり脳だけでなく
手足の付け根まで浸透し体中が熱くなるのを感じた。
一息深呼吸をして熱くなった体をクールダウンさせた。

「レナの父親ですよね。」
「なんだ!」
「レナはここに生涯働くという条件です。
つまり、今のレナはここにいないといけません。」
「レナは俺の父親だぞ!」
「はい、それは承知しております。しかし、これはレナが飲んだ条件なのです。
易々と渡すわけにもいけません。」

ラナンの顔が上がったことを横目で確認した。

「・・・どれだけ渡せばいいんだね!金だろ?」

(糞野郎だな!)

「いいえ、違います」
「なんだ、言ってみろ!」

ラナンの顔を見るといつもの冷静な顔に戻っている。

「レナがもしあなたのところへ自らの意志でそっちの家に行くというのであれば
即座に渡しましょう。しかしここに残ると言うのであればおかえりください!」
「・・・・・・はっはっはっは!そんなことでいいのか。
話のわかるやつじゃないか!いいだろうその条件で俺は構わんよ!
はっはっはっは」

男は勝ち誇ったように高笑いした。

「ほら、レナ帰ろう!こんなところでこき使われるよりずっといいぞ!
少し体は張ってもらうが、今よりずっとましだ!うまいものも食わしてやる。
さっさと帰るぞレナ」

ラナンは冷たい目で男の高笑いを眺めた。
その目はまるでゴミをみるような目であった。

「ではレナさん。あなたはどうしますか?」
「レナ、答えるまでもないな!はっはっは」

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