主従の逆転関係

蝸牛まいまい

文字の大きさ
9 / 22
2章 従者との日々

ラナン

しおりを挟む


「・・・」

レナは静かに峻矢を見ると少し笑って答えた。






「峻矢様、私の名前はレナではありません。ラナンです。
主人なのですから間違えないでください。」





「・・・レナ?・・・それはどういうことだ・・・?」
「それと前々から言おうと思っていたのですが、峻矢様は私の生涯の主でもあります。
敬語は使われるべきでないかと思います。」
「・・・レナ・・・待て・・・俺の家に行くんじゃないのか・・・
冗談にもほどが・・・」


・・・
・・・
抑え込んだ血の流れはまた速度は増すことはなかった。
ラナンの少し嬉しそうな目は峻矢に向けられ、峻矢もそれに応えた。

「ラナン、お客様がおかえりになるそうだ。お見送りしましょう。」
「はい、かしこまりました。」
「ま、待てレナ!俺はお前の、ち、父親なんだぞ!
これからは一緒に暮らして養ってやろうと言っているんだ・・・」


ラナンは静かに重く別れの言葉を告げた。永遠の別れの言葉にも聞こえただろうか・・・

「お客様、雨上がりですのでお足もとにはお気をつけてください。
それと先程からおっしゃっているレナさん?ですか、
見つかることをお祈り申し上げます。
私の名前はラナンといいますので人違いにございます。
父親はいません。しかし私を捨てたゴミ男であることは理解していますから
あなたとは別人ですね。
では玄関に案内します。」
「・・・この糞ガキが!・・・・」




ラナンはその接点のない男を嘲笑うかのように冷静に淡々と言い放ち、一礼した。










「峻矢様、今日はありがとうございました。
深く感謝申し上げます。」

夕食の後、ベッドに横になろうとしたときノックとともに
ラナンが入ってくる。

「いや、別に大したことはしていませんよ。
それにラナンさんももう大人なんですから自分の人生は
自分で決めてもいいと思いますし・・・」

深々とお礼したラナンはもう一度顔を上げると
冷静な顔つきで頬を薄ピンク色に染めていった。

「それで、峻矢様に一つお願いがあるのですが・・・」

(ああ、敬語のことについてだろうか・・・)

「すいません。もしかして敬語のことですか?それならすぐに改めます。」
「い、いえ、確かにそれもそうなんですが・・・
もう一つ別にお願いしたくて・・・」
「はい、なんでしょう・・・ええと、何?」
「前におっしゃっていたお給料の件なんですが・・・」

(ああ、それか、やっぱりほしいのだろうか・・・)

確かに仕事を十分にしている以上、正当な報酬は払われるべきだ。
前にデパートに行ったときにでも欲しいものがあったのだろう。

「やっぱり、給料はあったほうがいいですよね。」
「いえ、そういうことでもないんです。」
「?」

(となると代わりにもう少し休みがほしいとか・・・)

「半月に1度ほどでいいんですが・・・

(やっぱり休みか・・・まあ全く問題はない!)

「峻矢様とお出かけをしたい・・・です・・・」
「へ?」

ラナンは体をふらつかせ、顔を赤らめもじもじとしながら答えた。

「その・・・ですね。お洋服ももう少し見てみたいですし・・・
いろんなことを知りたいと思ってですね・・・
峻矢様は様々なことを知っているので・・・一緒にお出かけをと思って・・・」

勿論、答えは1つしかない。こんな美人と一緒に半月に1度お出かけできるのは
こっちから願うまでである。加えて、普段特に何もそういうお願いをしない
ラナンが私的なお願いをしてくることはこの上なくうれしいことだった。

「仕事をしている多くの人は月給と呼ばれ月に1度の報酬があるんだけど、
半年でいいの?」
「・・・え?その月に1度でもいいんですか?」
「勿論です。」

ラナンは赤らめながら少し口角を上にあげ目には虹を描くように微笑んだ。

(ラナンもこんな表情するんだな。こっちまでなんか嬉しいな)



「で、では、お願いします。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...