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2章 従者との日々
垣間見る
しおりを挟む「し、峻矢様・・・明日は時間があるでしょうか?」
「あ、ああ、そろそろリフレッシュしてもいいころかな。」
「は、はい!峻矢様も毎日書斎に籠っていてはいけないと思います。
・・・それで、次は・・・どこへ・・・」
夕食後、リビングでマシロの髪を乾かしている時間。
これはマシロに頼んでさせてもらっている。
マシロは椅子に座りふらふらと脚を揺らしながら遠い目をしていた。
時間が経ってもマシロの目は虚ろのままである、
しかし変化は確実にある。初めて合った頃に比べると
痩せていた力ない人形のような体は少しは人間のような動きが増えている。
さらさらしている細い銀髪はすでに女性のそれである。
そしてもう1つマシロが大きく変わったことがある。
「マシロ、終わったぞ」
マシロの肩を3回ほどやさしく叩くとマシロは揺れている脚を止め、
椅子から降り、小さな足取りでどこかに行く・・・どこかというより書斎である。
何故かマシロはラナンに与えられている家事の合間、ラナンが家事をしているとき、
時間があれば書斎に来て、ただただ隅っこで膝を曲げて体育座りをしているのである。
後ろにずっと気配を感じると少し原稿も書きずらいが邪魔をしているわけではないので
特に気にもしていない。
「峻矢様」
ラナンを見ると首を少し傾けてマシロの後ろ姿を見ている。
「どうしたの?」
「・・・マシロはいつもどこにいるのですか?」
「あー心配しなくていいよ。俺の書斎だから」
「え?」
当然、冷たい空気が流れ込む。
エアコンを横目で見るが起動していない。
もしかすると・・・
起動しているのはどうやらラナンのようだった。
初めて会った時のような冷酷な目。
ただそこに追加して目元が暗い・・・前髪の所為だろうか・・・
その目が自分に確実に向けられていることがわかると冷や汗が額から吹き出る。
「なぜ?なぜマシロを部屋に連れているのですか?なぜですか?」
連呼される『なぜ』という言葉は背筋の寒気を誘う。
「いや、俺もよくわからないんだけど、最近時間があると書斎に来るんだよ。
た、多分、まだ子供だし、父親のような存在に甘えたい願望も少しはあるんだと思う。
大目に見てあげようかな・・・と」
向けられている冷たい視線は瞬き一つない。
(いつもラナンと何か・・・違うことも・・・ないのか?)
「そう・・・なんですか・・・
しかし最近はマシロの髪をドライヤーで乾かすことも多いですよね?
それもマシロから?」
「あ、いやそれは俺か・・・
「峻矢様から!?どうしてですか?どうしてですか?」
ラナンはいつもと違って息が荒く、腕を上下に振りながら、冷たい目で同じ言葉を繰り返す。
「お、落ち着いて!ラナン!
それは・・・マシロの髪を乾かすのがなんか心地よくて・・・
マシロに頼んだんだよ」
ラナンに誤解されないために嘘偽りなく真実を語る。
しかし真実を語れば語るほどに目の光がなくなっている。
ラナンは少しは落ち着いたみたいだがまだ歯を少し食いしばっているように見えなくもない。
「・・・峻矢様。私の髪はどう思いますか?」
(髪?)
「え、えーとよくわからないけど、シャンプー変えてからとても綺麗になったよね。
艶があってとてもいいと・・・」
「乾かしたくなりませんか?」
「え?」
「乾かしたくなりますよね?」
「え、えっと・・・」
「乾かしたいですよね?」
「・・・うん、まあ触ったら気持ちよさそうかも・・・しれない・・・けど・・・」
「明日からでも毎日、触りたくなりますよね?」
「え」
「ね?」
怖い。ラナンはハイと言えと命令しているかのような目でにらんでいる。
それに気圧されてイイエと言えなくなる。
いつものラナンと少し違う。
「そ、そうだね・・・」
「私は構いませんよ?全く問題ありません。ええ。
峻矢様が明日から毎日髪を乾かしたいと言うのであれば、使用人として
従います。勿論です。」
「・・・えっと、別に俺は無理強いは・・・」
「峻矢様のお望みを叶えるのも使用人の仕事です。
遠慮は必要ありません。私は全く負担には感じません。
むしろ峻矢様がそれで気に病むのであるほうが大問題です。
これは峻矢様のためにもそうしないといけませんね。」
「・・・じゃあ、お願いしようかな・・・ラナンがいいのなら・・・」
「はい、承りました。では毎日忘れずにしてください。」
「・・・あ、ありがとう・・・」
ラナンは少し顔を赤くしながらも失っていた光を戻した。
別にいいなんて言えなかった。
言ったらどうなっていたんだろうか・・・
あの目に逆らうことはできなかった。
(ラナンも父親を失ったから誰かに甘えたいんだろうか・・・)
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