主従の逆転関係

蝸牛まいまい

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2章 従者との日々

起動スイッチ

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ピンポーンピンポーンピンポーン



3人の穏やかな昼食中に突如天気予報すら予測できないであろう嵐がやってくる。
今日の天気は快晴、絶好のお出かけ日和であり、それに伴って昼食の後
3人でお出かけをするつもりであった。

「シュン!!!シュン来てやったわよ!!
この私、恭子様が来てやったわよ!!!」

嵐が来ることなんて誰も望んでいないであろう。
望むとすれば水不足な乾燥地帯くらいであろうがここは美女2人がすでに存在している
陽気なリゾート地ともいえる、潤いは十分だ。
そして最近この家に何の用もないくせに遊びに来るのである。
全く嵐が遊びに来るなんて大迷惑である。
加えて昼食時の途中に来るからもっと迷惑だ。

2人の美女は刹那、体を固める。
静かなことは変わらないはずなのに、陽気な昼下がりは南極大陸の昼下がりに変わるのである。
2人からでる嵐に対抗する吹雪のような視線は昼食のスープを凍らせるのではないかと思ってしまう。




「何よシュン!なんか雰囲気が暗いわよ!
こんな美女3人に囲まれているのに」

(3人ね・・・)

「で・・・何しに来た」
「決まっているじゃない、遊びに来て上げたのよ」
「・・・帰れ」
「冷たいわね!」

自称美人のその幼馴染は頬を膨らまして、大きな目でこちらをにらめつけてくる。
ラナンとマシロは少し峻矢を注意深く見つめる。
この2人に比べたら恭子なんて子供みたいなものである。

「今日もおいしそうね!
シュン少し頂戴!ほらあーんして!あーん!」
「か え れ」

突然2組の目が光る・・・というより暗くなる。
なぜか最近、この黄色い髪と白い髪の美女たちは茶髪の自称美女が来ると機嫌が悪くなる気がする。
本当の嵐の最悪はこれだった。
なぜか嵐が来ると2人の調子が狂うみたいである。
おそらく性格があまり合わないみたいである。
確かに性格だけで見ると対極である。

ラナンは自らで作ったビーフにフォークを刺した。
フォークには何か強い感情が入っているのではないかとも感じる。

「きょ、恭子。今日は昼から3人で少し買い物に行くつもりだからもう帰れ。」
「私とマシロちゃんとラナンさん?」
「違う!俺とマシロとラナンだ!お前はさっさと彼氏とでも出かけろ!」
「だから!別れたわよ!もう興味ないわ!
それより私も行くわよ!2人の服はセンスのいい私が選んであげる。
シュンの趣味は少し地味だもの!
ラナンさんもシュンなんかより私の選んだもののほうがいいよね?」

ラナンはフォークを止めると峻矢の顔を見て答えた。

「いえ、私は峻矢様が選んでくださるもので構いません。」

ラナンの顔は恭子に向くと冷たい笑顔をさらした。

「残念だったな、恭子」
「・・・んー何だと!!可愛いマシロちゃんは可愛い服を可愛い私に選んでほしいわよね!」

恭子は少し怒りながらマシロに顔を向けるがマシロは何も気にしていないように食事を続ける。

「ま、マシロはどっちに選んでほしいんだ?」

マシロは黙々と続けていた食事を急に止めると峻矢のほうを黙って向いた。

「・・・らしいぞ恭子、お役御免だって、ってことで帰れ」
「・・・いやだ!絶対行くから!」





結局恭子は強引に3人についてきた。
仕事に必要な道具や生活用品を買い揃える。

「シュン早くいくわよ!いい服がそろってるところ教えてあげるから。」 

(こいつもしかして俺に自分の分まで払わせるつもりか?)

「お前の分は買わないからな!」
「えーーーケチ!」
「なんとでもいえ」

恭子の教えてくれた店には確かにオシャレな服がそろっていた。
少し高いことを除けば特に問題はなさそうである。

(うわっ1着2万とか・・・肌を隠すためのものなのに・・・)
・・・
・・・
・・・


「シュンのセンスって少し地味だわやっぱ・・・」

その後2人の服をある程度選んび会計を済ませた後恭子が強引に
『私のも選んでシュン!ここ教えてあげたんだからいいでしょ!』
と言われ渋々選んでやった。
強引に選ばせておいて文句をいうなんてなんてひどい奴だろうか。

「いやなら買うなよ!お前がいつも派手すぎるんだよ。
もう子供じゃないんだから少しは・・・」
「よしじゃあ、遊んで行こーー!」
「いや俺は帰るから・・・」
「えーなんで!」

こいつは体力のモンスターである。
おそらくこの命令形の誘いに乗ってしまったが最期、夜まで連れまわされ
朝に帰ることになるかもしれない。
仕事もあるし生活習慣は崩したくない。
それに朝3人で静かに食べるラナンの温かい食事のほうが有益である。

「疲れた、俺はもう帰る。」
「じゃあ、シュンは帰っていいわよ。
それじゃあラナンさんとマシロちゃんは行くわよね。」

聞いても無駄なことになぜ気づかないのであろうか・・・
ラナンとマシロは明らかと言わずともなんとなくであるが恭子のことを
煙たがっている。性格の問題であろう。

「いえ、私は夜ごはんも作りたいので峻矢様についていきます。」

マシロはというと特に返事もすることもなく俺の背中に付いた。

「じゃあ私もついていく!」

結局どこにでもついてくるのか、犬と同じだな。
しかし、恭子はおそらく本気だろう。
困ったことにこうなったら絶対に着いてくる。

「ラナンさん、今日は1食大目に作ってあげて。」
「・・・かしこまりました。」
「やったーーー!!」
「ただ条件として、すぐに帰れ!」
「わかってるわよ!」

峻矢は恭子の強引さに気疲れしていたせいか2人の気に気づかなかった。
2人の目は暗く光っていた。
純粋な黒といえばいいだろうか・・・
果たして純粋な黒というのは濁った白とどちらが清廉だろうか・・・






峻矢はまだ知らなかった。3人の想いを。
元気な女の子は天真爛漫なようで考え深く、そのことに2人は気づいていた。なぜなら2人は暗いものばかり見ていたからだろう。

そして、彼女は2人の起動スイッチとなった。














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