【仮題】VRMMOが世界的競技になった世界 -僕のVR競技専門高校生生活-

星井扇子

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はじまりまして。

【02-06】初依頼と初バトル

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 VRルームに着いた僕は、機器の接続をして、VR接続を行った。



-------



 サーバー選択を終えた僕は、最初と同じように第一噴水広場に出現した。
 僕は初心者に見間違えられないように、足早に広場を去る。向かう先は、冒険者ギルドだ。今は大体八時。十二時に寝るとして、あと三時間はプレイできる。時間は十分だろう。



 冒険者ギルドに着いた僕は、中に入り、空いてそうな列に並ぶ、さっき来た時よりも明らかにアジア人の見た目の人が多い気がする。ヴィーゼの町とその周辺はどの国のプレイヤーも最初に訪れる場所なので、ずっと昼のままになっている。それでも、時差があるため時間によってプレイしている人の国籍がばらけている。
 ヴィーゼの町から離れれば昼夜がある町もあるらしく、自国の日照時間と同じ町を拠点にするプレイヤーもいるらしい。

 僕の番が来た。さっきとは違う受付嬢だ。

 「本日はどのようなご用件でしょう」
 「依頼を受けたいです」
 「かしこまりました。ギルド証の提出をお願いします」

 僕は言われた通り冒険者ギルドのギルド証を見せた。

 「はい」

 受け取った受付嬢は、なにかやったあと、僕に返してきた。

 「テイル様が今受けられる依頼は一つです」
 「一つですか?」

 一つしか受けられないようだ。僕がそんなに弱いってことなのかな。

 「はい。最初の依頼はどの方でも同じ依頼を受けてもらっています」

 チュートリアル的なものだったようだ。

 「北門から出たところにある草原で、角兎を狩ってもらいます。五匹狩ったらギルドまで持ってきてください。持って来たら、ギルドの隣にある解体所に持っていってください。ご自身で解体した場合も同じです。そこで受取証をもらったら、受付で完了の報告をしてください。そこで受理されれば、依頼は終了です。ご不明な点はございますか?」
 「いえ、大丈夫です」

 依頼を受けた僕はギルドを出て、北門に向かった。

 北門に着いた僕は、門番の衛兵にギルド証を見せてから、門の外に出た。



-------



 門の外は草原だった。見渡す限りの草原。所々に木が立っていたり、花が咲いていたり、むき出しの岩があったりしている。他にも、角兎や牛のみたいな生物や、馬みたいな生物がいる。
 掲示板では、この草原にいるのは、角兎、スライム、ホーンブル、ホースになっていた。スライムは、雫型のポヨポヨした姿をしている。角兎は角の生えた兎。ホーンブルは闘牛に出るような角が前に長い牛。ホースは現代の足の長い馬ではなく足の短い馬になっている。
 遠目に見ると少し変わった牧場にいる感覚になるが、最初の戦闘になることから、恐怖感を抱きにくいモンスターになっていると掲示板にあった。

 僕は、とりあえず門から離れるように歩く。草原にはすでに何人かの冒険者がいた。僕は、彼らに近づきすぎないように移動する。
 歩いている感じだと、地面に大きな凹凸はなく、足場としては戦いやすそうである。素人目だけど。

 僕は、周りに誰もいない場所で角兎がいるところを探す。草原には背の高い草も所々にあったが角兎が見えなくなるほどではなかった。
 僕は、角兎を見つけると〔気配遮断〕を使う。〔気配察知〕で角兎と自分以外の気配が存在しないことを確認する。

 僕の今の間合いは、尻尾が伸びる距離だ。僕は縮めていた尻尾たちを伸ばしていく普通の状態で一メートル程の長さになる尻尾をさらに伸ばしていき二メートルぐらいになったところで伸びなくなった。
 キャラメイクの時の豚の尻尾のことを考えると、もっと伸びそうだが、キメラ種はレベルが低いうちはその部位の本来の力は出せないことになっている。ヒュドラの頭も今は一般男性の太もも程が普通の状態だが、本来はもっと太い。

 僕は、二メートルほどになった尻尾を元の一メートルに戻してから角兎が二メートル以内に入るように移動する。

 〔気配遮断〕を使って移動するが、三メートルほど近づいたときに気づかれてしまった。
 角兎は僕の方を見ながら動かない。
 僕は、隠密迷彩蛇のオンに〔隠密〕と〔迷彩〕を発動させ、ジリジリと少しづつ近づく。
 二メートル五十を切ったところで、角兎が威嚇をしてきた。
 角兎が二メートルの範囲に入った瞬間、僕はオンを一気に伸ばして角兎の首筋に噛みつかせようとする。
 僕の目には見えているが、今のオンは角兎に見えていないはずだ。

 オンは徐々に近づいていく。僕としては最速で伸ばしているつもりなのだが、AGIが一の影響がここでも出ている。尻尾たちが自分で動くときはもっと早いのに、僕が操作したときは僕本体のステータスに影響を受けるようだ。

 普通の攻撃としては遅いが、不可視の攻撃だ。角兎に察知する術はない。
 オンは角兎の首筋を見事に噛みついた。
 噛みつかれた角兎はブルッと震えた後飛び退こうとする。
 オンは角兎を離さないように噛みつく力を強める。
  猛毒が発動しているはずだが、角兎は暴れている。

 僕は、角兎が間合いの外に行かないように近づきながら、キラースネークのキーとルーを操作して追い打ちをかける。
 隠密迷彩蛇は本来身体能力が低い種族だ。案の定、角兎の必死の抵抗に耐えられず口を離してしまう。
 僕は、キーとルーを必死に伸ばすが角兎は僕には追い付けない速度で逃げて行ってしまった。

 僕の最初の狩りは失敗に終わった。



------- 



 僕は今、角兎を狩るために近づいている。先ほどの戦いで僕の〔気配遮断〕では、角兎にバレてしまうのがわかっているため、さっきよりもゆっくり近づいていく。
 残り三メートル程まで近づくが今度の角兎は僕に気づいていない。角兎は何やら木の実を食べている。僕は、オンだけでなくキーとルーもすぐに伸ばせるように準備しながら近づく。
 角兎は気づかない。これはいける。そう思った瞬間、角兎がバッと僕の方を向いた。角兎は僕を見て僕の方に向かってきた。僕はキーとルーで攻撃しようとするが、咄嗟の出来事で操作がうまくいかない。

 気付けば角兎と僕の距離は一メートルもない。

 僕は腕を顔と首の前に出そうとする。

 角兎が跳ぶ。
 
 角兎の開けた口の中にある牙が見える。

 僕が痛みに備えて目を閉じたとき、

 「キュッ」

 角兎の鳴き声が聞こえて目を開ける。
 角兎が僕の右前方を飛び、地面に倒れこんだ。僕の視界の左側にはヒュドラの頭のドーが見える。ドーが角兎を突き飛ばしたのか。

 僕は一瞬の戸惑いから復帰し、改めてキーとルーで角兎を攻撃する。
 角兎はドーの頭突きが効いたのか起き上がることができていない。
 キーが首筋に噛みつき、ルーが胴体に噛みついた。
 角兎が断末魔を上げて力なく倒れた。

 僕は、キーとルーをそのまま噛みつかせた状態で、近づいていく。
 手の届く距離に近づいて、角兎のHPが尽きたことを確認して、キーとルーに解放させる。

 僕は、角兎に触れ、メニューを開く。

 このゲームには共通のインベントリがない。魔法かアイテムを入手しないとインベントリやアイテムボックスといった空間収納ができない。これらは、入手しにくいわけではないので、ある程度強くなれば誰でも持っているものだが、始めたばかりの僕が持っているわけがない。
 ただそれだと、初心者は依頼一つ達成することの難易度が上がってしまいそうだが、討伐や採取のような依頼の時はメニューにある依頼の欄から目標物を空間収納できるようになっている。

 僕はメニューから角兎を収納した。

 僕は二回目の狩りで予定通りではなかったが獲物を狩ることができた。
 怖かった。



ーーーーーーー



 最初に角兎を狩ってから一時間半、ようやく四匹目の角兎を狩ることができた。
 方法は、最初と同じ。できるだけ近づいて、オンを先頭にしてキーとルーで一気に攻撃する。僕はあれから三匹の角兎を狩ったが失敗した数は十を超えている。成功したのは一回だけだ。それも、角兎が逃げようとした方向に偶々ルーがいただけ。他二回は二回目と同じように僕に向かってきたところを尻尾のオートガードに吹き飛ばされてキーとルーにとどめを刺されたものだった。オンの猛毒はあまり効いてないようだ。

 あと一匹で依頼達成だ。
 これまでの失敗でわかったことがある。僕の〔気配遮断〕では気配を消し切れていないこと。そして、このスキルが気配を消すスキルだという事。すなわち、匂いや音は消せていないことに気づいた。この二つを消すには〔隠密〕のようなもっと高位のスキルを取得しないといけない。
 僕は、今できることを考えた。二匹目の時に角兎は木の実に気を引かれて僕に気づくのが遅かった。
 僕は、角兎が食べていた木の実と同じような木の実を探す。
 僕はいくつか見つけた木の実を持って角兎を探す。
 僕の作戦はこうだ。木の実を角兎の近くに投げる。食いつくのを待つ。食いついたところをオン、キー、ルーで攻撃する。
 この時のコツは木の実を僕から見て角兎の向こう側に投げることだ。

 角兎を見つけた僕は、〔気配遮断〕を使い、四メートル当たりまで近づいてから、角兎が気づくように高めに投げる。山なりの放物線を描きながら角兎の頭上を越え草の上に落ちて音を立てる。
 角兎は素早い反応で音のなった方に顔を向け、木の実に気づく。僕は一層気配を消そうとする。
 角兎が移動するのに合わせて、僕も四メートルの距離を保ちながら移動する。
 角兎が木の実を近くに近づいて警戒しながら鼻で突く。匂いを嗅ぎ何やら調べている。僕はその間もじっと気配を消し続ける。
 
 待つこと一分以上、角兎が木の実を食べ始めた。
 僕は逸る心を抑えながら近づく。三メートル、三メートル半、二メートル半、二メートル。
 僕は、オンとキーとルーの準備をする。二メートルを切った。
 僕はオンを伸ばして攻撃する。オンが角兎の首筋に噛みつく。すかさず、キーとルーを伸ばす。角兎は振り解こうととするが振り解けない。
 キーとルーが腹と足に噛みつく。
 角兎は少し暴れたが、次第に動かなくなった。
 僕は初めて、作戦通り狩りを行うことができた。

 僕は、角兎を収納しようとして気づく。メニューの選択欄のステータスの文字が光っている。僕は角兎を収納してからステータスを開いた。




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