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はじまりまして。
【02-05】冒険者ギルド
しおりを挟む僕は地図を見ながら、なんとかピエロのいた噴水広場に戻ってくることができた。地図にはここが第二噴水広場と書かれている。そのまんまだ。
授業後にログインしてからすでに三時間は経っている。冒険者ギルドに登録してから一回ログアウトすることを決め、大通りの北側を目指して歩く。
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冒険者ギルドにはすぐにたどり着くことができた。民家のような賞金稼ぎギルドの建物とは違って大きかった。とてつもなく大きい建物だ。横幅もだが、縦にもでかい。僕が見上げている間にもどんどんと人が入っていく。頭の上に見える表示を見ると、プレイヤーだけでなくNPCの冒険者も割と多いようだ。
僕は、冒険者ギルドの中に入った。
-------
冒険者ギルドの中は盛況だった。中は広い吹き抜けの部屋で、一階には受付のカウンターがいくつか並び、そこに何人もの冒険者が列を作っていた。列は、十列あり、それぞれに美人の受付嬢が対応している。奥には、階段があり、そこから二階に行けるようだが、二階に行っている冒険者がいないようなので、二階に行くには条件があるのかもしれない。壁側には長椅子が置かれていて、並んでいる仲間を待っているだろう人たちもいた。
僕は、一番空いてそうな列に並んだ。
列に並んでいる人はほとんどの人は武器と防具を装備している。僕は周囲を観察しながら順番を待った。
僕の番になった。僕の対応をしたのは、キレイ系の美人な受付嬢だった。
「冒険者ギルドは初めてですか?」
「はい」
「冒険者登録ということでいいですか?」
「はい」
受付嬢は慣れたものなのか淀みなく言葉を繰り出してくる。
「分かりました。こちらの登録用紙に記入をお願いします」
登録用紙には、前衛か後衛かとか、得意な武器は何かだとか、いろいろと記入する欄があった。
僕は、ギルマスに言われた通りギルド証を提示した。
「これを見せるように言われたんですが」
「拝見します」
そう言って、ギルド証を見た受付嬢はさっき出してきた登録用紙とは別の紙を出してきた。
「こちらの方に記入をお願いします」
僕が、渡された登録用紙には名前を書く欄だけだった。僕は『tail』と記入して受付嬢に渡した。
「これでいいんですか?」
「はい。これで大丈夫です。では、冒険者ギルドのギルド証ができるまでの間にギルドのルールを説明します」
登録用紙と賞金稼ぎギルドのギルド証をカウンターの奥にいる人に渡すと、説明を始めた。
「このギルドでは、登録が完了された時点で、ギルドメンバーとして行動してもらうことになります。そのため、ギルドにふさわしくない行動をすると罰則があり、最悪の場合は除名し、その地の統治者に受け渡されることになります」
受付嬢にギルドのルールを教えてもらった。要約すればギルドメンバ-という自覚を持ってくださいね、といった感じだ。ギルドメンバー同士の争いには基本手は出さないが、目に余るほどだと、ギルドの預かりになるとか、犯罪行為であれば、ギルドから捕縛の依頼が出されることもあるそうだ。
「ここまでが、当ギルドのルールです。大丈夫でしょうか?」
「はい」
「テイル様には、違反者の捜索の依頼されることもあると思います。その際はご協力お願いします」
受付嬢は、軽く頭を下げた。僕が、賞金稼ぎだからということだろう。
「では、次は冒険者ギルドの仕組みです。冒険者は依頼を受ける際に必ず当ギルドを通して下さい。ギルドを通さない依頼で起きた問題には当ギルドは一切関与しません。依頼を受ける際は列に並び受付嬢に聞いてください。こちらで、その方々に合った依頼をお選びします」
冒険者ギルドの依頼は、受付嬢を通して受けることになっていて、その際にプレイヤーのレベルに合った依頼を渡されるらしい。掲示板によると、同じレベルでも、種族や職業によって、選べる依頼が異なるらしい。パーティを組んでいる場合は、パーティとして受けるか、個人で受けるかを選択できるそうだ。
「以上が当ギルドの仕組みです」
全部の説明が終わったようだ。中には、税金は報酬から天引きされているとかフレーバー的な説明もあった。
ギルド証が出来上がったようだ。さっき受付嬢が渡した人が受付嬢に二枚のカードを渡す。
「まずは、こちらのカードを」
「たしかに」
賞金稼ぎギルドのギルド証を先に返された。
「こちらが当ギルドのギルド証になります。基本はそちらのギルド証と変わりません。こちらからの連絡がある際にそのギルド証に表示されます。定期的にチェックしておいてください。以上で登録が完了となります。質問などありますか?」
「いえ、ありません」
「お疲れ様でした。これよりテイル様は冒険者ギルドメンバーになります。登録を終えた方には訓練場に行くことを勧めているのですが、テイル様には必要ないですね。このまま、依頼を受けていきますか?」
僕は、メニューを開いて考える。メニューについている時計は七時を回っている。僕は、依頼を受けないことにした。
「いえ、また後できます」
「かしこまりました。なにかあれば受付までご相談ください」
僕は、受付から離れていくき、ギルドを出た。
-------
ギルドを出た僕は、最初の噴水広場へ向かった。ギルマスにもらった地図には噴水広場と書かれていた。そのまんまだ。
噴水広場に着いた僕はログアウトすることにした。
宿屋のような、部屋で寝ると、次ログインしたときにそこから始められるようになっているのだが、僕はお金を温存しておくために、広場で、ログアウトした。別に広場に戻る必要はなかったがなんとなくだ。
メニューを開き、一番下のログアウトボタンを押した。
-------
覚醒した僕は、頭に着いたヘッドマウントデバイスを外し、生徒証の接続を解除した。
僕は、VRルームを出て、食堂に向かった。
食堂に入ると、拓郎と勇人がいた。僕は、二人を確認した後に、給仕カウンターで今日の料理を受け取った。今日は魚にした。鮭のムニエルみたいだ。僕は、拓郎たちの方に行き声をかける。
「ここいいかな?」
「お!瑠太か?いいぞ」
「瑠太くん、おつかれさま」
二人の了解を受けて開いている席に座り、食べ始める。
「今日、初プレイだったよな。どうだった?」
拓郎が聞いてきた。
「昨日言った通りヴィーゼの町を探索しただけだよ。あ、ピエロも見たよ」
「ピエロに会えたのか!イベントは発生したか!?」
拓郎が身を乗り出しながら聞いてくると、勇人も聞いてきた。
「ピエロってなに?」
「第二噴水広場に現れるピエロのことだよ。昨日拓郎に教えてもらって見に行ってみたんだ」
「そうなんだよ。前からなにかイベントがあるって言われてるらしいんだがいまだに何も起こってないんだよ。で、どうだったんだ?瑠太」
「うーん。イベントではないんだけどね」
僕は、今日会ったピエロのことを二人に話した。
「やっぱりなんかのイベント絡みみたいだな」
「そうだね。何がトリガーかは検討もつかないけど」
拓郎の考えに勇人も同意した。
「で、その後に賞金稼ぎギルドに入って冒険者ギルドに登録してログアウトしてきた」
「賞金稼ぎギルド?ヴィーゼの町にあったのか。」
拓郎は賞金稼ぎギルドを知っているみたいだ。
「拓郎は賞金稼ぎギルドのこと知ってたの?」
「いや、ちょっと前にギルドの受付で聞いたんだ。違反者の捜索の依頼を進められてな」
拓郎は空を飛べるから勧められたんだろう。
「そんなギルドもあるんだね」
勇人は知らなかったみたいだ。
「この後は、冒険者ギルドで依頼を受けて戦闘をしてみるつもり」
「キメラ種の戦闘は最初大変だから気を付けてね」
勇人が忠告してくれた。
「俺も空飛べるのに、最初は苦戦してたからな」
拓郎も同意見のようだ。
「じゃあ、俺たちは先に行くぞ」
「またね、瑠太くん」
「うん。拓郎たちもまだやるんでしょ?」
「当然」
そう言って、拓郎と勇人はトレー片してから、食堂を出ていった。
僕は、残っているムニエルとご飯を食べて、味噌汁を飲みほしてからトレーを片した。このままVRルームに言ってAWをしようとも思ったけど、先に部屋に戻って歯を磨くことにした。
僕は自室に行くべく、食堂を出た。
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自室に戻った僕は、歯を磨いて、共同スペースで椅子に座りながら掲示板を見ていた。見るのは、ヴィーゼの町の周辺情報。
スライムに角兎といくつかのモンスターの情報を頭に入れてから、自室を出てVRルームに向かった。
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