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はじまりまして。
【02-04】ステータス
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夕焼けに染まり始めた空の下、ヴィーゼの町の小さい噴水付近で僕は今戸惑っていた。
タキシードを来たピエロは、僕を見たまま、道具を片し始めた。
僕は逃げることも考えたが、やめておいた。
僕が何か悪いわけでもないし、僕の足で逃げようとしても彼の足さばきを見る限り、逃げきることはできないだろう。
片づけを終えたピエロが、僕の方に歩いてきて小声で言った。
「見たことを忘れろ」
ピエロのその有無を言わせない圧力に僕は首を縦に振ることしかできなかった。
僕の反応を見て満足したのかピエロはそのまま広場から去っていった。僕の耳にはピエロの足が石畳に当たった音がカツッという聞こえていた。よくわからないが、イベントの伏線かもしれない。
僕は興奮と残念な気持ちの入り混じったなんとも言えない気持ちになった。次に何をするのか考えようと、さっき座っていたベンチに座った。
僕は、空中に浮かぶディスプレイに表示される地図を見ながら考える。いろいろとイベントの情報が書いてあるけど、僕に必要なイベントはなかなかない。中には暗殺者ギルドに入るイベントとかも書いてあるが、現状の機動力が改善される見込みがないかぎり、入る意味はないだろう。僕はここにきて、ステータスの確認をしていなかったのを再度思い出した。ディスプレイの地図を閉じ、メニューからステータスを選択する。
=======
名前:tail
性別:男
職業:盗賊
レベル:一
STR:三(上限:三)
MAG:一(上限:一)
VIT:五(上限:五)
AGI:一(上限:一)
DEX:二(上限:二)
SP:三
スキル:再生(限定:核がなくなると再生しなくなる。核は一定時間で再生する)
猛毒(限定:ヒュドラの牙・隠密迷彩蛇の牙)
隠密(限定:隠密迷彩蛇のみ)
迷彩(限定:隠密迷彩蛇のみ)
=======
ある程度の予想はしていたが、見事に本体が弱くなっている。この〔再生〕スキルは本体にも有効なようだけど、他のスキルは違みたいだ。〔猛毒〕スキルも〔隠密〕スキルも〔迷彩〕スキルも汎用性の高いスキルなだけに残念だ。
今の僕にできる戦い方は遠距離から隠密迷彩蛇のオンちゃんを使ったサイレントキルぐらいだろう。オートガードがあるとはいえ、接近されれば僕本体の能力の低さから競り負ける可能性が高い。
このゲームでは、スキルが豊富にあるとはいえ、一から取得するのは簡単じゃない。一番簡単に取得する方法が職業関係のスキルだから、職業関係のイベントで自分のビルドに合った職業を見つけたかったが、簡単ではなかったようだ。
動かなくてもいい職業といえば術師が思い浮かぶが、MAGが一な時点で僕に適性はない。盗賊系統で動きの速さに関係しない職業は掲示板では見つからなかった。
結局僕は、今日する予定だった町の散策を続けることにした。僕がまだ行っていない場所は大通りの北側の冒険者ギルドの方と第二通りの東側だ。僕は訓練場を目指すことにした。現状新しい職業が見つからない限り、盗賊のスキルを身につけるしかない。
僕が腰を浮かし立とうとすると、さっき話してたおばあさんがやってきて、僕の隣に座った。
「まだいたのかい?」
僕を見ておばあさんが言う。
「はい。あまりいい職業が見つからなくて」
「今は何の職業なんだい?」
なんだかおばあさんが相談に乗ってくれるみたいだ。
「盗賊です」
「ほう。変わったのについたねぇ」
「変わってるんですか?」
「盗賊なんて言葉自体が良くないだろう」
盗賊は意味的に悪人だ、ということだろうか。NPC《ノンプレイヤーキャラクター》の盗賊は少ないのかもしれない。
「まあ、名乗りにくいかもしれませんね」
とりあえず同意しておく。
「なんで盗賊を選んだんだい?」
「僕、キメラ種ですから」
「適性がないってことかい?」
「はい」
僕は頷いた。
おばあさんは腕を組み、何か考えている。
「おまえさん、盗賊以外になる気はあるのかい?」
「はい。最初はそのつもりだったんで」
「じゃあ、なんでならないんだい?」
「僕に合う職業が見つけられなくて」
おばあさんは熱心に話を聞いてくれている。僕が知らない職業もこのおばあさんが知っている可能性はある。僕はおばあさんの言葉を聞き逃さないように構えた。
「おまえさん、『賞金稼ぎ』になる気はないかい?」
だから、身構えていた僕はつい聞き返してしまった。
「え?」
「だから、賞金稼ぎだよ!賞金の掛かった犯罪者やモンスターを捕まえたり倒したりする職業だよ!」
いや、僕も賞金稼ぎ自体がわからないわけではないのだが、
「それって冒険者と同じじゃないんですか?」
そう。言ってることは冒険者と変わらないように聞こえるのだ。
「ちがうね。詳しくは言えないけど違うんだよ」
違うらしい。僕は考える。このまま、盗賊になるよりはいいのかもしれない。とりあえず確認する。
「隠密系のスキルを覚えられますか?」
「当然。賞金首を尾行したり、待ち伏せしたりするからね」
それなら、別にいいかもしれない。待ち伏せ専門でやれば、ある程度の依頼はできるだろうし。問題がないわけではないが、このまま時間を無駄にするよりはいいかもしれない。それに掲示板になかったイベントも見てみたい。
「僕は、賞金稼ぎになろうと思います。おばあさん、賞金稼ぎになる方法を教えてください」
「よく言った!早速登録しに行こう!」
おばあさんはそう言って、僕の腕をつかんで立ち上がる。僕もつられて立ち上がる。立ち上がった僕を見てから、おばあさんは軽い足取りで僕を引っ張って歩く。僕は予想以上に強い力でおばあさんに引かれながら歩いた。
おばあさんに引かれて歩くこと数分。僕は今、よくわからない場所にいる。おばあさんと話していた噴水広場から、さらに住宅街の方に入っていき迷路みたいな道を歩いている。印象としては、テレビで見たことがあるヨーロッパの裏路地だろうか。建物が狭い感覚で建っているため道は薄暗く、石畳からは冷たい感じが伝わってくる。
それからさらに数分歩くと、おばあさんは一つの建物に入る。僕も一緒に入る。
建物の外観は、ほかの住宅と同じ感じだったが、中はとてもきれいに整頓されてる酒場のような場所だった。丸テーブルと丸椅子が置かれている。人影はなく、明かりはついているが、暗い雰囲気が漂っていた。
おばあさんは僕の腕を離し、奥にあるカウンターに入ると一枚の紙を取り出して、僕を手招きした。
僕は、おばあさんのいるカウンターに行く。
「これが登録用紙だよ」
そう言って渡された紙には名前を書く場所があるだけだ。僕は名前を書いて渡した。
「テイルだね!これでおまえさんは今日から、賞金稼ぎだよ!よろしくね」
そう言って手を出すお婆さん。僕もそれを握り返す。
「私はマリア = ブラス。この賞金稼ぎギルドのギルドマスターさ!」
おばあさんがギルドマスターだったようだ。賞金稼ぎギルドの関係者だとは思っていたがギルマスとは。
「テイルです。よろしくお願いします」
僕は改めて挨拶してから、聞きたいことを聞く。
「今ので登録出来たんですよね?僕はこれから何をすればいいのでしょう?」
「そうだね。とりあえずはこのままスキルの取得をしてもらうよ。おまえさんはまだ弱い。賞金稼ぎの仕事は当分回せないから、スキルを覚えたらしばらくは鍛えてくるといい」
そう言って僕に一枚の板を渡す。
「これがギルド証だよ。なくさないように。こっちから用があるときはそのカードに表示されるからこまめにチェックしとくんだよ!あとは訓練場に裏に庭があるからそこでスキルを教えるよ。ついてきな」
ギルマスはカウンターを出て、奥にある扉の奥に入っていく。
「なにしてるんだい!早く来な!」
穏やかそうな声なのに、力がこもった声で言ってくる。僕は、おばあさんが通った扉を通った。
扉の向こうは庭だった。周りには高い石壁が建っていて、外から中が見えないようになっていた。地面は所々草が生えているが大体の部分は土がむき出しになっていた。
「じゃあ、これからスキルを教えるよ。教えるスキルは〔気配察知〕と〔気配遮断〕の二つ。このスキルは他のスキルの基礎になるからしっかり覚えるんだよ」
僕はギルマスにスキルを教わった。方法としてはギルマスが気配を強めたり弱めたりするのを感じる練習をするだけ。最初は全く分からなかったけど、二時間を過ぎる頃には気配の変化は分かるようになっていた。ギルマス曰く、今はなんとなくわかるだけでも、使っていくうちに直感的に分かるようになるらしい。
「そろそろかね。ステータスを見てごらん」
ギルマスに言われ、ステータスを確認する。
=======
名前:tail
性別:男
職業:賞金稼ぎ
レベル:一
STR:三(上限:三)
MAG:一(上限:一)
VIT:五(上限:五)
AGI:一(上限:一)
DEX:二(上限:二)
SP:三
スキル:再生(限定:核がなくなると再生しなくなる。核は一定時間で再生する)
猛毒(限定:ヒュドラの牙・隠密迷彩蛇の牙)
隠密(限定:隠密迷彩蛇のみ)
迷彩(限定:隠密迷彩蛇のみ)
気配察知
気配遮断
=======
職業の欄が賞金稼ぎになって、スキルが二つ増えていた。
「二つとも取得できてました」
「そうかい。そりゃよかった。教えたスキルは町中でも練習すると上達も早くなるからね。常に使うように。じゃあ、今日はこれで終わりだね」
スキルの取得が終わった僕たちは室内に入る。
「最後に、当分はこっちが呼び出すまでは来なくていい。連絡はさっき渡したギルドカードにするからね。後は、冒険者ギルドに登録しておくように」
僕はギルマスに聞き返した。
「冒険者登録ですか?」
「そう。普通とは少し違うけどね。賞金稼ぎとして冒険者ギルドに登録することになる。これをしておけば冒険者の仕事を受けることができる。腕を鍛えるにはちょうどいいだろう。窓口でうちのギルドカードを渡せば勝手に登録してくれるから」
そういうことらしい。元々は他のギルドに入るために入らないことにしていただけだから、冒険者登録ができるのは嬉しいことだ。
「分かりました。後で登録しておきます」
「あとはこれだね」
ギルマスに一枚の地図を渡された。
「この町の地図で、うちのギルドメンバーがよく使う店が書かれている。割引してくれることもあるから利用するといい。ここまでの道も書いてあるからなくすんじゃないよ!」
渡された地図には、宿屋や、食事処、武器屋に防具屋、ほかには道具屋などいろいろと書かれていた。一応この建物がこの町の賞金稼ぎギルドのギルド支部らしい。
「ありがとうございます」
「頑張りなさい」
最後に穏やかな声でそう言ってくる。僕は返事をしてからギルドを出た。
タキシードを来たピエロは、僕を見たまま、道具を片し始めた。
僕は逃げることも考えたが、やめておいた。
僕が何か悪いわけでもないし、僕の足で逃げようとしても彼の足さばきを見る限り、逃げきることはできないだろう。
片づけを終えたピエロが、僕の方に歩いてきて小声で言った。
「見たことを忘れろ」
ピエロのその有無を言わせない圧力に僕は首を縦に振ることしかできなかった。
僕の反応を見て満足したのかピエロはそのまま広場から去っていった。僕の耳にはピエロの足が石畳に当たった音がカツッという聞こえていた。よくわからないが、イベントの伏線かもしれない。
僕は興奮と残念な気持ちの入り混じったなんとも言えない気持ちになった。次に何をするのか考えようと、さっき座っていたベンチに座った。
僕は、空中に浮かぶディスプレイに表示される地図を見ながら考える。いろいろとイベントの情報が書いてあるけど、僕に必要なイベントはなかなかない。中には暗殺者ギルドに入るイベントとかも書いてあるが、現状の機動力が改善される見込みがないかぎり、入る意味はないだろう。僕はここにきて、ステータスの確認をしていなかったのを再度思い出した。ディスプレイの地図を閉じ、メニューからステータスを選択する。
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名前:tail
性別:男
職業:盗賊
レベル:一
STR:三(上限:三)
MAG:一(上限:一)
VIT:五(上限:五)
AGI:一(上限:一)
DEX:二(上限:二)
SP:三
スキル:再生(限定:核がなくなると再生しなくなる。核は一定時間で再生する)
猛毒(限定:ヒュドラの牙・隠密迷彩蛇の牙)
隠密(限定:隠密迷彩蛇のみ)
迷彩(限定:隠密迷彩蛇のみ)
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ある程度の予想はしていたが、見事に本体が弱くなっている。この〔再生〕スキルは本体にも有効なようだけど、他のスキルは違みたいだ。〔猛毒〕スキルも〔隠密〕スキルも〔迷彩〕スキルも汎用性の高いスキルなだけに残念だ。
今の僕にできる戦い方は遠距離から隠密迷彩蛇のオンちゃんを使ったサイレントキルぐらいだろう。オートガードがあるとはいえ、接近されれば僕本体の能力の低さから競り負ける可能性が高い。
このゲームでは、スキルが豊富にあるとはいえ、一から取得するのは簡単じゃない。一番簡単に取得する方法が職業関係のスキルだから、職業関係のイベントで自分のビルドに合った職業を見つけたかったが、簡単ではなかったようだ。
動かなくてもいい職業といえば術師が思い浮かぶが、MAGが一な時点で僕に適性はない。盗賊系統で動きの速さに関係しない職業は掲示板では見つからなかった。
結局僕は、今日する予定だった町の散策を続けることにした。僕がまだ行っていない場所は大通りの北側の冒険者ギルドの方と第二通りの東側だ。僕は訓練場を目指すことにした。現状新しい職業が見つからない限り、盗賊のスキルを身につけるしかない。
僕が腰を浮かし立とうとすると、さっき話してたおばあさんがやってきて、僕の隣に座った。
「まだいたのかい?」
僕を見ておばあさんが言う。
「はい。あまりいい職業が見つからなくて」
「今は何の職業なんだい?」
なんだかおばあさんが相談に乗ってくれるみたいだ。
「盗賊です」
「ほう。変わったのについたねぇ」
「変わってるんですか?」
「盗賊なんて言葉自体が良くないだろう」
盗賊は意味的に悪人だ、ということだろうか。NPC《ノンプレイヤーキャラクター》の盗賊は少ないのかもしれない。
「まあ、名乗りにくいかもしれませんね」
とりあえず同意しておく。
「なんで盗賊を選んだんだい?」
「僕、キメラ種ですから」
「適性がないってことかい?」
「はい」
僕は頷いた。
おばあさんは腕を組み、何か考えている。
「おまえさん、盗賊以外になる気はあるのかい?」
「はい。最初はそのつもりだったんで」
「じゃあ、なんでならないんだい?」
「僕に合う職業が見つけられなくて」
おばあさんは熱心に話を聞いてくれている。僕が知らない職業もこのおばあさんが知っている可能性はある。僕はおばあさんの言葉を聞き逃さないように構えた。
「おまえさん、『賞金稼ぎ』になる気はないかい?」
だから、身構えていた僕はつい聞き返してしまった。
「え?」
「だから、賞金稼ぎだよ!賞金の掛かった犯罪者やモンスターを捕まえたり倒したりする職業だよ!」
いや、僕も賞金稼ぎ自体がわからないわけではないのだが、
「それって冒険者と同じじゃないんですか?」
そう。言ってることは冒険者と変わらないように聞こえるのだ。
「ちがうね。詳しくは言えないけど違うんだよ」
違うらしい。僕は考える。このまま、盗賊になるよりはいいのかもしれない。とりあえず確認する。
「隠密系のスキルを覚えられますか?」
「当然。賞金首を尾行したり、待ち伏せしたりするからね」
それなら、別にいいかもしれない。待ち伏せ専門でやれば、ある程度の依頼はできるだろうし。問題がないわけではないが、このまま時間を無駄にするよりはいいかもしれない。それに掲示板になかったイベントも見てみたい。
「僕は、賞金稼ぎになろうと思います。おばあさん、賞金稼ぎになる方法を教えてください」
「よく言った!早速登録しに行こう!」
おばあさんはそう言って、僕の腕をつかんで立ち上がる。僕もつられて立ち上がる。立ち上がった僕を見てから、おばあさんは軽い足取りで僕を引っ張って歩く。僕は予想以上に強い力でおばあさんに引かれながら歩いた。
おばあさんに引かれて歩くこと数分。僕は今、よくわからない場所にいる。おばあさんと話していた噴水広場から、さらに住宅街の方に入っていき迷路みたいな道を歩いている。印象としては、テレビで見たことがあるヨーロッパの裏路地だろうか。建物が狭い感覚で建っているため道は薄暗く、石畳からは冷たい感じが伝わってくる。
それからさらに数分歩くと、おばあさんは一つの建物に入る。僕も一緒に入る。
建物の外観は、ほかの住宅と同じ感じだったが、中はとてもきれいに整頓されてる酒場のような場所だった。丸テーブルと丸椅子が置かれている。人影はなく、明かりはついているが、暗い雰囲気が漂っていた。
おばあさんは僕の腕を離し、奥にあるカウンターに入ると一枚の紙を取り出して、僕を手招きした。
僕は、おばあさんのいるカウンターに行く。
「これが登録用紙だよ」
そう言って渡された紙には名前を書く場所があるだけだ。僕は名前を書いて渡した。
「テイルだね!これでおまえさんは今日から、賞金稼ぎだよ!よろしくね」
そう言って手を出すお婆さん。僕もそれを握り返す。
「私はマリア = ブラス。この賞金稼ぎギルドのギルドマスターさ!」
おばあさんがギルドマスターだったようだ。賞金稼ぎギルドの関係者だとは思っていたがギルマスとは。
「テイルです。よろしくお願いします」
僕は改めて挨拶してから、聞きたいことを聞く。
「今ので登録出来たんですよね?僕はこれから何をすればいいのでしょう?」
「そうだね。とりあえずはこのままスキルの取得をしてもらうよ。おまえさんはまだ弱い。賞金稼ぎの仕事は当分回せないから、スキルを覚えたらしばらくは鍛えてくるといい」
そう言って僕に一枚の板を渡す。
「これがギルド証だよ。なくさないように。こっちから用があるときはそのカードに表示されるからこまめにチェックしとくんだよ!あとは訓練場に裏に庭があるからそこでスキルを教えるよ。ついてきな」
ギルマスはカウンターを出て、奥にある扉の奥に入っていく。
「なにしてるんだい!早く来な!」
穏やかそうな声なのに、力がこもった声で言ってくる。僕は、おばあさんが通った扉を通った。
扉の向こうは庭だった。周りには高い石壁が建っていて、外から中が見えないようになっていた。地面は所々草が生えているが大体の部分は土がむき出しになっていた。
「じゃあ、これからスキルを教えるよ。教えるスキルは〔気配察知〕と〔気配遮断〕の二つ。このスキルは他のスキルの基礎になるからしっかり覚えるんだよ」
僕はギルマスにスキルを教わった。方法としてはギルマスが気配を強めたり弱めたりするのを感じる練習をするだけ。最初は全く分からなかったけど、二時間を過ぎる頃には気配の変化は分かるようになっていた。ギルマス曰く、今はなんとなくわかるだけでも、使っていくうちに直感的に分かるようになるらしい。
「そろそろかね。ステータスを見てごらん」
ギルマスに言われ、ステータスを確認する。
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名前:tail
性別:男
職業:賞金稼ぎ
レベル:一
STR:三(上限:三)
MAG:一(上限:一)
VIT:五(上限:五)
AGI:一(上限:一)
DEX:二(上限:二)
SP:三
スキル:再生(限定:核がなくなると再生しなくなる。核は一定時間で再生する)
猛毒(限定:ヒュドラの牙・隠密迷彩蛇の牙)
隠密(限定:隠密迷彩蛇のみ)
迷彩(限定:隠密迷彩蛇のみ)
気配察知
気配遮断
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職業の欄が賞金稼ぎになって、スキルが二つ増えていた。
「二つとも取得できてました」
「そうかい。そりゃよかった。教えたスキルは町中でも練習すると上達も早くなるからね。常に使うように。じゃあ、今日はこれで終わりだね」
スキルの取得が終わった僕たちは室内に入る。
「最後に、当分はこっちが呼び出すまでは来なくていい。連絡はさっき渡したギルドカードにするからね。後は、冒険者ギルドに登録しておくように」
僕はギルマスに聞き返した。
「冒険者登録ですか?」
「そう。普通とは少し違うけどね。賞金稼ぎとして冒険者ギルドに登録することになる。これをしておけば冒険者の仕事を受けることができる。腕を鍛えるにはちょうどいいだろう。窓口でうちのギルドカードを渡せば勝手に登録してくれるから」
そういうことらしい。元々は他のギルドに入るために入らないことにしていただけだから、冒険者登録ができるのは嬉しいことだ。
「分かりました。後で登録しておきます」
「あとはこれだね」
ギルマスに一枚の地図を渡された。
「この町の地図で、うちのギルドメンバーがよく使う店が書かれている。割引してくれることもあるから利用するといい。ここまでの道も書いてあるからなくすんじゃないよ!」
渡された地図には、宿屋や、食事処、武器屋に防具屋、ほかには道具屋などいろいろと書かれていた。一応この建物がこの町の賞金稼ぎギルドのギルド支部らしい。
「ありがとうございます」
「頑張りなさい」
最後に穏やかな声でそう言ってくる。僕は返事をしてからギルドを出た。
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