【仮題】VRMMOが世界的競技になった世界 -僕のVR競技専門高校生生活-

星井扇子

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はじまりまして。

【02-08】 口論

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 プレイ初日から二日間。僕は朝起きて、授業を受けて、AWで角兎を狩る、という生活を行っていた。二日で二十匹狩ったが、装備は始めの服のままだし、依頼のためアイテムが増えることがないため、未だに手ぶらだけども、狩りは少しだけうまくなった。
 
 初日から三日目の今日。僕はスライムを狩るつもりだ。昨日の夜、掲示板を見ながら作戦を立てた。角兎はなかなか安定して狩ることができるようになってきている。この調子でいけると判断してから一夜、僕はアラームの音で目を覚まして、気合を入れた。
 気合を入れたつもりではあるが、まだ眠い僕は、顔を洗うために洗面所に行く。拓郎はまだ起きていないようだ。
 顔を洗った僕は拓郎が置いてくるのを待っている間、掲示板を見ながら、対スライム用の作戦を再度練る。
 ヴィーゼの町の北側にある草原、正式名称はなく、ヴィーゼ草原と言われているようだ。そこに住むスライムは平原スライムと言われていて、危険性が低く、単体の力はとても弱い。物理耐性が低く、スライム系が持つ酸を持っていない。そのため、体当たりに気を付けて殴っていれば勝てるらしい。
 僕がスライムの基本情報を確認していると、拓郎が起きてきた。

 「おはよう」
 「おはよう」

 僕が挨拶すると返してくる。拓郎はそのまま顔を洗いに行った。二人が顔を洗ったら食堂に行くのがもはやお決まりになっている。僕は掲示板を閉じ、いつでも行けるようにする。

 「食堂行くか」

 案の定である。
 僕は頷き、二人で食堂に行く。

 食堂に着いた僕たちは二人で朝ごはんを食べた。今日はご飯に納豆で、他はいつもの漬物に味噌汁だった。
 朝食を食べた後はいつものように、歯を磨き、校舎へ向かう。

 校舎に向かう途中、いつものように話しているとイベントの話になった。今日からイベントの受付が始まるらしい。

 「瑠太はイベント参加するのか?」
 「僕は不参加だよ。拓郎は?」

 僕のレベルはまだ四だ。DEXとVITが一上がっただけだ。僕の強さで狩猟イベントは無理だろう。

 「俺は参加するつもりだ。トップは無理だろうから、参加するだけだけどな」
 
 拓郎は鳥と同じような戦い方をするらしいから、有利なのかもしれない。

 「今回のイベントの内容は詳しく発表されたの?」

 三日前に見たとき狩猟イベントだということしかわからなかった。

 「今回は三日間行われて、イベント用特別VR空間で只管狩り続けることになるらしい。モンスターのドロップ品がチケットになっていて、そのチケットを使うことでイベント中は物資の補給ができるらしい」
 「なんか面白そうではあるね」
 「ああ、あとチームと個人では別で集計されるらしい」

 ただこのイベントは運営のイベントではない。そのため、景品がそれほど良くない。

 「僕も角兎狩りながら応援しとくよ」
 「ああ、そうしてくれ」

 僕は冗談めかして言った。
 その後も、くだらない話をしながら、校舎に向かった。



-------



 校舎に着いた僕たちは、すでに慣れてきた視線を受けながら教室に向かった。
 教室では、智也と勇人と坪田君が話していた。

 「おはよう」

 僕たちは朝の挨拶を交わす。

 「イベントの情報見た?」

 坪田君が僕たち言う。

 「見たぞ。俺は参加するつもりだが三人は?」

 拓郎が返す。

 「私と坪田は参加することにした」
 「おれは参加しないけど、深野君は参加するみたいだよ」

 智也と勇人が答えた。深野君は勇人のルームメイトだ。

 「瑠太は参加しないのか?」

 智也が聞いてきた。

 「僕、まだレベル四だから」
 「それじゃあ、やめた方がいいだろうな」

 僕は参加しない方がいいという結論が智也の中で出たみたいだ。今回のイベントは最低でもレベル十以上のモンスターが出てくるらしい。僕よりも一週間は早く始めてるみんなはレベル十を超えてるのだろう。

 その後も途中で戻ってきた深野君を入れてイベントの話で盛り上がった。



-------



 授業が終わり、ホームルーム。
 角田先生が言う。
 「皆、知っているだろうが、数日後のゴールデンウィークにAW内でイベントが行われる。効率組は全員参加になっているが、うちは各自の判断に任せることにした。参加したいものは参加するといい。AW内の繋がり出来るいい機会だからな。じゃあ、解散」

 角田先生の言葉を受けてみんな廊下に出ていく。僕たちも寮に戻るために廊下に出た。

 廊下に出るとなぜかみんなが立ち止まっていた。なにやら先の方で口論が起こっているようだ。僕たちのクラスは一階の端だから、外に出るには口論している人たちの横を通らないといけない。

 「どうしようか」

 僕は拓郎に聞く。僕一人だったら教室に戻っていなくなるのを待つのだが。

 「どうするかな。何、話しているかわからないし教室入るか」

 拓郎も僕と同じ選択をしたようだ。
 僕と拓郎は教室に入ってすぐの席に座って話し始める。話題はもちろんAWのことだ。五分ぐらい話しているが一向に人が動いていない。何人かは教室に戻ってきていた。栗栖さんが友達と一緒に丁度入ってきた。僕は話しかける。

 「栗栖さん。なにが起こっているか詳しく知ってる?」
 「堤君に米田君。なんか効率組の人たちと望月君が言い合ってるみたいで」

 僕と拓郎は目を合わせる。

 「なんか効率組が一方的に突っかかってる感じだったよねー」

 栗栖さんの隣にいた栗栖さんが友達の竹澤さんが補足した。三日前に智也が言ってた面倒なことだろうか。
 拓郎が立ち上がり廊下に出ていった。

 僕は、二人に話を聞く。

 「どんな話をしてたか聞いた?」
 「はい。なんだか「この出来そこない共が!」とか言ってましたけどほとんど言いがかりに近い物でした」
 「なんか一方的にキレてたんだよね」
 「うーん。よくわからないね。とりあえずありがと。栗栖さん、竹澤さん」

 僕は二人に礼を言ったあと教室を出た。



-------



 廊下では、智也と坪田君、それと拓郎が十人近くいる効率組の生徒と言い合っていた。

 「おまえたち出来そこない共がいるからうちの学校は下に見られるんだよ!」
 
 効率組の集団の前に立っている筋肉質でガッシリとした体の男の子がそう言った。彼の後ろにいる人たちも体格のいい人が多い。
 
 「関係ないだろう!」

 智也が最近は落ち着いてきた派手な動きで右腕を横に払いながら言い返す。

 「おまえたちはこの高校にふさわしくない!」

 効率組のリーダーらしき人がさらに言い募ろうとしたとき、彼らに割り込む人がいた。

 「そこまでにしろ!」

 効率組の後ろの方から角田先生ともう一人角田先生と同じような体つきの男の人が歩いてきていた。たぶんこの人が効率組の先生の一人なのだろう。

 「谷岡先生!しかし!」
 「だまれ!長井」

 威圧感のある大きな声だ。リーダーの男は長井というらしい。

 「角田先生、申し訳ない。こいつらには俺から言っておく。それでいいだろうか」
 「ええ、大丈夫ですよ」

 谷岡先生と角田先生が二人で話した後、解散させられた。長井たちは谷岡先生に連れていかれながらも、こちらを睨んでいた。
 僕は教室から出たところからその光景を見ていた。

 「望月たちもついて来い」

 そう言って、角田先生は教室の方に来た。

 「堤か。おまえも入れ」

 教室の入り口まで来た角田先生に言われ、僕は教室に入る。

 「全員聞け」

 角田先生が教室にいる生徒に向かって言う。今教室にはクラスメイトの全員がいる。

 「さっき、効率組とのトラブルがあった。今回は望月が矢面に立ったみたいだが、今後はいろいろな場所で誰彼構わず突っかかってくるかもしれない。去年もあったことだから、三年たちとも話して解決策を講じる予定だ。くれぐれも逆切れして手を上げたりしないようにしろ。いいな」

 角田先生はそれだけ言って外に出て行ってしまった。

 僕は、智也たちの近くにいき、聞く。

 「大丈夫だった?」
 「ああ、大丈夫だ。寮長達にも聞いていたからな」
 「そうなのか?」

 拓郎が智也に聞いた。

 「ああ、先生が言っていたように去年も同じようなことがあったらしい」

 智也はいろいろと知っているようだ。僕は詳しい話が聞きたかったが。

 「寮に戻らないか?先生や寮長たちが動くんなら俺たちは待ってればいいってことだろ?望月」

 坪田君が言った。確かにその通りではある。

 「そうだな」

 拓郎も同意した。
 聞き耳を立てていたクラスメイト達も立ち上がり寮に戻り始めた。

 寮に戻る道で、みんなで話しながら歩いていたがいまいち盛り上がりに欠けていた。心なしか、面白い掲示板のスレッドがあっただとか、テレビでやってた面白い番組の話だとか、AWと関係ない話題が多かった。



-------



 寮に戻った僕は、三人がそのままAWをプレイするというから一人だけ自室に戻り、シャワーを浴びてから、VRルームに向かった。
 今日は、スライム討伐をするんだ。無理やり自身を奮い立たせた。




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