【仮題】VRMMOが世界的競技になった世界 -僕のVR競技専門高校生生活-

星井扇子

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はじめてのイベント。

【03-07】遭遇

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 拓郎たちが寝てから、既に三時間が経っている。周囲は完全に真っ暗だ。こんな中でも智也は周囲が見えているらしい。
 
 
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 tail「智也は目が見えてるんだよね?」
 
 LORD「ん?見えてるぞ。体の中身をいろいろと変えているからな」
 
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 見た目はヒューマンだから眼を変えたのだろうか。
 
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 LORD「瑠太の尻尾は蛇なんだろう?熱感知とかはできないのか?」
 
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 智也に言われて初めて気づいた。蛇のピット機関を使うことができれば夜でも敵を見つけられるかもしれない。
 僕はオンを操作して熱感知をさせようとする。操作するのはピット機関の感覚。ピット機関が受けた情報を僕本体に流そうとする。熱を感知するということが分からなかったため苦戦したが、三時間を過ぎたころには何とかできるようになった。ただ、温度が高いものがわかるだけだし、集中し続けないといけないため、他のことは一切できなくなる。
 僕の訓練がひと段落してしばらくすると、智也が僕に声をかけた。
 
 「そろそろ時間だ。起こそう」
 
 僕たちは拓郎たちを起こした。
 
 「時間だ」
 
 声は小さく早口だ。
 
 始めは寝ぼけていた拓郎たちも自分がいる場所に気づくと目を覚ます。
 
 「交代か。変わったことはあったか?」
 
 拓郎は目を掻きながら智也に聞く。
 
 「いや」
 「分かった。あとは任せてくれ」
 
 拓郎が言うのに合わせて勇人も頷いた。
 
 僕と智也は、ようやく眠ることができそうだ。
 智也が寝袋に入った。僕は、外套に包まるだけだ。森の上にテントは張れないし、張る意味もない。
 蛇は変温動物だが僕の体に這わせる温度の低下を抑えることができる。
 
 僕はできるだけ空気に触れるところがなくなるように外套に包まってから目を瞑る。イベント初日は肉体よりも精神が疲れた気がする。一人での森の探索、狐の奇襲、パーティでの狩り、初めて尽くめだ。
 少しでも疲れを癒せるように祈りつつ、眠りに就いた。
 
 
 
-------
 
 
 
 「起きろ、瑠太」
 
 僕は、拓郎の声を聴いて起床する。
 
 「何かあった?」
 
 イベント中であったことを思い出した僕はそう聞いた。
 
 「いや、特に問題はなかった。もう朝だ」
 
 僕は空を見上げる。空にはまだ薄暗さが残っているが朝と否めないだろう。
 
 「ありがとう。拓郎」
 
 僕は拓郎に礼を言う。
 僕は、自身の体を確認した。手足は間違いなく動く。尻尾も同様だ。昨日の夜と同じぐらいには動く。
 
 「朝食を済ませよう」
 
 智也の声が聞こえた。
 僕を含め全員が自身のバッグから食料を出す。僕は干し肉だ。カロリースティックは温存することにしている。
 全員が手早く食事を済ませると、智也が今日の予定を話し始めた。
 
 「今日はこの拠点を放棄し、少し移動しようと思う。昨日の様子から木の上を活動領域にしているモンスターがこの辺にはいないようだから、今夜はまた木の上で過ごすことにする」
 
 智也の判断に頷く。正直、拠点はどこでもいい。
 
 「どっちの方に行くんだ?」
 
 拓郎が聞く。
 
 「拓郎、一度飛んでもらえるか?そのときに何か変わったところを探してほしい。少しでもいい変化が欲しい」
 
 変化か。確かに森はこのパーティの戦闘場所としていい場所とは言えない。拓郎の行動が制限されるし、智也も火の魔法が使えない。
 火属性は生物に対して強力な攻撃になることが多い。
 AWの魔法で一番多く使われるのは移動制御だ。火を飛ばすにしても、火を動かす力が必要になる。それが火以外でも変わらない。だが、移動の制御は複雑な動作をさせようとすればするほど難易度が上がる。
 森の中で火事にならないように敵だけにピンポイントで魔法を当てることは難易度としてはかなり高いだろう。始めてから一か月のプレイヤーには到底できるものではない。
 
 拓郎が飛び上がる。
 空から情報を得るにしても、昨日と大差ないだろう。僕としてはこのまま適当に狩りを行うだけでいいんだけど。
 数分立った後、拓郎が戻ってきた。
 
 「昨日と変わった様子はないな」
 
 拓郎の報告を三人で聞く。期待はしていなかったが無意識のうちに肩を落とす。
 
 「そうか。よし。予定通りに行くぞ」
 
 智也は少し考えた後、宣言した。
 僕たちは木から降りる。
 
 「こっちに行くか」
 
 智也が進行方向を決めた。反対する理由もない僕たちは移動を開始する。
 
 
 
-------
 
 
 
 僕たちは昨日と同じように狩りをしながら移動する。
 昨日みんなで話した通り、未だに知っているモンスターに合わない。僕たちは慎重に敵を倒していく。
 僕は『気配はわかるけど、大きな気配ではないモンスター』の方に案内していく。このイベント中に〔気配察知〕のスキルが上達している。その結果の一つが気配の強弱が分かるようになったことだろう。気配の強弱が意味するところがわからないため断言はできないが、気配が弱いモンスターは小型のモンスターが多いようだ。
 
 僕たちは、何度かの戦闘を終え、ドロップアイテムの回収もスムーズに行いながら移動している。
 ドロップアイテムもカロリースティックがほとんどで今出てきているのはテントと寝袋以外にはランタンらしきものと杖が出てきている。僕は杖をもらった。この杖は魔法に使うような杖ではなくトレッキングストックに近いものだ。ランタンは勇人が持っている。
 
 空腹度と渇水度が尽きないように、ところどころ歩きながら回復しながら進む。相変わらず景色に変化はない。気配の方にもあまり変化がない。たまに大きな気配を感じるが近寄らないように移動するだけだ。僕は変わらず適当な気配に近寄っていく。
 
 そんな行動に変化が生じたのは昼を過ぎ全員が補給を終えたあと少ししてからだ。時間で言えば二時前ぐらいだろう。僕は今度も手ごろな大きさの気配に近づいていた。
 
 気配との距離が少なくなっていき、みんなを待たせて僕は偵察に向かう。
 僕は〔気配遮断〕と〔忍び足〕の発動をより意識する。この二つのスキルもこのイベント中にうまくなっているだろう。
 気配と足音はスキルで消せても、他は無理だ。僕はできるだけ音を出さないように移動する。自身に草が当たって音が出ないように意識する。僕の尻尾たちはAIが入っているため、勝手に動き回るが、僕の意識していることを無視するわけではない。尻尾たちも音を出さないように動いている。
 僕が気配に近づき、視認できる距離になったとき、うねり声が聞こえた。
 
 「うう、う」
 
 僕が昨日今日で聞いた獣系のモンスターの威嚇の鳴き声とは違うように聞こえる。僕は敵に悟られないように視認を試みる。
 
 そこにいたのは傷だらけの人だった。僕は倒れてうねり声をあげている人をよく見る。
 体を背から木に預け意識を失っている。刀身の折れた両手剣らしきものの柄が落ちている。僕は折れた刀身の先を探した。しかし、僕に見つけられるのは折れた刀身の先ではなく周囲に存在する無数の戦闘痕であった。
 僕はみんなと相談するためにみんなの元へ戻ることにする。
 
 僕が戻ってきたことに気づいた三人がチャットを送ってきた。
 
=======
 
 LORD「どうだった? 瑠太」
 
 tail「プレイヤーがいた」
 
 守君「本当!?」
 
 ducrow「気づかれなくてよかったな」
 
 LORD「集団か? 個人か?」
 
 ducrow「あいよ」
 
 tail「一人だったよ。意識がないみたいだった。周りには戦闘痕もあったし、戦闘の後だと思う。」
 
 LORD「戦闘の後? 倒してから気を失ったってことか」
 
 tail「どうする?」
 
 LORD「みんなの意見が聞きたい」
 
 守君「罠の可能性は?」
 
 ducrow「それもありそうだな。まあ、見てみないとわからないから見にいこうぜ!」
 
 LORD「瑠太は?」
 
 tail「僕はあそこで何があったのか知りたいな」
 
 LORD「ふむ。行ってみるか。案内頼む」
 
=======
 
 チャット会議が終わり、僕は三人を案内する。
 僕たちは慎重に進み、僕が見つけたプレイヤーの近くまで来た。そこから僕だけが先行し、男がまだ覚醒していないことを再度確認してから智也に合図を送る。
 
 「何が起きてもいいように準備していてくれ」
 
 智也の合図で、三人は近づいてくる。
 
 「すごい荒れようだな。何と戦ったんだ」
 
 拓郎は戦闘痕に興味津々だ。
 
 「とりあえずこのプレイヤーを拘束しておいた方がいいんじゃない?」
 
 勇人が自身のバッグからロープを取り出しながら言った。
 
 「ナイスだ、勇人。意味があるか分からないが手足を縛っておこう」
 
 拓郎を除く三人で男をガチガチに縛り付ける。
 
 「これでいいだろう」
 
 智也が縛り具合を確認した。
 
 「後は起きるのを待つだけだね」
 
 僕は男が起きるのを待つことにする。
 
 「誰か気付けとかできないのか?」
 
 拓郎が聞いてくるが誰も首を縦に振らない。
 
 「待つしかないようだね」
 
 勇人が結論付ける。
 僕たちは武器の手入れや満腹度の回復をしながら男が起きるのを待った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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