【仮題】VRMMOが世界的競技になった世界 -僕のVR競技専門高校生生活-

星井扇子

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はじめてのイベント。

【03-12】イベント後

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 僕が目を開けるとそこは純白の空間だった。サーバー選択の時と同じような空間だ。
 僕が不振に思っていると、目の前にディスプレイが浮かび上がる。

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 イベント戦績
 
 ハンティングポイント:零
 イベントポイント:三十
 
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 イベントのリザルトのようだ。ハンティングポイントというのがモンスターを倒して手に入れたポイントだと思う。人型Bにキルされたので零ポイントということだろう。
 さて、問題はイベントポイントの方だ。これはなんのポイントだろう。僕は真っ白な空間で首を右に捻る。釣られるように尻尾たちも右に頭を捻る。
 少し考えてみたが結局分からなかった。イベント中の行動で思い当たるものがない。
 僕は、リザルト画面を終わるためにディスプレイを消そうとすると、画面が切り替わる。
 
=======

 これにてイベント『ヒューマンハント』を終了します。
 
 強制ログアウトが実行されます。
 次回プレイ時は、イベント開始時にいた場所にログインするようになっています。
 イベントの報酬等は次回プレイ時にメニューのイベント欄からご確認ください。
 
 この度は、イベント『ヒューマンハント』にご参加くださりありがとうございました。
 注)イベント参加者はイベント翌日のプレイができなくなっています。お気を付けください。
 
=======

 僕がその文を読み終わり、数秒経つと、また意識が落ちていくのが分かった。僕は抵抗せずに眼を閉じた。
 
 
 
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 僕が目を覚ますとそこはヘッドマウントデバイスの中だった。無事にログアウトできたようだ。強制ログアウトって書いてあったから少し怖かったのだ。
 僕は無意識に止めていた息を一気に吐く。四人の中では僕が最後になるはずだ。生徒証の接続を外しチャットアプリを開く。この一か月間、使う機会のなかったチャットアプリで拓郎に連絡を取る。
 
=======

瑠太「今どこ?」

拓郎「食堂に集まってる。瑠太も来い」

=======

 情報を得た僕は食堂に向かうことにする。
 VRルームの中にはまだ半分以上のデバイスが稼働しているのが分かる。僕はイベントを最後までプレイできなかったことを再確認させられた。『次は最後まで』小さな決意とともにVRルームを出た。
 
 
 
-------



 いつもの食堂までの道なのにどこか懐かしい気持ちになりながらも僕は歩いた。
 食堂に入ると三人がテーブルを囲っていた。
 
 「おまたせ」
 「おつかれさん」
 
 僕が言うと、拓郎が手を上げて返してくる。
 
 「私が死んでからどうなったんだ?」
 「あの後、僕と人型Bとの一騎打ちになって、少し戦ったあと真っ二つにされたよ」
 「人型B」
 
 智也の問いに答えると勇人が聞いてきた。
 
 「人型Bは最後に襲ってきたやつのことだよ。その前に倒したのが人型A」
 「なるほど」
 「その呼称を使おう」
 
 勇人が納得し、智也がこの名称を採用した。
 
 「俺がやられた人形みたいなやつのことか?」
 
 拓郎が聞いてきた。拓郎がキルされた後のことだから知らないのだ。
 
 「違うよ。僕は人型と人形は違うと思ったんだけど」
 
 僕は自分の意見を言う。
 
 「そうか、私にはわからなかったが」
 
 智也にはわからなかったようだ。僕と智也は勇人の方を見る。拓郎もつられて勇人を見る。
 
 「うーん。確かに人形とは動きが違ったかな」
 
 勇人も僕に同意してくれた。
 
 「とにかくその敵にやられたんだな」
 「ああ」
 
 拓郎のまとめに智也が頷く。
 
 僕たちは会話を続ける。
 主に、イベント中の反省だ。僕たちのそれぞれの動きを振り返って、ダメ出しをしていく。僕のダメなところは明確だ。火力がない事と機動力がない事の二つ。僕も知っている明確な欠点を、三人からも言われた。三人の欠点も話していくが、キメラ種という種族による欠点なところも多く、具体的な対応策は出なかった。
 イベント後もパーティーを組むわけではないので連携の話よりも個人の技量の話の方が多かった。
 
 僕たちが話し始めたのが四時過ぎで、すでに一時間以上話し込み、五時を過ぎている。一時間も話し込んだ僕を眠気が襲う。
 
 「おい、瑠太。聞いてるか?」
 
 拓郎の声で覚醒する。
 
 「ん? あ、ごめん。ちょっと眠くて」
 「おれも少し眠いかな」
 「そうだな。ここらへんで解散するか。私も疲れが溜まっているようだ」

 僕たちは解散することにした。僕と拓郎は部屋に戻る。
 僕は少し寝ることにする。七時になっても起こさなくていいことを拓郎に言っておこう。
 
 「僕は少し眠るね。夕食の時間になっても起こさなくていいから」
 「おっけー。俺も少し寝るかな。部屋に戻ってからどっと疲れが出てきたわ」
 
 僕は自室に入り、来ていた上着と靴下を脱いでからベットに倒れこむ。体は動くのに精神が疲れているというよくわからない状態の僕はモゾモゾと動き、どうにか布団を被った。
 僕が目を閉じると、睡魔の猛攻撃が始まり、いつの間にか眠りに就いていた。
 
 
 
-------



 後日談ではあるが、今回のイベントは、どうやらスポンサーをしていた会社の中の一つがAIの実験を行うために開いたものだったようで、イベント終了後に国連の下部組織であるAWの運営が調査を始めたことで世間に広まることになる。
 僕たちが戦った人形は戦闘用AIが搭載されたNPC《ノンプレイヤーキャラクター》だったことが判明した。僕たちプレイヤーの行動もデータとして収集されていたようで、軍事AIを作成するために使う予定だったようだ。
 不明だった、『イベントポイント』は人形を倒したことと人型Aを倒したことによって加算されたもので、『ヒューマンハント』の名前の通り参加者をキルしたことによるポイントだったようだ。ちなみに人型Aはプレイヤーだった。
 大きな事件になったわけではないが今回の件を受けて次回から、イベントを開催する企業はより厳しい検査を受けることが義務化された。

  効率組との競争については、実験組の勝利で終わった。効率組の一年で最後まで生き延びたプレイヤーはいなかったようだ。生産組と実験組にはいたようで、その二つともが自身の拠点を簡易的な要塞にしていたのようだ。実験組で息残ったのは栗栖さんたちのグループで、開けた場所を魔法や生産を駆使して要塞化したらしい。そうすることで襲撃の際も有利な状況で戦うことができたみたいだ。ハンティングポイントも一人分は少なくなるが零ではなかったため、ポイント的には効率組の誰よりも高い結果になったようだ。
  この結果から、効率組との争いは一時的な収まりを見せた。ただ、去年よりも勝敗が明確ではなかったため効率組の中にはいまだに実験組に対して隔意を持つものがいるらしい。寮長同士では話が既についているようなので時間と共に風化していくだろう、というのが寮長の見解だった。
  
  僕が『国立VR競技専門高等学校』に入学して一か月。
  初めてのことばかりの日々だったが、ゴールデンウィークにイベントという一つの区切りを終えてようやく高校生として自覚を持ち始めていた。
  普通の高校生とは違うことはわかってはいても、楽しい高校生生活だと想えるぐらいには今の生活に満足している。
  
  これからは、より個人の差が目立つようになるのだろう。今では同じようにプレイできている拓郎たちとも全く違うプレイをすることになるかもしれない。
 それでも、僕の望んだキャラクターである『tail』がどのような進化を遂げていくのか、今の僕には楽しみで仕方ない。当面の目標は、人型Bとの最後の攻防の状態を意図的に引き起こせるようにすること。今はまだ『操作する』という思考を間に挟まなければ尻尾を動かすことができないが、いずれは自由自在に動かせるようになるだろう。課題も多いが楽しいことも多い。
  
  僕の高校生活、並びに、AWプレイ記は始まったばかりだ。











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