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はじめてのイベント。
【03-11】イベント終幕
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人型Bの対処に迷いながらも徘徊する僕はあることに気づいた。
このまま三人で歩いていてもいずれは朝が来るわけで、そうなれば気づかないふりはできないのではないだろうか。
明るくなるまでにいなくなってくれればいいのだが、そう都合よくはいかないだろう。僕はチャットでそのことを相談しようとして人型Bに動きがあることに気づいた。
「動いた」
僕が小声で伝えると二人の体が少し震える。
「襲ってくるか?」
智也は何もないかのようにふるまいながら聞いてくる。ここで後ろを向いてしまえばこちらが気づいていることを悟られてしまうかもしれない。僕はオンを後ろに向かせているから問題ないが、二人は振り向かなければ見えないだろう。
「そろそろ明るくなるよ」
勇人も気づいていたみたいだ。
「明るくなれば時間切れだと思っていた方がいいだろう」
智也がそう言うが、この暗闇の中で戦闘するよりは、明かりがある方がいいと思う。それでも、戦闘に入らないのは人形B以外の脅威に気づかれる可能性を上げないためだ。
「でも、明るくなればあの敵以外にも僕たちに気づくんじゃない?」
「正論だな」
勇人は今戦った方がいいと思っているようだ。僕としては、今でも後でも変わらない気がする。この敵が僕たちをつけているということは仲間がいると思っていいだろう。仲間がいないのに僕たちを監視する意味はない。僕たちが気づけないほどの隠形ができる相手と仮定すれば僕たちについてくる理由はそれぐらいだろう。
人形Bは速度を上げて僕たちに近づいてきている。
「近づいてくる」
僕が告げると、二人はいつでも武器が抜けるように手を動かす。勇人は盾だが。
僕たちは平静を装う。
人型Bが僕の射程に入るのを合図に攻撃を開始する。僕はドーとラーで攻撃を開始する。それに時間差でオンを嗾ける。さっきまでは人型Bに気づかれないように熱感知役のオンはスキルで姿を消している必要があったが、戦闘が始まればその必要はない。熱感知役はヒューに変える。
僕の攻撃に合わせて、勇人が盾を構えて前に出て、智也が後ろに下がり詠唱を開始する。
僕のドーとラーの首と足を狙った同時攻撃を難なく回避する人型B。余裕で後ろに下がることで躱す人型Bはこちらの行動が見えていると思っていいだろう。僕は前に進み人型Bを射程外に出さないようにする。躱した人型Bにオンの首への攻撃が迫る。人型Bは咄嗟のところでオンを回避した。オンの攻撃が避けられたのは初めてだ。人型Bはオンの〔迷彩〕と〔隠密〕を見破ることができるレベルの相手ということになる。僕一人ではまず勝てないだろう。僕は二人のサポートに徹することにした。
僕は人型Bに攻撃の隙を与えないように追撃を試みるが、すでに人型Bは右手に持った何かを振りかぶっていた。僕の攻撃で体勢を崩しながらの攻撃だ。僕は左肩をドーで突き、体勢をさらに崩そうとするが、人型Bの攻撃は止まらない。格上の攻撃を喰らえば僕でも一撃の可能性がある。避けることのできない僕は、オンとヒュー以外の尻尾で人型Bの右腕に噛みつかせ、攻撃を止めようとする。度重なる攻撃で人型Bの攻撃は勢いを失っていく。これなら即死はないだろう。
僕は両手で頭を防御する。人型Bの攻撃が僕に当たる寸前、人型Bの武器が弾かれた。
「〔挑発〕!」
勇人が盾で弾いてくれたようだ。僕はこのわずかな攻防の間、仲間の存在を忘れていたみたいだ。
人型Bの攻撃を受け止めた勇人に再度人型Bが腕を振り下ろす。金属質の音が鳴り響き、それに隠れるように勇人の足が地面を滑る音が聞こえた。明らかに下がっている。人型Aよりも攻撃が重い様だ。
僕は人型Bの攻撃を邪魔するために武器を持つ右腕や軸足を攻撃する。さっきの攻防でこの行為が有効なのは確認してある。
二人でなんとか人型Bの攻撃を受け止めていると、背後から音が飛んでくる。僕の左右を轟音が飛んでいき、その後から風を感じる。風属性の魔法だろう。それも、強力な。
勇人に攻撃を仕掛けていた人型Bは智也の魔法に気づき、後ろに大きく飛び退く。
ここで拓郎が抜けたことによる弊害がでた。近接物理攻撃担当の拓郎がいないため、追撃ができないのだ。僕の足では人型Bに追いつけないのもこうなった原因の一つだ。
人型Bは、地面に着地し、再び接近してくるかと思ったらまたも後ろに飛び下がる。逃げるのだろうか。僕が都合のいい予想を立てていると智也の大声が聞こえてくる。
「魔法だ!」
その声で気づく。人型Bは魔法が使えるのか。今まで魔法を使う敵に遭遇したことがなかったために、無意識にその選択肢を除外してしまっていた。気づいたときには、僕と勇人に向かって大きな炎の竜が飛んできていた。
僕は、ヒューを僕の背後に隠し、他五本で僕を守る。ヒューが〔再生〕の核であるため、ヒューは守らなければならない。
僕が防御態勢に入ったように勇人も盾を構え、体を盾に隠す。勇人のスライムボディは物理に強いが魔法には弱いといっていた。僕たちが防御態勢に入ったと同時に炎でできた竜の咢が僕たちを捉えていた。僕たちを包むように広がる炎。僕は炎の熱に耐えながら、尻尾を操作して僕を中心にとぐろを巻く。捜査している尻尾からは表面が焼けていくのがわかる。焼け焦げると同時に再生をする。息を吸えば、熱に暖められた空気が肺を焼く。声が出そうになったのを僕はこらえる。
僕が息を殺していると勇人の絶叫が聞こえた。
「アアアァァァァッァアアアアアアァァ!」
勇人は弱点をもろに食らった形になっている。炎に包まれて数秒続いた勇人の絶叫が止まると、光の粒子が周囲に拡散した。死に戻りだ。
僕は炎の中に舞う光の粒子に思考が一瞬硬直するがすぐに気を取り直す。今の僕にできることはこの攻撃を耐えることだ。僕が必死に耐えていると、今度は智也の声が聞こえてきた。
「スマン!」
僕の耳に届いた波動は、僕への謝罪の意を届けてくれた。
僕はそれで理解する。僕以外は全滅。残った僕も死に体。人型Bに勝つことは最早敵わないだろう。
強すぎる。レベル制限等が一切なかったことから予想はできていたが、それでも理不尽に感じる。僕は珍しく怒りの感情を覚える。それでも、僕にできるのはせいぜい人型Bに嫌がらせをすることぐらいだ。
ようやく炎が収まり目を開けた僕の視界に映るのは人型Bの持つ怪しく光る片手剣。炎の光を鈍く反射させているその件は僕にとっての死神の鎌。
僕の思考は加速され、人型Bの動きが遅く見える。僕は反射的に避けようとするが、体は動かない。僕の思考を無視して石のように動かない体を只管叱咤するが動かないものは動かないようだ。僕が茫然と迫りくる剣を見ていると、剣の腹に迫る一匹の蛇が見えた。その蛇は剣の腹に頭をぶつける。ここで僕はこの蛇がオンであることに気づいた。身体能力の低いオンが何をしても結果は変わらないだろう。それでも僕の頭に希望が宿る。
この攻防はある可能性を示唆している。それは僕の自動防御《オートガード》ならば人型Bの動きに完璧に対応することができることだ。
僕は、固まった思考を再開させる。できる限り生き延びる。それが僕の今やるべきこと。
僕は、全神経を防御に集中させる。僕の尻尾たちが考えることが分かるようになっていき、意識が一体化していく。僕が攻撃を認識すると尻尾がそれを往なす為に動く。一本で無理であれば二本。二本でダメならば三本。と数が増えていき、往なすことができた後は次の攻撃に備えて僕のもとに戻ってくる。
短くも長い攻防の果てに、僕の集中は限界を超え、いつの間にか視界が赤く染まり、上唇に水気を感じていた。それを認識した途端、僕の思考は一気に冷却されていく。
僕がしのぎ続けていた片手剣は、さっきまでの攻防が嘘かのように僕の頭から体全体を両断する。
思考の停止した僕には、ただ僕を両断する剣の切っ先を負うことしかできなかった。
痛みを感じないな。そう思いながら、僕の意識は一気に落ちた。
このまま三人で歩いていてもいずれは朝が来るわけで、そうなれば気づかないふりはできないのではないだろうか。
明るくなるまでにいなくなってくれればいいのだが、そう都合よくはいかないだろう。僕はチャットでそのことを相談しようとして人型Bに動きがあることに気づいた。
「動いた」
僕が小声で伝えると二人の体が少し震える。
「襲ってくるか?」
智也は何もないかのようにふるまいながら聞いてくる。ここで後ろを向いてしまえばこちらが気づいていることを悟られてしまうかもしれない。僕はオンを後ろに向かせているから問題ないが、二人は振り向かなければ見えないだろう。
「そろそろ明るくなるよ」
勇人も気づいていたみたいだ。
「明るくなれば時間切れだと思っていた方がいいだろう」
智也がそう言うが、この暗闇の中で戦闘するよりは、明かりがある方がいいと思う。それでも、戦闘に入らないのは人形B以外の脅威に気づかれる可能性を上げないためだ。
「でも、明るくなればあの敵以外にも僕たちに気づくんじゃない?」
「正論だな」
勇人は今戦った方がいいと思っているようだ。僕としては、今でも後でも変わらない気がする。この敵が僕たちをつけているということは仲間がいると思っていいだろう。仲間がいないのに僕たちを監視する意味はない。僕たちが気づけないほどの隠形ができる相手と仮定すれば僕たちについてくる理由はそれぐらいだろう。
人形Bは速度を上げて僕たちに近づいてきている。
「近づいてくる」
僕が告げると、二人はいつでも武器が抜けるように手を動かす。勇人は盾だが。
僕たちは平静を装う。
人型Bが僕の射程に入るのを合図に攻撃を開始する。僕はドーとラーで攻撃を開始する。それに時間差でオンを嗾ける。さっきまでは人型Bに気づかれないように熱感知役のオンはスキルで姿を消している必要があったが、戦闘が始まればその必要はない。熱感知役はヒューに変える。
僕の攻撃に合わせて、勇人が盾を構えて前に出て、智也が後ろに下がり詠唱を開始する。
僕のドーとラーの首と足を狙った同時攻撃を難なく回避する人型B。余裕で後ろに下がることで躱す人型Bはこちらの行動が見えていると思っていいだろう。僕は前に進み人型Bを射程外に出さないようにする。躱した人型Bにオンの首への攻撃が迫る。人型Bは咄嗟のところでオンを回避した。オンの攻撃が避けられたのは初めてだ。人型Bはオンの〔迷彩〕と〔隠密〕を見破ることができるレベルの相手ということになる。僕一人ではまず勝てないだろう。僕は二人のサポートに徹することにした。
僕は人型Bに攻撃の隙を与えないように追撃を試みるが、すでに人型Bは右手に持った何かを振りかぶっていた。僕の攻撃で体勢を崩しながらの攻撃だ。僕は左肩をドーで突き、体勢をさらに崩そうとするが、人型Bの攻撃は止まらない。格上の攻撃を喰らえば僕でも一撃の可能性がある。避けることのできない僕は、オンとヒュー以外の尻尾で人型Bの右腕に噛みつかせ、攻撃を止めようとする。度重なる攻撃で人型Bの攻撃は勢いを失っていく。これなら即死はないだろう。
僕は両手で頭を防御する。人型Bの攻撃が僕に当たる寸前、人型Bの武器が弾かれた。
「〔挑発〕!」
勇人が盾で弾いてくれたようだ。僕はこのわずかな攻防の間、仲間の存在を忘れていたみたいだ。
人型Bの攻撃を受け止めた勇人に再度人型Bが腕を振り下ろす。金属質の音が鳴り響き、それに隠れるように勇人の足が地面を滑る音が聞こえた。明らかに下がっている。人型Aよりも攻撃が重い様だ。
僕は人型Bの攻撃を邪魔するために武器を持つ右腕や軸足を攻撃する。さっきの攻防でこの行為が有効なのは確認してある。
二人でなんとか人型Bの攻撃を受け止めていると、背後から音が飛んでくる。僕の左右を轟音が飛んでいき、その後から風を感じる。風属性の魔法だろう。それも、強力な。
勇人に攻撃を仕掛けていた人型Bは智也の魔法に気づき、後ろに大きく飛び退く。
ここで拓郎が抜けたことによる弊害がでた。近接物理攻撃担当の拓郎がいないため、追撃ができないのだ。僕の足では人型Bに追いつけないのもこうなった原因の一つだ。
人型Bは、地面に着地し、再び接近してくるかと思ったらまたも後ろに飛び下がる。逃げるのだろうか。僕が都合のいい予想を立てていると智也の大声が聞こえてくる。
「魔法だ!」
その声で気づく。人型Bは魔法が使えるのか。今まで魔法を使う敵に遭遇したことがなかったために、無意識にその選択肢を除外してしまっていた。気づいたときには、僕と勇人に向かって大きな炎の竜が飛んできていた。
僕は、ヒューを僕の背後に隠し、他五本で僕を守る。ヒューが〔再生〕の核であるため、ヒューは守らなければならない。
僕が防御態勢に入ったように勇人も盾を構え、体を盾に隠す。勇人のスライムボディは物理に強いが魔法には弱いといっていた。僕たちが防御態勢に入ったと同時に炎でできた竜の咢が僕たちを捉えていた。僕たちを包むように広がる炎。僕は炎の熱に耐えながら、尻尾を操作して僕を中心にとぐろを巻く。捜査している尻尾からは表面が焼けていくのがわかる。焼け焦げると同時に再生をする。息を吸えば、熱に暖められた空気が肺を焼く。声が出そうになったのを僕はこらえる。
僕が息を殺していると勇人の絶叫が聞こえた。
「アアアァァァァッァアアアアアアァァ!」
勇人は弱点をもろに食らった形になっている。炎に包まれて数秒続いた勇人の絶叫が止まると、光の粒子が周囲に拡散した。死に戻りだ。
僕は炎の中に舞う光の粒子に思考が一瞬硬直するがすぐに気を取り直す。今の僕にできることはこの攻撃を耐えることだ。僕が必死に耐えていると、今度は智也の声が聞こえてきた。
「スマン!」
僕の耳に届いた波動は、僕への謝罪の意を届けてくれた。
僕はそれで理解する。僕以外は全滅。残った僕も死に体。人型Bに勝つことは最早敵わないだろう。
強すぎる。レベル制限等が一切なかったことから予想はできていたが、それでも理不尽に感じる。僕は珍しく怒りの感情を覚える。それでも、僕にできるのはせいぜい人型Bに嫌がらせをすることぐらいだ。
ようやく炎が収まり目を開けた僕の視界に映るのは人型Bの持つ怪しく光る片手剣。炎の光を鈍く反射させているその件は僕にとっての死神の鎌。
僕の思考は加速され、人型Bの動きが遅く見える。僕は反射的に避けようとするが、体は動かない。僕の思考を無視して石のように動かない体を只管叱咤するが動かないものは動かないようだ。僕が茫然と迫りくる剣を見ていると、剣の腹に迫る一匹の蛇が見えた。その蛇は剣の腹に頭をぶつける。ここで僕はこの蛇がオンであることに気づいた。身体能力の低いオンが何をしても結果は変わらないだろう。それでも僕の頭に希望が宿る。
この攻防はある可能性を示唆している。それは僕の自動防御《オートガード》ならば人型Bの動きに完璧に対応することができることだ。
僕は、固まった思考を再開させる。できる限り生き延びる。それが僕の今やるべきこと。
僕は、全神経を防御に集中させる。僕の尻尾たちが考えることが分かるようになっていき、意識が一体化していく。僕が攻撃を認識すると尻尾がそれを往なす為に動く。一本で無理であれば二本。二本でダメならば三本。と数が増えていき、往なすことができた後は次の攻撃に備えて僕のもとに戻ってくる。
短くも長い攻防の果てに、僕の集中は限界を超え、いつの間にか視界が赤く染まり、上唇に水気を感じていた。それを認識した途端、僕の思考は一気に冷却されていく。
僕がしのぎ続けていた片手剣は、さっきまでの攻防が嘘かのように僕の頭から体全体を両断する。
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