【仮題】VRMMOが世界的競技になった世界 -僕のVR競技専門高校生生活-

星井扇子

文字の大きさ
91 / 101
新時代を垣間見る一人として

【09-01】僕はもしかすると中二病なのかもしれない

しおりを挟む
 本庄さんはリンカーやARPCを取り出した小さい方の箱から手袋を出して右手に嵌めている。その手袋は見た感じだと布というよりも革で出来ているように見え、色は黒。それを嵌め終えると左手に持っていたもう一つの手袋を矢澤コーチに渡す。

「このARPCを使うためには今私が嵌めているようなグローブが必要になります」



-------



 本庄さんから説明されたARPCはとにかくすごかった。かつて世界中の人間がSFと呼んでいたものに登場していたコンピューター。ARPC上、テーブルの面積いっぱいに表示されたAR情報を手袋をはめた右手と声を使って操作していた。
 本庄さんと矢澤コーチが嵌めた手袋はARPCの表示するAR情報に干渉できるように作られた手袋だと言う。ARPCはあらかじめ設定されているユーザーからの操作を受け付けるようで、矢澤コーチも最初に手袋を渡されていたが本庄さんが操作を許可するまではいくら手を振っても操作を受け付けていなかった。
 本庄さんはその手袋をARグローブなんて呼んでいた。ARグラスといい安直だがわかりやすい。お偉いさんが分かりやすいように決めたんだろうな。
 ARグローブを嵌めた右手の形を変えながら動かすとそれが命令になる。人差し指で指せば強調。人差し指と親指で摘まむように動かせば移動。人差し指と薬指で選択などいろいろと説明をしてくれたけどほとんど忘れてしまった。
 実はこのグローブだが、リンカーを持っている人には必要ないと言っていた。正確に言うとリンカーの持つAR機能と同等のものを持つデバイスを持っていればいいらしい。リンカーのAR昨日で服が替わるのは全身にARフィールド的な何かを展開しているからだそうでそれを使えば手袋をしなくても操作できるんだって。本庄さんからすこしだけARPCの操作権を渡されて操作してみたけど、操作できた。
 ARグローブはリンカーが開発される前の段階に出来た開発物で、リンカーのようなAR機能を全身に展開できない人やできない場所での操作用として活用されるそうだ。ARPCの操作権はデバイス毎に振られるから会議室に設置したARPCに操作権を持たせたグローブを席数分置いておけば会議毎にいちいち操作権を認証させなくてもいいのだ。
 ARPCを使った説明はわかりやすかったけど、今までとは違った形での説明だったからすごく疲れたけど。慣れてないからだとは思うけど、神での説明の方が分かりやすいと思う。

 説明のが終わってから本庄さんがうっかりなのか意図してなのかわからないけど、ARPCよりもリンカーの方が高性能だと言っていた。多人数でも使える汎用性があるARPCに比べて、リンカーは個人用。いずれはどちらも普及するだろうけど、それまではリンカーよりもARPCの方が普及が速いかもしれないと。VRデバイスがあればAWをプレイするのに不足はないからそこらへんはね。

 僕が疑問に思っていた『ニューワールドプロジェクト』は『セカンドワールドプロジェクト』が名前を変えた団体で国連の下部にいた組織が晴れて独立した一組織となったものだそうだ。来年以降のVRオリンピックはこの『ニューワールドプロジェクト』によって開催されることになる。AWとSWもこの組織が運営するそうだ。
 『ニューワールドプロジェクト』が指し示すニューワールドとは現実世界を指すそうで、ARを使った新たな情報化社会を作るというプロジェクトなんだと。ニューワールドなんて大きく出たなと思ったのは僕の心の中だけの秘密だ。
 今年はまだ国連の管轄だから今年の大会には変更がない。しかし、来年以降はAW以外の競技を増やすというのがすでに関係者に公表されているらしく、頭が痛いと言っていた。 言い知れない不安を感じる。僕としても今この場で最新情報を聞いている状態に不安を感じる。早く公式に発表してくれないかな。

 一通りの説明が終わると、この部屋を出てからのことの話になった。
 まずホテルを使っている一般のお客さんの目が多い場所ではARグラスを使わないようにと言われた。特に僕を対象にして。僕以外が持っていたARグラスは貸与品なために一回一回回収する。僕のリンカーは僕への支給品でARグラスもそれの付属品。だから、これは僕の物。ということだそうだ。
 ARPCで説明された内容の資料はそれぞれのデバイスに送ってくれた。ARPCで使うソフトはそれ専用に調整・作成されたソフトだ。当然従来使われいるVRデバイスを始めとした携帯デバイスでも使えるようにデータを変換できる。僕のリンカー以外はARPCからすると旧型に当たる。僕だけはそのまま送られてきた。これを見て予定や今日あった説明を復習しといてくれって言われた。

 説明の最後にこのホテルで使えるサービスの説明があった。朝・昼・晩の三食はホテルについている。ホテルに入っているレストランならばどこでもいい。三食分は経費になるという。ふとっぱらー。
 さらに、ホテルで無料で使えるサービスはすべて使える。有料サービスに関しては各自で支払うこと。もしも、仕事上必要になったものがあれば後日申告することで経費として落ちるのだと言われたけど、経費の申請なんてしたこともないからなるべくしないでいいように生活するつもりだ。
 ホテルの外に出るときは必ずスタッフ全員が参加している連絡用のチャットルームで報告すること。一人で出歩くのは避け、だれかしらと行動することを強く言われた。

 ARグラスを返す時、最後だからと本庄さんがお魔僕たちが使っている多目的室の管理AIを呼び出した。

「マルチパーパスナンバーファイブ」
『ご用命はなんでしょうか?』
「ARモードを」
『かしこまりました。内装はどういたしましょうか?』
「日本家屋は?」
『ございます』
「では、それで」

 最初は何を言っているのかつかめなかったが内装という言葉とARという言葉で何となく察しがついた。

 部屋の内装が変わる。僕たちは何もしていない。ドアがあった場所が障子に変わり、僕たちが使っている機能的でシンプルなテーブルが木製の重厚感のあるテーブルへと変わり、十個ある椅子も木製に変わった。床は当然絨毯から畳になる。天井に四角い形で埋められた電灯に沿うように吊るすタイプの和風な灯が等間隔で垂れている。窓がある方には木で縁取りされているガラス張りの窓が張られていてその向こうにはどこかで見たことがある日本庭園が姿を現していた。

「へっ?」

 それが一瞬で起こる。僕はつい混乱からか声を漏らしていた。察しはついていたんだ。でも、こんな感じなの? もっとデジタルな痕跡が残ってるもんじゃないの?
 ARを使って部屋の内装を変えるっていうのは聞いたことがある。よく映画を撮影するときにARを使って撮影してそこにCGを重ねるなんて手法があるってテレビのメイキング映像でやってる。でも、ARの映像だけではCGは超えられないからARのデータにCGをプラスさせるってどこかのナレーターが言ってた。でも、これはまさにリアルだ。

「絨毯の感触がなければ本当に日本家屋にいるような錯覚をしてしましそうですね」
「ええ。これが普及すれば旅行関係、特に宿泊関係の企業は阿鼻叫喚することになるわね」

 菊池さんと村山さんが感想を話しているけどまさにその通りだ。
 僕はニューワールドなんて大きく出たなと思っていたけど、これは、案外大げさでもないかもしれない。ARが溢れた情報に埋もれた世界。VRによって距離を超越した世界。世界はさらに小さくなる。その果てになにか対規模が変化があればそれはもう新世界と言ってもいいのかもしれない。



 なんて、僕はもしかすると中二病なのかもしれない。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?

すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。 お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」 その母は・・迎えにくることは無かった。 代わりに迎えに来た『父』と『兄』。 私の引き取り先は『本当の家』だった。 お父さん「鈴の家だよ?」 鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」 新しい家で始まる生活。 でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。 鈴「うぁ・・・・。」 兄「鈴!?」 倒れることが多くなっていく日々・・・。 そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。 『もう・・妹にみれない・・・。』 『お兄ちゃん・・・。』 「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」 「ーーーーっ!」 ※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。 ※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 ※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。 ※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)

《カクヨム様で15000PV達成‼️》悪魔とやり直す最弱シーカー。十五歳に戻った俺は悪魔の力で人間の頂点を狙う

なべぞう
ファンタジー
ダンジョンが生まれて百年。 スキルを持つ人々がダンジョンに挑む世界で、 ソラは非戦闘系スキル《アイテムボックス》しか持たない三流シーカーだった。 弱さゆえに仲間から切り捨てられ、三十五歳となった今では、 満身創痍で生きるだけで精一杯の日々を送っていた。 そんなソラをただ一匹だけ慕ってくれたのは―― 拾ってきた野良の黒猫“クロ”。 だが命の灯が消えかけた夜、 その黒猫は正体を現す。 クロは世界に十人しか存在しない“祝福”を与える存在―― しかも九つの祝福を生んだ天使と悪魔を封印した“第十の祝福者”だった。 力を失われ、語ることすら封じられたクロは、 復讐を果たすための契約者を探していた。 クロは瀕死のソラと契約し、 彼の魂を二十年前――十五歳の過去へと送り返す。 唯一のスキル《アイテムボックス》。 そして契約により初めて“成長”する力を与えられたソラは、 弱き自分を変えるため、再びダンジョンと向き合う。 だがその裏で、 クロは封印した九人の祝福者たちを狩り尽くすための、 復讐の道を静かに歩み始めていた。 これは―― “最弱”と“最凶”が手を取り合い、 未来をやり直す物語

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

処理中です...