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新時代を垣間見る一人として
【09-02】
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多目的室での会議から数分後、僕の姿は自分に充てられたホテルの一室にあった。
はい。戻ってきました。
あの会議ではいろいろと技術革新の波に充てられてかなり酔っていましたが、明日以降の予定を確認していきましょう。
「じゃあ、もらった資料展開して」
『先ほどから独り言をぶつぶつと。大丈夫でしょうか?』
「黒川変わったよね」
『ええ。言うならば私は黒川バージョンリンカーでございますので』
「はぁ」
僕はすこし、いや、かなり疲れているみたいだ。今すぐベッドで横になってしまいたい。そう思ったけど自分が来ている服がスーツであることに気が付いて思いとどまる。
スーツを脱いで玄関近くのクローゼットからハンガーを取り出しす。胸ポケットからリンカーを取り出してからスーツをハンガーにに掛けた。スーツってハンガーに掛けておけば大丈夫だよね。これ支給品だと思うけど一着しかないからシワとか気を付けないとな。
「黒川。スーツの保管ってハンガーに掛けておけばいいのかな?」
『どうやらブラッシングが必要なようです』
「ブ、ブラッシング?」
スーツにブラッシングなんて必要なのか。父さんもやってたのかな。覚えてないや。いや、やってないな。
ブラッシングってブラシがないとできないからしなくてもいいかな。でも、スーツの保管に必要なら置いてそうな気もする。
「部屋に備え付けられてないかな?」
『クローゼットの中に置いてあると情報がありますが、ございませんか?』
「うーん」
ないな。クローゼットの中を見渡したがあるのはハンガーが残りいくつかと僕のスーツケース、そして、金庫。あとクリーニング用の袋があるだけ。
「ないみたいだね。他も探してみようか」
僕はとりあえずスーツを掛けたハンガーをクローゼットに入れて、ついでにネクタイを少し緩めて、シャツの衿台のボタンも外した。
ベッド横の引き出し、なし。テーブルの引き出し、なし。テレビ台の引き出し、なし。洗面台の引き出し、なし。ありそうな場所は全部見たけどなかった。途中ホテルの案内とルームサービスのメニューがあって気になったけどテーブルの上に出してブラシ捜索を続けた。
「ないや」
『下に連絡しますか?』
「そうだね。あるはずのものがないなら連絡しようか。僕がここをチェックアウトした後に盗られたとか言われても嫌だし」
『かしこまりました。少々お待ちください』
「うん。黒川が連絡してくれるんだ」
『室内管理AIの機能をすべて使えるので』
「なるほど」
さて、ブラシが来るまでは荷解きでもしようかな。僕はリンカーをテレビ台に置く。左耳に付けたまんまのイヤホンも外してリンカーの上に置いた。
僕はクローゼットの下に入れた個人用のスーツケースを取りだして、空いているスペースを探す。
ベッドが二つに大きな鏡が付いたテーブルとそれに見合った椅子。それと小さめの一人用ソファが二つにそれに合う丸テーブル。それとテレビ。よく見る構成だ。僕はソファ二つと丸テーブルを動かしてスペースを作ってそこにスーツケースを広げることにした。
僕がガタゴトとソファを動かしているとテレビ台に置いたリンカーから黒川が僕に報告する。
『受付に連絡したところ至急持ってくるとのことです』
「そっか」
僕は作ったスペースにスーツケースを置いてリンカーを取る。イヤホンを着けないと言葉が通じないからな。そういえば、このイヤホンってリンカーと接続してないや。
「黒川、このイヤホンってリンカーでも使えるよね?」
『はい。接続いたしますか?』
「おねがい。ホテルの人が来るなら翻訳が必要だろうし」
僕はシャツの胸ポケットにリンカーを入れてイヤホンを左耳に付けた。
VRデバイスによる自動翻訳は同じソフトを使っている人同士であればイヤホンについているマイクの音を自分のデバイスから相手のデバイスに送信。それを翻訳して使用者のイヤホンで流す。しかし、相手が同じソフトを使用していない場合、自分のデバイスに相手の声を入れる必要がある。胸ポケットの位置は普通に会話する分には相手の音を判別できる場所だ。だから、胸ポケットにデバイスを入れるといいと飛行機に乗る前に仁科さんが教えてくれた。さらに言えば、胸ポケットにデバイスを入れている人で分かりやすく片耳イヤホンを付けている人は翻訳ソフトを使っていることが多いらしい。そうやって相手が翻訳ソフトを使っているか見分ける方法があると教えてくれたのだ。
翻訳ソフトは便利だ。世界中に存在する言語の壁をそれ一つで壊してしまう。そんな利器が普及している今、翻訳ソフトを使わずに外国語を話すという行為はそれだけで相手に好印象を与えられる。自分も外国人との交渉を担当するようになってよくわかった、と世間話も聞いた。たしかに相手が日本語を話しているとそれだけでちょっと安心するかな。
『リンカーのAR機能を使えばイヤホンなしで音を届けられますがどうしましょうか?』
「ええ?」
どういうこと? すごい機能だけど今はいいや。イヤホンしてないのに日本語で話すって相手も混乱するかもしれないし。
リンカーが広まったら仁科さんから聞いた話も変わってくるんだろうか。そんなこともないのかな。相手が話している音は聞こえるから。
コンコン。ノックの音が聞こえてきた。
-------
無事ブラシを受け取って、スーツのブラッシングも終えた。やり方はもちろんわからなかったので黒川に調べてもらいながらだけど。
ホテルのスタッフは当然のように翻訳ソフト持っていた。申し訳ないととても謝られてホテル内で使える割引券を渡された。ホテル内のサービスであればすべて使えるらしい。使うかなぁ。さっき見つけた案内を見ながら決めよう。
スーツケースの中身も取り出してテレビ台の引き出しにしまってある。荷物はほとんどが衣服だから今のスーツケースはすっからかんになっている。今日はもうスーツとスラックスでいいかなとも思ったけどスラックスは脱いでジーパンを履いた。明日以降も使うからとりあえずね。クリーニングも一晩で終わるなら出したほうがいいか。あとで調べよう。
今後の予定は、明日は休み。明後日からVRテストというのが僕の予定だ。矢澤コーチや本庄さんは明日からいろいろな折衝があるというから大変だ。VRテストはどれだけかかるかわからないけど終わってしまえば僕の仕事は八割型終わったと言える。僕の仕事は少ないのだ。
今の時間はだいたいおやつだろうか。おなかはかなり減っている。下に売店あったかな。部屋の冷蔵庫の中にはもちろんドリンクが入ってるけど下で買った方が安かったはず。下でも同じ値段だったらそのまま飲んじゃってもいいかな。
お金に関してはVRデバイスで払えるように……あれ? VRデバイスでは支払いの設定していたけどリンカーだとどうなんだろ。
「黒川。リンカーで支払いってできるの?」
『はい。すでに設定しております。バトラーの設定同様、口座から直接から引き落とすようになっております。それと、どうやらこのホテルではセカンドマネーが使えるようです』
「セカンドマネーってSWのセカンドマネー?」
『はい』
SMはSWで使われる仮想通貨だ。SW内の経済と現実世界の為替によって各国からの変換効率が変動していて世界一安全な通貨とも呼ばれている。世界一安全とくれば投資目的で使うものもいる。ただ利益率とその手間を考えるとそれほどのもうけは出ない仕組みになっているみたい。本屋に行くと主婦のへそくり術っていうタイトルの本にやり方がまとめられてたりする。
ただこのセカンドマネーにもいろいろと問題はあって現実世界で取り扱う店は少なかったはずだけど、さすが大きなホテルなだけある。僕たちが止まっているホテルはそんじょそこらの安ホテルではない。エントランスに入った時からわかっていたけどね。だからこそ、僕が一人部屋でいいのかと考えていたんだけど。
セカンドマネーが使えるならセカンドマネーにして払ってしまってもいいかな。どちらにしてもリンカーからの支払いだから手間は変わらないけど。どっちも黒川がやってくれるから。
『今の状況ですとSMからの支払いの方がお得です』
「そうなの? 今僕ってSM持ってたっけ?」
『はい。日本円での支払いだと手数料を取られるので』
「あ、そっか」
『若のSM残高は三百SMほどですね』
「三百かー。ちょっと少ないかなぁ」
SW全然行かないからSMも使わないのだ。
「いくらぐらい替えておいた方がいいかな? うーん。一万円とかでいいかな」
『実際に使う際に私が交換することもできますが?』
「それだと時間掛からない?」
『どの支払い方法でも時間は変わらないと思われます。どうやらリンカーはSMを使うことを前提とした造りになっているようです』
「ほえー。ほえー。ほえ?」
SMが使われる前提だなんて……。ああ、ちょっと僕怖くなってきたから聞かなかったことにしてもいいかな?
はい。戻ってきました。
あの会議ではいろいろと技術革新の波に充てられてかなり酔っていましたが、明日以降の予定を確認していきましょう。
「じゃあ、もらった資料展開して」
『先ほどから独り言をぶつぶつと。大丈夫でしょうか?』
「黒川変わったよね」
『ええ。言うならば私は黒川バージョンリンカーでございますので』
「はぁ」
僕はすこし、いや、かなり疲れているみたいだ。今すぐベッドで横になってしまいたい。そう思ったけど自分が来ている服がスーツであることに気が付いて思いとどまる。
スーツを脱いで玄関近くのクローゼットからハンガーを取り出しす。胸ポケットからリンカーを取り出してからスーツをハンガーにに掛けた。スーツってハンガーに掛けておけば大丈夫だよね。これ支給品だと思うけど一着しかないからシワとか気を付けないとな。
「黒川。スーツの保管ってハンガーに掛けておけばいいのかな?」
『どうやらブラッシングが必要なようです』
「ブ、ブラッシング?」
スーツにブラッシングなんて必要なのか。父さんもやってたのかな。覚えてないや。いや、やってないな。
ブラッシングってブラシがないとできないからしなくてもいいかな。でも、スーツの保管に必要なら置いてそうな気もする。
「部屋に備え付けられてないかな?」
『クローゼットの中に置いてあると情報がありますが、ございませんか?』
「うーん」
ないな。クローゼットの中を見渡したがあるのはハンガーが残りいくつかと僕のスーツケース、そして、金庫。あとクリーニング用の袋があるだけ。
「ないみたいだね。他も探してみようか」
僕はとりあえずスーツを掛けたハンガーをクローゼットに入れて、ついでにネクタイを少し緩めて、シャツの衿台のボタンも外した。
ベッド横の引き出し、なし。テーブルの引き出し、なし。テレビ台の引き出し、なし。洗面台の引き出し、なし。ありそうな場所は全部見たけどなかった。途中ホテルの案内とルームサービスのメニューがあって気になったけどテーブルの上に出してブラシ捜索を続けた。
「ないや」
『下に連絡しますか?』
「そうだね。あるはずのものがないなら連絡しようか。僕がここをチェックアウトした後に盗られたとか言われても嫌だし」
『かしこまりました。少々お待ちください』
「うん。黒川が連絡してくれるんだ」
『室内管理AIの機能をすべて使えるので』
「なるほど」
さて、ブラシが来るまでは荷解きでもしようかな。僕はリンカーをテレビ台に置く。左耳に付けたまんまのイヤホンも外してリンカーの上に置いた。
僕はクローゼットの下に入れた個人用のスーツケースを取りだして、空いているスペースを探す。
ベッドが二つに大きな鏡が付いたテーブルとそれに見合った椅子。それと小さめの一人用ソファが二つにそれに合う丸テーブル。それとテレビ。よく見る構成だ。僕はソファ二つと丸テーブルを動かしてスペースを作ってそこにスーツケースを広げることにした。
僕がガタゴトとソファを動かしているとテレビ台に置いたリンカーから黒川が僕に報告する。
『受付に連絡したところ至急持ってくるとのことです』
「そっか」
僕は作ったスペースにスーツケースを置いてリンカーを取る。イヤホンを着けないと言葉が通じないからな。そういえば、このイヤホンってリンカーと接続してないや。
「黒川、このイヤホンってリンカーでも使えるよね?」
『はい。接続いたしますか?』
「おねがい。ホテルの人が来るなら翻訳が必要だろうし」
僕はシャツの胸ポケットにリンカーを入れてイヤホンを左耳に付けた。
VRデバイスによる自動翻訳は同じソフトを使っている人同士であればイヤホンについているマイクの音を自分のデバイスから相手のデバイスに送信。それを翻訳して使用者のイヤホンで流す。しかし、相手が同じソフトを使用していない場合、自分のデバイスに相手の声を入れる必要がある。胸ポケットの位置は普通に会話する分には相手の音を判別できる場所だ。だから、胸ポケットにデバイスを入れるといいと飛行機に乗る前に仁科さんが教えてくれた。さらに言えば、胸ポケットにデバイスを入れている人で分かりやすく片耳イヤホンを付けている人は翻訳ソフトを使っていることが多いらしい。そうやって相手が翻訳ソフトを使っているか見分ける方法があると教えてくれたのだ。
翻訳ソフトは便利だ。世界中に存在する言語の壁をそれ一つで壊してしまう。そんな利器が普及している今、翻訳ソフトを使わずに外国語を話すという行為はそれだけで相手に好印象を与えられる。自分も外国人との交渉を担当するようになってよくわかった、と世間話も聞いた。たしかに相手が日本語を話しているとそれだけでちょっと安心するかな。
『リンカーのAR機能を使えばイヤホンなしで音を届けられますがどうしましょうか?』
「ええ?」
どういうこと? すごい機能だけど今はいいや。イヤホンしてないのに日本語で話すって相手も混乱するかもしれないし。
リンカーが広まったら仁科さんから聞いた話も変わってくるんだろうか。そんなこともないのかな。相手が話している音は聞こえるから。
コンコン。ノックの音が聞こえてきた。
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無事ブラシを受け取って、スーツのブラッシングも終えた。やり方はもちろんわからなかったので黒川に調べてもらいながらだけど。
ホテルのスタッフは当然のように翻訳ソフト持っていた。申し訳ないととても謝られてホテル内で使える割引券を渡された。ホテル内のサービスであればすべて使えるらしい。使うかなぁ。さっき見つけた案内を見ながら決めよう。
スーツケースの中身も取り出してテレビ台の引き出しにしまってある。荷物はほとんどが衣服だから今のスーツケースはすっからかんになっている。今日はもうスーツとスラックスでいいかなとも思ったけどスラックスは脱いでジーパンを履いた。明日以降も使うからとりあえずね。クリーニングも一晩で終わるなら出したほうがいいか。あとで調べよう。
今後の予定は、明日は休み。明後日からVRテストというのが僕の予定だ。矢澤コーチや本庄さんは明日からいろいろな折衝があるというから大変だ。VRテストはどれだけかかるかわからないけど終わってしまえば僕の仕事は八割型終わったと言える。僕の仕事は少ないのだ。
今の時間はだいたいおやつだろうか。おなかはかなり減っている。下に売店あったかな。部屋の冷蔵庫の中にはもちろんドリンクが入ってるけど下で買った方が安かったはず。下でも同じ値段だったらそのまま飲んじゃってもいいかな。
お金に関してはVRデバイスで払えるように……あれ? VRデバイスでは支払いの設定していたけどリンカーだとどうなんだろ。
「黒川。リンカーで支払いってできるの?」
『はい。すでに設定しております。バトラーの設定同様、口座から直接から引き落とすようになっております。それと、どうやらこのホテルではセカンドマネーが使えるようです』
「セカンドマネーってSWのセカンドマネー?」
『はい』
SMはSWで使われる仮想通貨だ。SW内の経済と現実世界の為替によって各国からの変換効率が変動していて世界一安全な通貨とも呼ばれている。世界一安全とくれば投資目的で使うものもいる。ただ利益率とその手間を考えるとそれほどのもうけは出ない仕組みになっているみたい。本屋に行くと主婦のへそくり術っていうタイトルの本にやり方がまとめられてたりする。
ただこのセカンドマネーにもいろいろと問題はあって現実世界で取り扱う店は少なかったはずだけど、さすが大きなホテルなだけある。僕たちが止まっているホテルはそんじょそこらの安ホテルではない。エントランスに入った時からわかっていたけどね。だからこそ、僕が一人部屋でいいのかと考えていたんだけど。
セカンドマネーが使えるならセカンドマネーにして払ってしまってもいいかな。どちらにしてもリンカーからの支払いだから手間は変わらないけど。どっちも黒川がやってくれるから。
『今の状況ですとSMからの支払いの方がお得です』
「そうなの? 今僕ってSM持ってたっけ?」
『はい。日本円での支払いだと手数料を取られるので』
「あ、そっか」
『若のSM残高は三百SMほどですね』
「三百かー。ちょっと少ないかなぁ」
SW全然行かないからSMも使わないのだ。
「いくらぐらい替えておいた方がいいかな? うーん。一万円とかでいいかな」
『実際に使う際に私が交換することもできますが?』
「それだと時間掛からない?」
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