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2.墓守りのアトネ
⑦
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夜になると、眠るマーリンを月明かりが照らした。
「……どうして俺たちはここなんですか」
マーリンの墓は狙われていない、と結論づけられたはずだ。
「狙いはマーリンの墓だ」
「え? 」
「間違いない。アトネも狙われている」
「えぇ?! 危ないじゃないですか!
すぐにアトネさんに! 」
「落ち着いて。アトネも知ってる」
「アトネさん、怪我させられたんでしょ! 」
オズは焦るサルモネを見下ろして、唇を尖らせた。
「この前のことは不注意だと言ったろ。アトネがやられるはずない」
「でも……」
「アトネは、君よりもずっと強い」
大きな斧を背負ったアトネは確かに強そうだった。だが、敵の侵入口にアトネを配置するのは如何なものかとサルモネは顔を歪めた。
不穏な空気が肌を刺してゆく。
「空気が変わったの分かる? 」
肌が電気に触れた時のようにピリピリする。サルモネはコクコクと頷くと、オズは上を指さした。
「え? 」
上を向くと黒い物体が二つ、ビュンッと勢いよく落ちてきた。スタッと上手く着地した真っ黒な猫のような何か。
「ひッ!? 」
「キャスパリーグだな」
月明かりに照らされるように二体はジリジリと近づいて来る。
巨体の猫の解像度が増す度にサルモネは足が震えが大きくなる。ひとかきで身体が引き裂かれそうな鋭い爪。
「ヴヴゥ……」
唾液が口から漏れ、獲物を見るような目で二人を見る。
どうしよう、どうしようどうしよう。
オズが隣にいるというのに堂々と立っていられない。情けなく瞳が震える。
隣のオズは揃っていた足を開き、腰を軽く沈めた。その動きは一瞬で、右腕が勢いよく突き出された時にはあっという間に二体は遥か向こうに寝転がっていた。
何があったのか分からず、目を見開いたサルモネの背中にオズは回った。
「さ、実践練習。やってみよう」
「え?! 嘘でしょ?!! 」
「大丈夫大丈夫」
大丈夫なはずが無い。サルモネは背後にいるオズにもたれ掛かるように後退りした。
もたもたしている内にキャスパリーグは起き上がり、「ナ゙ァァァ」と野太い声を上げた。
「手を前に」
言われた通りにサルモネは腕を伸ばした。
「集中」
ぎゅうっと目を瞑る。
「唱えて」
「グリエ! 」
腹から声を出してカッと目を開くと、火柱が上に立ち上っていた。
「ちがぁう!! 何で上?! 」
サルモネは慌てて火を消して手のひらを胸の前で重ねた。
「考えたら分かるでしょ?! 判断ミスは死ぬ! 」
「いや、だって、上に出すやり方しか教わってないです」
「あぁもう! 上なんていつ使うんだよ! 」
ギャイギャイと騒いでいるうちにキャスパリーグは地面に爪を食い込ませながら突進してきた。
「サルモネ! 」
「う、うわぁぁぁ!!! 」
なるようになれ! と両腕をキャスパリーグに向かって伸ばして叫んだ。
その時信じられないことに、グワッと火炎放射器のような勢いで炎が飛び出したのだ。
炎の飛び出す勢いで尻もちをついたサルモネは「え? 」と横たわるキャスパリーグを見つめた。苦しそうにもがき震えている。
「……え? 」
驚いてオズを見上げるが「やれば出来るね」と笑うだけだ。
「あとは僕がやるよ」
オズは二体に近づいていくと、手のひらをかざした。二体が起き上がろうと身体を起こした所で一瞬にして消えた。
「消えた…… 」
「元の場所に帰しただけ。 火傷を負ってるみたいだし、恐らく死ぬだろうからもうここを襲っては来ない」
「……どうして俺たちはここなんですか」
マーリンの墓は狙われていない、と結論づけられたはずだ。
「狙いはマーリンの墓だ」
「え? 」
「間違いない。アトネも狙われている」
「えぇ?! 危ないじゃないですか!
すぐにアトネさんに! 」
「落ち着いて。アトネも知ってる」
「アトネさん、怪我させられたんでしょ! 」
オズは焦るサルモネを見下ろして、唇を尖らせた。
「この前のことは不注意だと言ったろ。アトネがやられるはずない」
「でも……」
「アトネは、君よりもずっと強い」
大きな斧を背負ったアトネは確かに強そうだった。だが、敵の侵入口にアトネを配置するのは如何なものかとサルモネは顔を歪めた。
不穏な空気が肌を刺してゆく。
「空気が変わったの分かる? 」
肌が電気に触れた時のようにピリピリする。サルモネはコクコクと頷くと、オズは上を指さした。
「え? 」
上を向くと黒い物体が二つ、ビュンッと勢いよく落ちてきた。スタッと上手く着地した真っ黒な猫のような何か。
「ひッ!? 」
「キャスパリーグだな」
月明かりに照らされるように二体はジリジリと近づいて来る。
巨体の猫の解像度が増す度にサルモネは足が震えが大きくなる。ひとかきで身体が引き裂かれそうな鋭い爪。
「ヴヴゥ……」
唾液が口から漏れ、獲物を見るような目で二人を見る。
どうしよう、どうしようどうしよう。
オズが隣にいるというのに堂々と立っていられない。情けなく瞳が震える。
隣のオズは揃っていた足を開き、腰を軽く沈めた。その動きは一瞬で、右腕が勢いよく突き出された時にはあっという間に二体は遥か向こうに寝転がっていた。
何があったのか分からず、目を見開いたサルモネの背中にオズは回った。
「さ、実践練習。やってみよう」
「え?! 嘘でしょ?!! 」
「大丈夫大丈夫」
大丈夫なはずが無い。サルモネは背後にいるオズにもたれ掛かるように後退りした。
もたもたしている内にキャスパリーグは起き上がり、「ナ゙ァァァ」と野太い声を上げた。
「手を前に」
言われた通りにサルモネは腕を伸ばした。
「集中」
ぎゅうっと目を瞑る。
「唱えて」
「グリエ! 」
腹から声を出してカッと目を開くと、火柱が上に立ち上っていた。
「ちがぁう!! 何で上?! 」
サルモネは慌てて火を消して手のひらを胸の前で重ねた。
「考えたら分かるでしょ?! 判断ミスは死ぬ! 」
「いや、だって、上に出すやり方しか教わってないです」
「あぁもう! 上なんていつ使うんだよ! 」
ギャイギャイと騒いでいるうちにキャスパリーグは地面に爪を食い込ませながら突進してきた。
「サルモネ! 」
「う、うわぁぁぁ!!! 」
なるようになれ! と両腕をキャスパリーグに向かって伸ばして叫んだ。
その時信じられないことに、グワッと火炎放射器のような勢いで炎が飛び出したのだ。
炎の飛び出す勢いで尻もちをついたサルモネは「え? 」と横たわるキャスパリーグを見つめた。苦しそうにもがき震えている。
「……え? 」
驚いてオズを見上げるが「やれば出来るね」と笑うだけだ。
「あとは僕がやるよ」
オズは二体に近づいていくと、手のひらをかざした。二体が起き上がろうと身体を起こした所で一瞬にして消えた。
「消えた…… 」
「元の場所に帰しただけ。 火傷を負ってるみたいだし、恐らく死ぬだろうからもうここを襲っては来ない」
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