CONFLICT

スカーレット

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プロローグ

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楓の毎日は大変だ。
何が大変かって、生きること、そのものが大変。言葉そのままの意味である。
楓は、人の心が読める能力を持っている。
例えばね、先生が入ってきて、一言。
「授業始めます」
ただ、この時の先生の思いは一言には収まらない。
『はぁ、またこいつらに教えなきゃいけないのか。寝るから授業するだけ無駄なんだよな。マジで帰りてぇ。いつも一番後ろに座ってる奴、下向いて肩動かしてるから、携帯いじってんだろうなぁ。あーあ、俺だって彼女に今夜の誘いしてぇんだよ。お前らだけずるいんだよ、何人の授業で勝手なことしてんだよ--』
楓には、それらが全て筒抜けなのだ。
聞きたくなくても、聞こえてきてしまう。耳を塞いでも、全く意味がない。
毎日舌打ちものだし、生きるのが辛くなる。
「ねぇねぇ、今日さ、家行っていい?」
楓の斜め後ろの席に座っている、名前の分からない女子学生が隣に座っている金髪の男に言った。
目的は分かっている。てか、その発言だけで下心が丸見えだが、心の中はもっとやばい。
楓は吐き気がした。出来れば、吐くのは自分の机の上ではなく、女子学生の顔に吐きたい。
そんなこんなで、毎日が大変だ。ただ、このクラスで1人だけ、全く分からない謎の人物がいる。
楓は、チラッと横を見る。正確には、隣の隣の、そのまた隣に座っている1人の男子学生だ。
名前は、忘れた。というか、聞いてない。
仲の良い学生がいないのか、このクラスにいないだけなのか、授業が終わったら、すぐにいなくなってしまうし、この授業の時以外に見かけたことは、今までない。楓は他の授業も数々取っているが、見かけないところを見ると、同じ学部でないのかもしれない。
あの人、なんて名前なんだろう。なんで心が読めないのよ。どうなってんの?
そんなふうに思って、一日がすぎてしまう。
考えているうちに、授業が終わり、皆散り散りになっていく。
ある者は次の授業、ある者は部活へ--
行き場所も筒抜けだ。
楓は教室を出て、急ぎ足で校舎を離れる。そして、少し離れた位置にある、プレハブへと足を運ぶ。
三階建てのうち、一階角部屋が、楓が入るサークル『Help』の活動部屋になっている。
その中に、楓は逃げるように入っていった。
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