ニイノ カケルの巻き込まれ神話大戦

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北欧の章

北欧の章-10…雪晴れし刻

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「つまり…お二人は元は一人だった、と…?」
想像もつかないような話を淡々とされて混乱の波に身を置いている中で、何とか理解出来たことを一つだけ翔は問いかけると、それに二人はシンプルに頷いた。
「やっぱり、ロキさんがやったなんて全く信じられないや…」
彼女たちの予想のついていた回答を受けて、改めて翔の知っているロキとイズンとイズーナの過去にあったことの引き金となった彼との姿の違いに戸惑いを隠せずにいる。そんな様子の彼を興味無さげに焼いた肉を食べながら眺めているイズンと、最早彼の方を見るのをやめて自身の弓の手入れを丁寧に始めるイズーナに何かしらの理解の諦めを感じていると、突然に空腹感が彼の腹に直撃して、グルルル…というはしたない音を3人だけの空間に響かせた。無意識的に鳴いた腹の虫を恨めしく感じていると、生きている証を見せつけないような瞳で此方を見ていたイズンが、焚き火の近くに立ててあった肉を一切れ分だけ取ってくる。
「…もしかして、それって……!」
此方へとくれるのか、と淡い期待を抱いた翔と肉とを交互に見た後に彼女は肉へと躊躇いもなく齧り付く。その残酷な光景に彼は思わずその場へと崩れ落ちたくなってしまった。しかし、
「……食べたいなら、勝手にすれば…」
何気なくイズンがポツリと呟き、イズーナがそれにこくん、と一つだけ小さく頷く。その時の翔の心情は恐らく誰にでも理解がつくであろう…本当にありがとうございます、と礼を述べて焚き火の前にジュージューと芳ばしく焼けている肉を一つ取って手を合わせてからいただく。
「…っ!とても美味しいです!」
「…何だか犬みたいね」
肉の味を噛みしめて喜ぶ少年を見つめて何処か呆れたように、だが言葉に感情は灯らずにイズーナが呟く…と
「…雪が晴れたわ、イズーナ」
いつの間に肉を食べ終わっていたのか、外の様子を見に出ていたイズンがやはり感情を表に出さずに言い放つ。すると、その一言を待っていた…と言わんばかりの速度で弓や矢の修繕をしていた彼女は反応し、そそくさと準備を始める。その支度の手際の良さに驚きながらも、翔は何が起ころうとしているのかを推測する。彼女たちが此処で翔と共にのんびりしていたのは恐らくこの豪雪をやり過ごすため、そして突然の吹雪に見舞われるまで一体彼女たちは何をしていたのだろうか…?肉が焼いてあったから普通に狩りをしていたのかもしれない、または単純に散歩中であったのかもしれない…しかし先ほどのロキ、という単語を使った際の二人の食いつき方を見るにイズンとイズーナがしようとしていた事は……
「雪が止んだらしいから、さっさと出ることをオススメするわ」
考えを張り巡らせている途中でイズーナによって一旦意識が別へと向き、どうしてもさっきの状態に戻せずに思いだそうとするのを一回諦め、代わりに
「あ……その、肉…ごちそうさまでした」
食べ物を貰ったお礼をしなくてはと思い、洞窟を足早に去って行こうとする二人の背中に向けて翔は頭を下げる。それを聞いてかどうかは知らないが、イズンは右手を、イズーナは左手を掲げて振って洞窟から出ていった。
「それじゃあ、僕も出るかな…」
火の始末をしながら、こんなところでうかうかしていられない…と立ち上がる。彼は一刻も早く『鍵』を5つ手に入れて元の世界に帰りたいのだ、善は急げという至言を念頭に置いて彼の歩は洞窟の外へと向かう。翔へと容赦なく牙を向いていた荒れた空がまるで夢であったかのような快晴具合だ。太陽が一面銀世界のミッドガルを心地よく照らし、雪からの反射光を少し眩しがりながら元々進もうとしていた目的地をその場で見渡して見る、すると幸いにも此処からあまり遠くないところに見覚えある城壁が並んでいる。
「…っ、あった!」 
今度は何も知らなかった数時間前の二の舞になるまいと、近くにあった木の棒を地面に突き刺して抜きながら彼は進んでいった……のだが、
「…だよねぇ…」
城壁があるということは街にいる住民達を外の脅威から守るためであり、そうなると当然怪しい者か否かを見分ける門番が必要となる。彼らは一目見ただけでも分かるような高価な重装備に身を包んでいて、そのうえ、翔との距離もそうそう近くないはずなのに街を囲む重厚な壁に佇む二人からは物凄い力を感じた。そしてこの寒さの中でお気に入りのパーカーに部屋着のハーフパンツ、という今の服装で門番に怪しまれない自信が持てるわけがなかった。恐らく正面突破は厳しいであろう、ましてや強行突破を謀ろう…という命知らずな計画を実行する気は微塵も起きなかった。だが、中に入ることが出来なければ、『鍵』と呼ばれるものについての知識を得るチャンスを得られず、事を進展させることはかなり困難となっていくだろう……などと考えているうちに有能な彼らは不審な何かが迫ってきているのを感知したらしい、自分達にとって毒なものは真っ先に排除する…と言いたげな涼しい仕事人ヅラで此方へと向かってくる。このままじゃあどう考えてもゲームオーバーだ、と口の中で毒づいてこの場から離れることを急速に決める。正直逃げ切れるかかなり怪しいが、無様に捕まるよりはマシである。どうか逃げきれますように…と、心中で祈りつつ茶色の壁へと背を向けようとしたその時であった。
「……痛ったぁぁ?!」
突如背中に感じたのは背骨が逝くかと思ったほどの強い衝撃と正体不明のどこか魅力的な弾力、その直後には白い服に包まれた華奢な腕が翔の身体へと回されている。あまりにも意味不明な犯人を確かめるべく、痛む首を回して振り向くと…
「お兄ちゃん、やっと見つけたよ!」
金髪で、いかにも人懐っこさそうな顔立ちの見知らぬ娘にいきなり兄呼ばわりされていた。
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