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過去
5 から回る歯車と、非情な命令
前話に少々付け足し部分があります。見込みが甘くて申し訳ないです……。
**********
狂気に満ちた宴が終わったのは、それから数日をも経った時だった。オールターはその間、一切ツェーダンを離そうとしないどころか、他人の姿を己の視界に入れる事すら疎うた。元凶たるグランは勿論、使用人達も困惑気味に世話をしようと果敢に寝室に歩み寄ったが、濃密な殺気に手を出す事が出来ずに時ばかりが過ぎていった。
オールターはふと、動きを止めた。夢から醒めたかのようにあたりを見回すと、爽やかな日差しが差し込み、鳥たちが涼やかに鳴き声を上げていた。ついと視線を己の下に落とすと、そこにはクッタリとした白い体が。その体は疲労を色濃く残し、病気かと見紛う程の紅い印に覆われていた。歯形までもが至る所に見受けられ、どれ程荒々しく犯されたのかが見て取れる。
気を失って一切反応を示さないツェーダンに、オールターは一瞬瞳を揺らした。そっと、震える指先を細い首に触れさせると、か弱い脈がツェーダンの命が尽きていない事を知らせてきた。頭に浮かんだ可能性と、臓腑まで凍り付きそうな恐怖に支配されていたオールター。辛うじてであるが生存を伝えるその印に、小さく息をついたかと思うと、自嘲するように嗤った。
離れたくない、と悲鳴を上げる心に気付いていないフリをして、静かに寝台を降りた。そして、そのまま寝室の扉を開けると、リビングにいた誰かが勢いよく振り返った。
「!オールターか」
「……何をしている」
そこに居たのはグランだった。顔色が悪く、今にも死にそうな顔でオールターを出迎えた彼は、凄い勢いで駆け寄ってきたかと思うと、そのまま脇をすり抜けて寝室に駆け込もうとした。反射的にその腕を掴んだオールターが容赦なくねじ伏せる。わずかに開いた扉の前で引き倒されたグランは、それでもどうにか寝室の中を確認しようとするかのようにもがいた。
「何を、している……!」
「っ!落ち着け!まずはダンの無事を確認させろ!」
完全に瞳孔が開いた状態のオールターに気付き、苦しい息の下でグランが主張する。悲鳴にも似たツェーダンの声と、慟哭にも似たオールターの憎しみに満ちた唸り声が何日もの間、寝室から漏れ聞こえていた。どうにか水分と食事をとらせることには成功していたが、それにしてもツェーダンの容態が気になる、とグランは後悔に襲われつつ考えていた。
「ああもう……!会わせない限り先に進まないのに、会わせたら問題発生が確定してるって、詰み過ぎだろう!しかも話をしろって言ったのに完全スルーで大暴走!なんて俺不憫!」
分かり切っていたとは言え、オールターの暴走具合が予想を超えていた。話をするために連れてきたというのに、出来ていないであろうことは見なくてもわかる。これでこのままツェーダンが壊れたらチェックメイトだ、と保護を優先しようとしたことが裏目に出た。
ちょっと考えればわかる事なのに、動揺し過ぎだ俺、と自身を罵倒しつつグランはオールターを見上げる。唯々敵意と警戒をあらわにしているオールターは、完全に番に手を出される事を嫌がり、巣に踏み込まれるのを拒絶する雄そのものだ。まずはこっちからか、と痛む体を宥めつつ、優先順位を更新する。
「オールター!俺だ、グランだ!一旦引く!だから手を離せ!俺はお前たちに危害を加えるつもりはない!」
「……」
体から力を抜き、オールターが正気に戻るのを待つ。番を得た獣人がこの様な行動をとる事は珍しいことではないので、セオリー通りに行動する。まずは己が敵でない事を証明するために抵抗しない。番に手を出すつもりがないと行動で証明する。番というくくりにするにはコイツ等波乱万丈すぎるだろう、と内心現実逃避しながらじっとしていると、漸く頭が冷えたらしい。徐々にオールターの腕から力が抜けていく。
「……何を、している」
「ああもうそのセリフ三回目。その他の言葉を吐いてくれチクショウ」
絶対零度の視線を向けられ、グランはぐったりと頭を床に付けた。ついでに話せと軽く腕を揺らすと、一瞬力を込められたがゆっくりと放された。しびれる腕を振るいながら起き上がると、オールターは寝室の扉の前で腕組みをして仁王立ちをしていた。
「あー。一応聞くが、そこに陣取っているその心は?」
「……。何を、しているのかと聞いている。質問しているのはこちらだ」
一縷の希望を胸に聞いてみるが、がりっという音がオールターの口の中から聞こえただけだった。ひび割れ揺れる心が辛うじて出した答えは、ただただツェーダンを逃がさないように、手元に置けるようにすることだけのようだ。強引に話を逸らす王に、グランはため息をついて諦めた。まだ時間はある。
「んなの決まってるだろ。勢いよく劇薬を放り込んだらあまりにも酷い反応が起きたんで、様子を見に来た。という訳で、とりあえずダンを出せ」
「断る」
「俺が連れてきたんだ。逃がしゃしねぇよ。聞きたいこともある。それとも何か、アイツがぶっ壊れても……死んでもいいってか?」
「……アレは俺のもの。俺の人形だ。何をしようが俺の」
「アァ?本気で言ってるのかてめぇ」
ギロリと睨みつけると、オールターの瞳が微かに揺れ伏せられる。本人も無意識の動きだが、グランはその反応を見られただけでも満足だった。もう一押し、そう思ったその時だった。
「グラン。いい加減にしないとまずいですよ。あの子の存在をいつまでも隠して置けませんし、これからどうするか……対応を……考えないと……」
「……何用だアクア」
ノックもせずに入ってきたのは、アクア。急いでいたようで、手元の紙束を覗き込みながら滑り込ん出来た彼は、それゆえかオールターに気付くことなく話をしてしまった。いるとは思わなかったとか、それどころではなかったとか、動転していたとか、色々言い訳があるが、それでも失策だった。あちゃーと顔を覆っているグランと、顔を上げた瞬間に青ざめ珍しく視線を泳がせている二人に、オールターは目を細めた。
「あの子……?一体何の話をしている?」
状況からツェーダンに何等かの関りがあると踏んだのか、怖ろしい圧力と共にオールターがにじり寄ってくる。番に関しては勘が働くのが獣人だけど、その本能今いらない!と内心悲鳴を上げる二人。必死に言い訳を考えるが、とことん彼らにはツキが無いらしい。じりじりと後ずさっていたアクアが、絨毯の端の飾りに足を取られてひっくり返ったのだ。
「うわっ?!」
「ちょ、アクア?!」
悲鳴を上げる彼を慌ててグランが抱き起す。抱えていた書類が勢いよく巻き上げられ、周囲に散らばる。手を貸すついでにふとその書類を見て、グランは固まった。直前までそれを見ていたアクアも、状況を察し今にも死にそうな顔をしている。オールターは固まる二人を他所に、目の前をユラユラと舞う紙をひっつかみ、さっと目を通し。
音を立てて、固まった。
「グラン」
「あー……あはは、えーと、それはだな、あはははは」
「どういうことだ」
もはや笑うしかないグランに突き付けられた紙。そこに書かれていたのは、リィという名の少年の調査書。そこに記載されていた"ツェーダンの子である可能性"という記載に、オールターの心が音を立ててひび割れていくのがアクアにもわかった。タイミングが悪すぎる、と呻くアクアの隣で、手遅れになる前にいっそ、と覚悟を決めたグラン。口を開いたその瞬間。
「殺せ」
「は?」
「殺せっ!あいつの、ツェルの子だと?!殺せ!そんなもの許すか!八つ裂きにして捨てろ!」
「ちょ、え、は……オールター?!」
冷酷無慈悲と言われようと、その実決して情にかられた判断をしない冷徹な王。そのオールターが話も聞かずに幼子を殺せと命じている。どこの馬の骨とも知れない者にツェーダンを奪われた、その想いがオールターを暴走させている。口では番ではない、と言い張るオールターだが、その実、行動は全てツェーダンが番であると主張している。
思わぬ事態に言葉もないグランに、血走った目を向けたオールターが昏く嗤う。
「殺せ。情けなど掛けるなよ?ああそうだ、首を俺の元に持ってこい。そうすれば確実に殺したと認めてやる」
「おい待て、お前、自分が何言ってるのか分かってるのか?!というか、もしダンの子だったらあるいは!」
「黙れ!命令が聞けないのか!」
「落ち着いてください二人とも!何してるんですか!」
もはや何処を見ているとも知れない瞳でグランに命じるオールター。撤回しろと必死に言い募るグランだが、ぐっと胸倉を掴まれ息に詰まる。慌ててアクアが腕にしがみ付くが、ピクリとも動かせない。いっそツェーダンの子ではない、と一旦言う方がいいかと考えたその時だった。クツクツと嗤ったオールターがグランに囁く。
「そのガキの首を持ってこい。さもなくば、お前の家族親族一人ずつ反逆罪をでっちあげてでも消す」
「?!」
絶句する二人を乱雑に振り払ったオールターは、そのまま感情を宿さない瞳で二人を一瞥し寝室へと消えていく。その背は、本気だった。彼が実行しようとすれば本当に実現するだろう。青ざめた二人は、呻くことしか出来なかった。
「あーあー。もう、暴走してくれるぜチクショウ……」
「すみません……!私のせいで」
「いやアクアのせいじゃねぇさ。そもそもダンのヤツが大問題を持ち込んでくれやがったのが原因だ。まぁ、これで諸々猶予はなくなったな。ただでさえほとんどない猶予が」
己を責めるアクアに対し、タイミングの悪さを呪うしかないグラン。どうしたものかと思案しつつため息をかみ殺す。最終手段を取る事を考えないと、とグランは覚悟する。
寝室の中から微かな悲鳴と低い声が漏れ聞こえてくる。しかし、彼らにはどうしようもなかった。くっと扉を睨みつけた彼らは、静かに踵を返した。本当はツェーダンに聴取をしつつ話を進めたかったがそうともいかない。二人に出来るのは頭を切り替えて別方向から動き、最上の結果をもぎ取る事。
これ以上酷い状況にはならないさ、と強引に思う事しか出来なかった。
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狂気に満ちた宴が終わったのは、それから数日をも経った時だった。オールターはその間、一切ツェーダンを離そうとしないどころか、他人の姿を己の視界に入れる事すら疎うた。元凶たるグランは勿論、使用人達も困惑気味に世話をしようと果敢に寝室に歩み寄ったが、濃密な殺気に手を出す事が出来ずに時ばかりが過ぎていった。
オールターはふと、動きを止めた。夢から醒めたかのようにあたりを見回すと、爽やかな日差しが差し込み、鳥たちが涼やかに鳴き声を上げていた。ついと視線を己の下に落とすと、そこにはクッタリとした白い体が。その体は疲労を色濃く残し、病気かと見紛う程の紅い印に覆われていた。歯形までもが至る所に見受けられ、どれ程荒々しく犯されたのかが見て取れる。
気を失って一切反応を示さないツェーダンに、オールターは一瞬瞳を揺らした。そっと、震える指先を細い首に触れさせると、か弱い脈がツェーダンの命が尽きていない事を知らせてきた。頭に浮かんだ可能性と、臓腑まで凍り付きそうな恐怖に支配されていたオールター。辛うじてであるが生存を伝えるその印に、小さく息をついたかと思うと、自嘲するように嗤った。
離れたくない、と悲鳴を上げる心に気付いていないフリをして、静かに寝台を降りた。そして、そのまま寝室の扉を開けると、リビングにいた誰かが勢いよく振り返った。
「!オールターか」
「……何をしている」
そこに居たのはグランだった。顔色が悪く、今にも死にそうな顔でオールターを出迎えた彼は、凄い勢いで駆け寄ってきたかと思うと、そのまま脇をすり抜けて寝室に駆け込もうとした。反射的にその腕を掴んだオールターが容赦なくねじ伏せる。わずかに開いた扉の前で引き倒されたグランは、それでもどうにか寝室の中を確認しようとするかのようにもがいた。
「何を、している……!」
「っ!落ち着け!まずはダンの無事を確認させろ!」
完全に瞳孔が開いた状態のオールターに気付き、苦しい息の下でグランが主張する。悲鳴にも似たツェーダンの声と、慟哭にも似たオールターの憎しみに満ちた唸り声が何日もの間、寝室から漏れ聞こえていた。どうにか水分と食事をとらせることには成功していたが、それにしてもツェーダンの容態が気になる、とグランは後悔に襲われつつ考えていた。
「ああもう……!会わせない限り先に進まないのに、会わせたら問題発生が確定してるって、詰み過ぎだろう!しかも話をしろって言ったのに完全スルーで大暴走!なんて俺不憫!」
分かり切っていたとは言え、オールターの暴走具合が予想を超えていた。話をするために連れてきたというのに、出来ていないであろうことは見なくてもわかる。これでこのままツェーダンが壊れたらチェックメイトだ、と保護を優先しようとしたことが裏目に出た。
ちょっと考えればわかる事なのに、動揺し過ぎだ俺、と自身を罵倒しつつグランはオールターを見上げる。唯々敵意と警戒をあらわにしているオールターは、完全に番に手を出される事を嫌がり、巣に踏み込まれるのを拒絶する雄そのものだ。まずはこっちからか、と痛む体を宥めつつ、優先順位を更新する。
「オールター!俺だ、グランだ!一旦引く!だから手を離せ!俺はお前たちに危害を加えるつもりはない!」
「……」
体から力を抜き、オールターが正気に戻るのを待つ。番を得た獣人がこの様な行動をとる事は珍しいことではないので、セオリー通りに行動する。まずは己が敵でない事を証明するために抵抗しない。番に手を出すつもりがないと行動で証明する。番というくくりにするにはコイツ等波乱万丈すぎるだろう、と内心現実逃避しながらじっとしていると、漸く頭が冷えたらしい。徐々にオールターの腕から力が抜けていく。
「……何を、している」
「ああもうそのセリフ三回目。その他の言葉を吐いてくれチクショウ」
絶対零度の視線を向けられ、グランはぐったりと頭を床に付けた。ついでに話せと軽く腕を揺らすと、一瞬力を込められたがゆっくりと放された。しびれる腕を振るいながら起き上がると、オールターは寝室の扉の前で腕組みをして仁王立ちをしていた。
「あー。一応聞くが、そこに陣取っているその心は?」
「……。何を、しているのかと聞いている。質問しているのはこちらだ」
一縷の希望を胸に聞いてみるが、がりっという音がオールターの口の中から聞こえただけだった。ひび割れ揺れる心が辛うじて出した答えは、ただただツェーダンを逃がさないように、手元に置けるようにすることだけのようだ。強引に話を逸らす王に、グランはため息をついて諦めた。まだ時間はある。
「んなの決まってるだろ。勢いよく劇薬を放り込んだらあまりにも酷い反応が起きたんで、様子を見に来た。という訳で、とりあえずダンを出せ」
「断る」
「俺が連れてきたんだ。逃がしゃしねぇよ。聞きたいこともある。それとも何か、アイツがぶっ壊れても……死んでもいいってか?」
「……アレは俺のもの。俺の人形だ。何をしようが俺の」
「アァ?本気で言ってるのかてめぇ」
ギロリと睨みつけると、オールターの瞳が微かに揺れ伏せられる。本人も無意識の動きだが、グランはその反応を見られただけでも満足だった。もう一押し、そう思ったその時だった。
「グラン。いい加減にしないとまずいですよ。あの子の存在をいつまでも隠して置けませんし、これからどうするか……対応を……考えないと……」
「……何用だアクア」
ノックもせずに入ってきたのは、アクア。急いでいたようで、手元の紙束を覗き込みながら滑り込ん出来た彼は、それゆえかオールターに気付くことなく話をしてしまった。いるとは思わなかったとか、それどころではなかったとか、動転していたとか、色々言い訳があるが、それでも失策だった。あちゃーと顔を覆っているグランと、顔を上げた瞬間に青ざめ珍しく視線を泳がせている二人に、オールターは目を細めた。
「あの子……?一体何の話をしている?」
状況からツェーダンに何等かの関りがあると踏んだのか、怖ろしい圧力と共にオールターがにじり寄ってくる。番に関しては勘が働くのが獣人だけど、その本能今いらない!と内心悲鳴を上げる二人。必死に言い訳を考えるが、とことん彼らにはツキが無いらしい。じりじりと後ずさっていたアクアが、絨毯の端の飾りに足を取られてひっくり返ったのだ。
「うわっ?!」
「ちょ、アクア?!」
悲鳴を上げる彼を慌ててグランが抱き起す。抱えていた書類が勢いよく巻き上げられ、周囲に散らばる。手を貸すついでにふとその書類を見て、グランは固まった。直前までそれを見ていたアクアも、状況を察し今にも死にそうな顔をしている。オールターは固まる二人を他所に、目の前をユラユラと舞う紙をひっつかみ、さっと目を通し。
音を立てて、固まった。
「グラン」
「あー……あはは、えーと、それはだな、あはははは」
「どういうことだ」
もはや笑うしかないグランに突き付けられた紙。そこに書かれていたのは、リィという名の少年の調査書。そこに記載されていた"ツェーダンの子である可能性"という記載に、オールターの心が音を立ててひび割れていくのがアクアにもわかった。タイミングが悪すぎる、と呻くアクアの隣で、手遅れになる前にいっそ、と覚悟を決めたグラン。口を開いたその瞬間。
「殺せ」
「は?」
「殺せっ!あいつの、ツェルの子だと?!殺せ!そんなもの許すか!八つ裂きにして捨てろ!」
「ちょ、え、は……オールター?!」
冷酷無慈悲と言われようと、その実決して情にかられた判断をしない冷徹な王。そのオールターが話も聞かずに幼子を殺せと命じている。どこの馬の骨とも知れない者にツェーダンを奪われた、その想いがオールターを暴走させている。口では番ではない、と言い張るオールターだが、その実、行動は全てツェーダンが番であると主張している。
思わぬ事態に言葉もないグランに、血走った目を向けたオールターが昏く嗤う。
「殺せ。情けなど掛けるなよ?ああそうだ、首を俺の元に持ってこい。そうすれば確実に殺したと認めてやる」
「おい待て、お前、自分が何言ってるのか分かってるのか?!というか、もしダンの子だったらあるいは!」
「黙れ!命令が聞けないのか!」
「落ち着いてください二人とも!何してるんですか!」
もはや何処を見ているとも知れない瞳でグランに命じるオールター。撤回しろと必死に言い募るグランだが、ぐっと胸倉を掴まれ息に詰まる。慌ててアクアが腕にしがみ付くが、ピクリとも動かせない。いっそツェーダンの子ではない、と一旦言う方がいいかと考えたその時だった。クツクツと嗤ったオールターがグランに囁く。
「そのガキの首を持ってこい。さもなくば、お前の家族親族一人ずつ反逆罪をでっちあげてでも消す」
「?!」
絶句する二人を乱雑に振り払ったオールターは、そのまま感情を宿さない瞳で二人を一瞥し寝室へと消えていく。その背は、本気だった。彼が実行しようとすれば本当に実現するだろう。青ざめた二人は、呻くことしか出来なかった。
「あーあー。もう、暴走してくれるぜチクショウ……」
「すみません……!私のせいで」
「いやアクアのせいじゃねぇさ。そもそもダンのヤツが大問題を持ち込んでくれやがったのが原因だ。まぁ、これで諸々猶予はなくなったな。ただでさえほとんどない猶予が」
己を責めるアクアに対し、タイミングの悪さを呪うしかないグラン。どうしたものかと思案しつつため息をかみ殺す。最終手段を取る事を考えないと、とグランは覚悟する。
寝室の中から微かな悲鳴と低い声が漏れ聞こえてくる。しかし、彼らにはどうしようもなかった。くっと扉を睨みつけた彼らは、静かに踵を返した。本当はツェーダンに聴取をしつつ話を進めたかったがそうともいかない。二人に出来るのは頭を切り替えて別方向から動き、最上の結果をもぎ取る事。
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