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同居生活の色
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結論から言えば、常盤は美大生だった。年齢は自己申告通り20歳。本籍を置いている場所もそう遠くない場所にあった。
どうしてそんな事分かったかというと。
「うぅ。酷いぃ。動物虐待、愛護団体に訴えてやるぅ」
「喧しい。野良猫だの、どこぞの道楽王子だの、果ては他星人だ?ふざけんのも大概にしやがれ不審者」
家猫志望の野良猫が転がり込んできて数日。のらりくらりと自己紹介を躱し続ける常盤にしびれを切らした青藍が荷物をひっくり返したのだ。にゃうにゃうと爪を叩てくる猫を引っぺがしてあらさがしした所、やはり身分証明書というものは持っており、学生証から諸々判明したのが先程のもの。しくしく泣いている猫は放置して、大学名を検索する。
「へぇ。地味に近い」
「でしょ!いやー、大学に近い所に住んでてくれるなんて、なんて有難い」
「だまれ居候猫」
「そこは家猫、いや愛猫と」
「いけしゃあしゃあと」
ぴょん、と耳を立てて目を輝かせる常盤。先程のジメジメは何処へ行ったのやら。ずかずかと無遠慮に踏み込んでくる野良猫改め飼い猫に、頭が痛くなってくる。じっとりと見つめると常盤は首を傾げた。
「親は?」
「知ってる?野良子猫のうち、見捨てられる子って地味ぃに多いって知ってる?」
「……後見人は?大学に行ってるくらいだ。流石に戸籍位持ってるだろうし?住所的にも施設じゃないはずだ」
「あはは。頭のいい人は好き。一応後見人はいるよ。でも、成人してるし別に。で、戸籍だっけ?ちゃんとありますとも。施設育ちでもない幸運で幼気な子猫です」
「お前の何処が幼気な子猫なのやら。図太い成猫だろうに」
「お褒めに与り光栄ニャン」
複雑な家系である事を察し、必要事項だけ尋ねると、常盤はからりと笑った。これ以上は話してくれないだろう。そんな雰囲気を感じる。とりあえず、未成年誘拐にはならないだろう、と自分が犯罪者にならない最低限を確認し諦める事にする。
この年なら、多少の家事も出来るだろうし、いっその事家政婦――家政猫として扱う事に決め、段取りを決めた。
そして、すぐに後悔する事となった。
「で?たかがサラダで出血事件が起こり、レンジで温めようとして何故故障する事となり、炒め物で火災未遂事件で、干してある洗濯物は数が合わず、挙句は洗面所が泡だらけになってやがる」
「あははは。知識と実践は別物って事かな?」
一時間後。青藍は盛大に顔を引きつらせていた。結論。常盤には家事能力というものがさっぱり備わっていなかった。やっておけ、と指示したことが全くできていない。
「このご時世、ネットになんでもかいてあるだろう!」
「だよねぇ。僕もそう思ってネット先生にお世話になってその通りにやったのに、なぜかこうなった。なんでだろう?」
「知るか馬鹿猫!」
心底不思議そうな常盤に、思わず持っていたスマホを投げつけた青藍は責められまい。結局、その後、青藍監督の元に改めて家事を行う事になったのだが。
「おい馬鹿猫。俺が間違ってた。家を壊されたくないからお前は何もするな」
「おっかしいなぁ。何で?なんでできるの?」
「むしろ、どうして出来ないのかが謎だ」
頭を抱えてしゃがみ込む青藍。洗剤を睨みつけて心底不思議そうに首を傾げる常盤。最早手に負えない事が発覚。手順が間違っていないにも関わらず、なぜか失敗する。ここまでくると逆に才能を感じる、と青藍はぼやきつつ常盤に家事をさせない事を決意する。家がなくなるのは流石に困る、というどうしようもない理由だ。
「分った!世の中の人ってみんな超能力者なんだ!それで謎が解決……ってうわぁ?!」
「もう黙れ馬鹿猫……」
目をキラキラさせて叫んだ末に、常盤は床にまかれた洗剤に足を取られてすっ転ぶ。頓珍漢な台詞の末に、まるで漫画の様な光景。むしろお前が異星人だ、と青藍は一日のため息数の記録を更新した。常盤には、絵を描く以外の一切の才能をどこぞへと捨ててきたらしい。これからの生活を思って、青藍は魂を天へと飛ばした。
どうしてそんな事分かったかというと。
「うぅ。酷いぃ。動物虐待、愛護団体に訴えてやるぅ」
「喧しい。野良猫だの、どこぞの道楽王子だの、果ては他星人だ?ふざけんのも大概にしやがれ不審者」
家猫志望の野良猫が転がり込んできて数日。のらりくらりと自己紹介を躱し続ける常盤にしびれを切らした青藍が荷物をひっくり返したのだ。にゃうにゃうと爪を叩てくる猫を引っぺがしてあらさがしした所、やはり身分証明書というものは持っており、学生証から諸々判明したのが先程のもの。しくしく泣いている猫は放置して、大学名を検索する。
「へぇ。地味に近い」
「でしょ!いやー、大学に近い所に住んでてくれるなんて、なんて有難い」
「だまれ居候猫」
「そこは家猫、いや愛猫と」
「いけしゃあしゃあと」
ぴょん、と耳を立てて目を輝かせる常盤。先程のジメジメは何処へ行ったのやら。ずかずかと無遠慮に踏み込んでくる野良猫改め飼い猫に、頭が痛くなってくる。じっとりと見つめると常盤は首を傾げた。
「親は?」
「知ってる?野良子猫のうち、見捨てられる子って地味ぃに多いって知ってる?」
「……後見人は?大学に行ってるくらいだ。流石に戸籍位持ってるだろうし?住所的にも施設じゃないはずだ」
「あはは。頭のいい人は好き。一応後見人はいるよ。でも、成人してるし別に。で、戸籍だっけ?ちゃんとありますとも。施設育ちでもない幸運で幼気な子猫です」
「お前の何処が幼気な子猫なのやら。図太い成猫だろうに」
「お褒めに与り光栄ニャン」
複雑な家系である事を察し、必要事項だけ尋ねると、常盤はからりと笑った。これ以上は話してくれないだろう。そんな雰囲気を感じる。とりあえず、未成年誘拐にはならないだろう、と自分が犯罪者にならない最低限を確認し諦める事にする。
この年なら、多少の家事も出来るだろうし、いっその事家政婦――家政猫として扱う事に決め、段取りを決めた。
そして、すぐに後悔する事となった。
「で?たかがサラダで出血事件が起こり、レンジで温めようとして何故故障する事となり、炒め物で火災未遂事件で、干してある洗濯物は数が合わず、挙句は洗面所が泡だらけになってやがる」
「あははは。知識と実践は別物って事かな?」
一時間後。青藍は盛大に顔を引きつらせていた。結論。常盤には家事能力というものがさっぱり備わっていなかった。やっておけ、と指示したことが全くできていない。
「このご時世、ネットになんでもかいてあるだろう!」
「だよねぇ。僕もそう思ってネット先生にお世話になってその通りにやったのに、なぜかこうなった。なんでだろう?」
「知るか馬鹿猫!」
心底不思議そうな常盤に、思わず持っていたスマホを投げつけた青藍は責められまい。結局、その後、青藍監督の元に改めて家事を行う事になったのだが。
「おい馬鹿猫。俺が間違ってた。家を壊されたくないからお前は何もするな」
「おっかしいなぁ。何で?なんでできるの?」
「むしろ、どうして出来ないのかが謎だ」
頭を抱えてしゃがみ込む青藍。洗剤を睨みつけて心底不思議そうに首を傾げる常盤。最早手に負えない事が発覚。手順が間違っていないにも関わらず、なぜか失敗する。ここまでくると逆に才能を感じる、と青藍はぼやきつつ常盤に家事をさせない事を決意する。家がなくなるのは流石に困る、というどうしようもない理由だ。
「分った!世の中の人ってみんな超能力者なんだ!それで謎が解決……ってうわぁ?!」
「もう黙れ馬鹿猫……」
目をキラキラさせて叫んだ末に、常盤は床にまかれた洗剤に足を取られてすっ転ぶ。頓珍漢な台詞の末に、まるで漫画の様な光景。むしろお前が異星人だ、と青藍は一日のため息数の記録を更新した。常盤には、絵を描く以外の一切の才能をどこぞへと捨ててきたらしい。これからの生活を思って、青藍は魂を天へと飛ばした。
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