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第2話
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しかし、俺は決して諦めなかった。
本や人との会話から情報を集め、自分の病について調べ、少しでも手がかりを掴もうと必死だった。
いつものように図書館へ足を運び、資料に目を通していた時のことだった。
一人の少女と目が合った。
慌てて頭を下げると、彼女も同じように頭を下げてくれた。
なんとなく気まずい空気が流れている。けれど、逃げる理由もなかった。
「こ、こんにちは……。すいません、ずっと見てて……俺はラテルと言います」
そう声をかけると、彼女も少し緊張しながら返してきた。
「こ、こんにちは……。こちらこそ、じっと見つめてて……私はステラと言います。あなたのこと、ラテルって呼んでいいですか?」
「うん、もちろん。君のことも、ステラって呼んでいい?」
「うん。好きな呼び方で呼んで」
自然と笑みがこぼれる。
初対面なのに、どこか懐かしいような、不思議な安心感があった。
「えーと……君は、何を調べてたの?」
「私は薬草学のことを……。あなたは?」
その言葉に、思わず息をのむ。
「俺は……自分の病気の原因を。あと、治す方法を探してた」
「病気の原因……?」
「うん。ほら、少し前に流行った謎の病気、覚えてる? あのとき、俺もかかって……」
自分の話をするのが、こんなにも情けなく感じるなんて。
けれどステラは、まっすぐな目で話を聞いてくれた。
婚約者に裏切られたこと、周囲に見放されたこと……全部話した。
彼女の言葉は、そんな俺の心に静かに届いた。
「そんなの、あなたが悪いわけじゃないでしょう?」
「うん……わかってる。でも、どうしてもそう思ってしまうんだ」
自信を失った俺に、ステラは真剣な表情で尋ねてきた。
「何が、あなたのトラウマになってるの?」
「うーん……たぶん、病気も、婚約者に裏切られたことも……」
「だから、自分の病気の原因を調べてるの?」
「うん。そうなんだ」
それから、俺たちは一緒に調べ物をするようになった。
いくら探しても答えは出ず、半月が経っても進展はなかった。
心が折れそうになっていたある日、ステラが言った。
「ねぇ、他の病気も調べてみたらどうかな?」
「……なんでまた?」
「ほら、未知の病気って、直接調べるよりも、似た症状の病気や、既知のものから調べた方が糸口が見つかるかもしれないよ」
「……なるほど。確かに……」
「それにね、全く関係なさそうなところに答えがあったりもするから」
それからは、既知の病気や、薬草学、民間療法まで幅広く調べるようになった。
ステラは分厚い本を抱きしめた。
『東方薬草全書』と記されたその本は、表紙が古びていて、どこか神秘的な雰囲気をまとっていた。
「薬草学か……。もしかして、病に効く薬とかも?」
俺の問いに、ステラは少し目を伏せ、そして静かに頷いた。
「うん。家族がみんな薬師でね。だから、私も自然と興味を持ったの。……その病、まだ治ってないの?」
「……ああ。完治はしていない。医者からは、治る見込みはないって言われたよ」
その言葉に、ステラの表情がわずかに曇った。
だが、すぐに決意を固めたように俺を見つめ直す。
「よかったら……一緒に調べてみない? その病のこと。薬で少しでも楽になるかもしれないし……それに、私は放っておけないから」
静まり返った図書館に、ふと心の中で何かが音を立ててほどけたような気がした。
──新しい出会い、新しい希望。
それが、確かに芽生え始めていた。
本や人との会話から情報を集め、自分の病について調べ、少しでも手がかりを掴もうと必死だった。
いつものように図書館へ足を運び、資料に目を通していた時のことだった。
一人の少女と目が合った。
慌てて頭を下げると、彼女も同じように頭を下げてくれた。
なんとなく気まずい空気が流れている。けれど、逃げる理由もなかった。
「こ、こんにちは……。すいません、ずっと見てて……俺はラテルと言います」
そう声をかけると、彼女も少し緊張しながら返してきた。
「こ、こんにちは……。こちらこそ、じっと見つめてて……私はステラと言います。あなたのこと、ラテルって呼んでいいですか?」
「うん、もちろん。君のことも、ステラって呼んでいい?」
「うん。好きな呼び方で呼んで」
自然と笑みがこぼれる。
初対面なのに、どこか懐かしいような、不思議な安心感があった。
「えーと……君は、何を調べてたの?」
「私は薬草学のことを……。あなたは?」
その言葉に、思わず息をのむ。
「俺は……自分の病気の原因を。あと、治す方法を探してた」
「病気の原因……?」
「うん。ほら、少し前に流行った謎の病気、覚えてる? あのとき、俺もかかって……」
自分の話をするのが、こんなにも情けなく感じるなんて。
けれどステラは、まっすぐな目で話を聞いてくれた。
婚約者に裏切られたこと、周囲に見放されたこと……全部話した。
彼女の言葉は、そんな俺の心に静かに届いた。
「そんなの、あなたが悪いわけじゃないでしょう?」
「うん……わかってる。でも、どうしてもそう思ってしまうんだ」
自信を失った俺に、ステラは真剣な表情で尋ねてきた。
「何が、あなたのトラウマになってるの?」
「うーん……たぶん、病気も、婚約者に裏切られたことも……」
「だから、自分の病気の原因を調べてるの?」
「うん。そうなんだ」
それから、俺たちは一緒に調べ物をするようになった。
いくら探しても答えは出ず、半月が経っても進展はなかった。
心が折れそうになっていたある日、ステラが言った。
「ねぇ、他の病気も調べてみたらどうかな?」
「……なんでまた?」
「ほら、未知の病気って、直接調べるよりも、似た症状の病気や、既知のものから調べた方が糸口が見つかるかもしれないよ」
「……なるほど。確かに……」
「それにね、全く関係なさそうなところに答えがあったりもするから」
それからは、既知の病気や、薬草学、民間療法まで幅広く調べるようになった。
ステラは分厚い本を抱きしめた。
『東方薬草全書』と記されたその本は、表紙が古びていて、どこか神秘的な雰囲気をまとっていた。
「薬草学か……。もしかして、病に効く薬とかも?」
俺の問いに、ステラは少し目を伏せ、そして静かに頷いた。
「うん。家族がみんな薬師でね。だから、私も自然と興味を持ったの。……その病、まだ治ってないの?」
「……ああ。完治はしていない。医者からは、治る見込みはないって言われたよ」
その言葉に、ステラの表情がわずかに曇った。
だが、すぐに決意を固めたように俺を見つめ直す。
「よかったら……一緒に調べてみない? その病のこと。薬で少しでも楽になるかもしれないし……それに、私は放っておけないから」
静まり返った図書館に、ふと心の中で何かが音を立ててほどけたような気がした。
──新しい出会い、新しい希望。
それが、確かに芽生え始めていた。
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