4 / 6
第3話
しおりを挟む
俺とステラは、気づいたことや気になった点を互いに話し合いながら、地道な調査を続けていた。
そんなある日――調べ始めてから一か月ほど経ったころ、ステラがふと声を上げた。
「あっ、ラテル。この病気って……あなたが前にかかった病気に似てない?」
「えっ? どれが?」
ステラが持っていた本をのぞき込むと、彼女は少し迷った様子で指を差した。
「ほら、ここ……この症状、ほとんど一致してる気がするの」
確かに、発症の仕方や症状の進行、そして医師たちの対処法まで、俺の病とよく似ている。
「あぁ、確かに……。それじゃあ、まずはこの病気について詳しく調べてみよう」
俺がそう言うと、なぜかステラは驚いたように唖然としていた。
「……あれ? 何か変なこと言った?」
「ううん、そうじゃなくて……ラテルって、もっと落ち込んでるのかと思ってたから。こんなふうに前向きに言ってくれて、ちょっと安心した」
その言葉に、少し照れくさくなりながら、俺は話題を変えるように口を開いた。
「そういえば、俺の出身とか年齢って……気になる?」
ふとした静けさの中、そんな言葉が口をついて出た。
ステラは少し驚いたように目を瞬かせたが、やがて控えめに首を振った。
「うん……正直に言うと気になる。でも、ラテルの事情もあるし……」
その遠慮がちな優しさが、かえって胸にしみた。
「ご、ごめん……。言って、ステラに距離を取られるのが……怖かったんだ」
俺が本音を打ち明けると、ステラは少しだけ目を見開いて――それから、やさしく微笑んだ。
「ラテルが無理して話すことなんてないよ。言いたいときに、言いたい分だけでいいから」
その笑顔に、心の重りが少しだけ軽くなる気がした。
「……いや、今言うよ。俺の出身は、この地の領主の家。……とはいえ、次男だけど。年は、17歳」
それを聞いて、ステラは目を丸くしたが、すぐにふっと笑みを浮かべて言った。
「そっか。でも、それでラテルがラテルでなくなるわけじゃないよね?」
その言葉は、まるで魔法のように胸に沁みた。
「あ、ありがとう……。貴族だって知っても、態度を変えないでくれて」
「そんなこと、気にしてたの?」
「う、うん。今までの人たちは、俺が貴族って分かると、だいたい距離を取るから……。平民は貴族に逆らったら罰せられたりするし……」
「そ、そうなんだ。ここの貴族は、そういう人たちなんだね……」
ステラは少し驚きつつも、真剣に話を受け止めてくれた。
そのやり取りの中で、俺の中にあった「身分の壁」は、少しずつ崩れていった気がした。
そんなある日――調べ始めてから一か月ほど経ったころ、ステラがふと声を上げた。
「あっ、ラテル。この病気って……あなたが前にかかった病気に似てない?」
「えっ? どれが?」
ステラが持っていた本をのぞき込むと、彼女は少し迷った様子で指を差した。
「ほら、ここ……この症状、ほとんど一致してる気がするの」
確かに、発症の仕方や症状の進行、そして医師たちの対処法まで、俺の病とよく似ている。
「あぁ、確かに……。それじゃあ、まずはこの病気について詳しく調べてみよう」
俺がそう言うと、なぜかステラは驚いたように唖然としていた。
「……あれ? 何か変なこと言った?」
「ううん、そうじゃなくて……ラテルって、もっと落ち込んでるのかと思ってたから。こんなふうに前向きに言ってくれて、ちょっと安心した」
その言葉に、少し照れくさくなりながら、俺は話題を変えるように口を開いた。
「そういえば、俺の出身とか年齢って……気になる?」
ふとした静けさの中、そんな言葉が口をついて出た。
ステラは少し驚いたように目を瞬かせたが、やがて控えめに首を振った。
「うん……正直に言うと気になる。でも、ラテルの事情もあるし……」
その遠慮がちな優しさが、かえって胸にしみた。
「ご、ごめん……。言って、ステラに距離を取られるのが……怖かったんだ」
俺が本音を打ち明けると、ステラは少しだけ目を見開いて――それから、やさしく微笑んだ。
「ラテルが無理して話すことなんてないよ。言いたいときに、言いたい分だけでいいから」
その笑顔に、心の重りが少しだけ軽くなる気がした。
「……いや、今言うよ。俺の出身は、この地の領主の家。……とはいえ、次男だけど。年は、17歳」
それを聞いて、ステラは目を丸くしたが、すぐにふっと笑みを浮かべて言った。
「そっか。でも、それでラテルがラテルでなくなるわけじゃないよね?」
その言葉は、まるで魔法のように胸に沁みた。
「あ、ありがとう……。貴族だって知っても、態度を変えないでくれて」
「そんなこと、気にしてたの?」
「う、うん。今までの人たちは、俺が貴族って分かると、だいたい距離を取るから……。平民は貴族に逆らったら罰せられたりするし……」
「そ、そうなんだ。ここの貴族は、そういう人たちなんだね……」
ステラは少し驚きつつも、真剣に話を受け止めてくれた。
そのやり取りの中で、俺の中にあった「身分の壁」は、少しずつ崩れていった気がした。
0
あなたにおすすめの小説
王家の賠償金請求
章槻雅希
恋愛
王太子イザイアの婚約者であったエルシーリアは真実の愛に出会ったという王太子に婚約解消を求められる。相手は男爵家庶子のジルダ。
解消とはいえ実質はイザイア有責の破棄に近く、きちんと慰謝料は支払うとのこと。更に王の決めた婚約者ではない女性を選ぶ以上、王太子位を返上し、王籍から抜けて平民になるという。
そこまで覚悟を決めているならエルシーリアに言えることはない。彼女は婚約解消を受け入れる。
しかし、エルシーリアは何とも言えない胸のモヤモヤを抱える。婚約解消がショックなのではない。イザイアのことは手のかかる出来の悪い弟分程度にしか思っていなかったから、失恋したわけでもない。
身勝手な婚約解消に怒る侍女と話をして、エルシーリアはそのモヤモヤの正体に気付く。そしてエルシーリアはそれを父公爵に告げるのだった。
『小説家になろう』『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載。
雪の日に
藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。
親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。
大学卒業を控えた冬。
私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ――
※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。
ガネス公爵令嬢の変身
くびのほきょう
恋愛
1年前に現れたお父様と同じ赤い目をした美しいご令嬢。その令嬢に夢中な幼なじみの王子様に恋をしていたのだと気づいた公爵令嬢のお話。
※「小説家になろう」へも投稿しています
~春の国~片足の不自由な王妃様
クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。
春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。
街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。
それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。
しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。
花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??
嫌われたと思って離れたのに
ラム猫
恋愛
私は、婚約者のカイルに嫌われたと思った。冷たくそっけなく、近づくたびに避けられる日々。
距離を置くことを選び、留学の準備も進めて心を落ち着かせようとするけれど——。
「やはり鍛えることは、大切だな」
イチイ アキラ
恋愛
「こんなブスと結婚なんていやだ!」
その日、一つのお見合いがあった。
ヤロール伯爵家の三男、ライアンと。
クラレンス辺境伯家の跡取り娘、リューゼットの。
そして互いに挨拶を交わすその場にて。
ライアンが開幕早々、ぶちかましたのであった。
けれども……――。
「そうか。私も貴様のような生っ白くてか弱そうな、女みたいな顔の屑はごめんだ。気が合うな」
婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】
繭
恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。
果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる