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第5章 孤児
第108話 風景
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馬車が止まり、しばらくしてから俺はそっと窓の外をのぞいた。
「わぁ……」
アリーが小さく声をあげる。
「すごい景色……こんなにきれいな風景、初めて見た」
彼女に誘われるように視線を外へ向けると、金色の小麦畑がどこまでも広がっていた。陽の光を受けて揺れる穂は、まるで波のように輝いている。
「確かに……ここまで見事な小麦畑は初めてだな」
「でも、どうしてこんなところで止まったんだろう?」
アリーが首をかしげる。
その疑問に答えるように、ティアナがふいに口を開いた。
「ランたちは、この場所のこと……知らないの?」
「うん。私たち、町の外に出るのは初めてだから……」
アリーが少し恥ずかしそうに言う。
俺も続けて、苦笑しながら答えた。
「俺の場合は……昔、狙われることが多かったからな。家からほとんど出られなかった」
「なるほど。ランは貴族だから、余計にか……」
アクオスが納得したように頷いた。
そのときティアナが、どこか探るような眼差しで俺を見つめてきた。
「……貴族って、何でもかんでも言葉の暴力で命令したりするんじゃないんだね」
胸の奥がざわつき、思わず声を荒げてしまった。
「そんなのは一部の貴族だけだ! 普通の貴族は……平民の話や意見だって、ちゃんと聞いてるんだ」
言い終えた瞬間、自分の言葉がどれほど強く響いたかに気づく。
(……しまった。怖がらせたかもしれない)
平民から見れば、俺という存在そのものが『悪い側』にしか映らないのだ。誤解を解くのは、きっと簡単じゃない。
「ご、ごめん……」
ティアナが小さく肩をすくめた。
「私の知ってる貴族って、いつも人を言葉で追いつめたり、威張り散らしてる人ばかりだったから……」
思わず俺とアクオスは顔を見合わせ、苦笑が漏れる。
「まぁ……確かに」
「そう思われても仕方ないな」
アクオスが静かに頷いた。
胸に溜めていた思いが抑えきれず、口をついて出る。
「……でも、俺たちだって。少しでも平民が生きやすくなるように、必死にやってるんだ」
ティアナは目を瞬かせ、うつむきながら小さく呟いた。
「ご、ごめんなさい……。そんなふうに考えてるなんて、知らなかったから……」
「いや、それは仕方ないよ」
俺は首を横に振る。
「平民の人たちが見られるのは『結果』だけだ。裏でどう考えていたかなんて、伝わらないことの方が多いからな」
張りつめた空気を、アリーがぱんっと両手を叩くような明るさで払った。
「そうそう! そんなの気にしてても仕方ないって。今は私たち、一緒に旅してる仲間なんだから!」
その言葉にティアナはぱちぱちと瞬きをして、表情をほんの少し和らげる。
俺もその様子に、胸の奥の緊張が少しずつ溶けていくのを感じた。
「わぁ……」
アリーが小さく声をあげる。
「すごい景色……こんなにきれいな風景、初めて見た」
彼女に誘われるように視線を外へ向けると、金色の小麦畑がどこまでも広がっていた。陽の光を受けて揺れる穂は、まるで波のように輝いている。
「確かに……ここまで見事な小麦畑は初めてだな」
「でも、どうしてこんなところで止まったんだろう?」
アリーが首をかしげる。
その疑問に答えるように、ティアナがふいに口を開いた。
「ランたちは、この場所のこと……知らないの?」
「うん。私たち、町の外に出るのは初めてだから……」
アリーが少し恥ずかしそうに言う。
俺も続けて、苦笑しながら答えた。
「俺の場合は……昔、狙われることが多かったからな。家からほとんど出られなかった」
「なるほど。ランは貴族だから、余計にか……」
アクオスが納得したように頷いた。
そのときティアナが、どこか探るような眼差しで俺を見つめてきた。
「……貴族って、何でもかんでも言葉の暴力で命令したりするんじゃないんだね」
胸の奥がざわつき、思わず声を荒げてしまった。
「そんなのは一部の貴族だけだ! 普通の貴族は……平民の話や意見だって、ちゃんと聞いてるんだ」
言い終えた瞬間、自分の言葉がどれほど強く響いたかに気づく。
(……しまった。怖がらせたかもしれない)
平民から見れば、俺という存在そのものが『悪い側』にしか映らないのだ。誤解を解くのは、きっと簡単じゃない。
「ご、ごめん……」
ティアナが小さく肩をすくめた。
「私の知ってる貴族って、いつも人を言葉で追いつめたり、威張り散らしてる人ばかりだったから……」
思わず俺とアクオスは顔を見合わせ、苦笑が漏れる。
「まぁ……確かに」
「そう思われても仕方ないな」
アクオスが静かに頷いた。
胸に溜めていた思いが抑えきれず、口をついて出る。
「……でも、俺たちだって。少しでも平民が生きやすくなるように、必死にやってるんだ」
ティアナは目を瞬かせ、うつむきながら小さく呟いた。
「ご、ごめんなさい……。そんなふうに考えてるなんて、知らなかったから……」
「いや、それは仕方ないよ」
俺は首を横に振る。
「平民の人たちが見られるのは『結果』だけだ。裏でどう考えていたかなんて、伝わらないことの方が多いからな」
張りつめた空気を、アリーがぱんっと両手を叩くような明るさで払った。
「そうそう! そんなの気にしてても仕方ないって。今は私たち、一緒に旅してる仲間なんだから!」
その言葉にティアナはぱちぱちと瞬きをして、表情をほんの少し和らげる。
俺もその様子に、胸の奥の緊張が少しずつ溶けていくのを感じた。
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