勘当された少年と不思議な少女

レイシール

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 第6章 旅館

第150話 メモ

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 ベルクが了承してくれたのが嬉しかったのか、アリーが手を挙げた。

「ベルクさん、やり方を紙に書いてもいいですか?」

 その問いに、ベルクはすぐ頷いた。

「もちろんいいよ。紙に書いて覚えるのは、僕の国でも普通にやってるしね」

 その言葉を聞くと、アリーはほっとしたように胸を撫でおろした。

「よかった……。ダメって言われたらどうしようかと思った。だって私の記憶力は……」

 あ、と思い出して、俺はアリーを見た。

「そうだったね……」

 少し言いにくくて、俺はティアナとベルクに向き直る。

「えーと……簡単に言うと、アリーは記憶力があんまり良くないんだ。だから、紙に書いて覚えるようにしてる」

「へえ、そうなんだ。でも紙に書くのはいいことだよ?字の練習にもなるし、毎日書けば綺麗な字が書けるようになると思う」

 ベルクの穏やかな言葉に、ティアナは『はあ……』と呆けたような声を漏らした。

「そっか……アリーも苦労してるんだね」

「ん?ティアナ、なんでそんな呆然としてるの?」

「だって、あーしたちは孤児だから……字を習う機会がほとんどなかったの」

 なるほど……と俺は納得しつつも、ティアナの次の言葉に腰を抜かしそうになった。

「じゃあ、あーしたちも字の練習してもいい?」

「まぁ……いいんじゃないかな……?」

 曖昧に答えると、ティアナは勢いよく続ける。

「じゃあさ!ランが文字の書き方を教えて!!」

「えっ、俺が……」

 そう言いかけたときだった。

「うん……やっぱり言った方がいいのかな……? それとも……」

 アクオスの弱々しい声が聞こえてきて、全員が一斉に振り向いた。

「アクオス?もう平気なの?」

 ティアナが心配そうに声をかけると、アクオスは不思議そうに首を傾げた。

「みんな、どうしたんだ?」

 そんな顔をされると、こっちも返答に困る。

「いや、その……どうしたっていうか……」

 俺が口籠もっていると、アリーが代わりに説明してくれた。

「アクオスが、ランの質問に答えられなくて固まっちゃったから……。みんな心配したんだよ」

「……そうだったのか。ごめん。俺、どんな感じだった?」

 その問いに、俺は気づく。

 ……俺、アクオスの様子、ちゃんと見てなかった。

 なんとも言えず、思わず固まってしまった。


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