レモンが好きだと言いたくて

蓮見 七月

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モテる

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 良くない事は連鎖して起こる。
「は、勇人クン。ちょっと来てもらえる?」
 教室の入り口で呼び出されてしまった。相手はアオイちゃんだ。
 
 今まで見ていなかった分よく見ると、小柄な割には胸が大きい。髪は黒で、肩まで下ろしている。顔は綺麗か可愛いかで言うと可愛い路線だ。
 クラスでの立ち位置は思い出せない。ただ、男子ウケは良さそうだ。

「どこ行くの?」
 ザワつくクラスを出て廊下を歩く。質問の答えは返ってこない。もしかしたら何か言ったのかもしれないが聞き取れなかった。
 
 アオイちゃんが階段を猛スピードで駆け上がる。付いていくと屋上に続く扉があった。
 間違いなく告白されるだろう。どう断ろうか。今までと同じく短くごめんで良いのだろうか。
 
 扉を開けるとドンと大きな音がした。勢い余って壁に扉がぶつかった。
 少し歩いて屋上の中心で向き合う。定番の告白スタイルだ。どうしたものだろう。

「あ、あの。私、勇人クンの事、前から見てて」
 頑張って言葉を紡ぐ女の子は見たくない。断るのが辛くなる。しかし、可哀想だからなんて理由で付き合えない。
「その……。私、勇人クンの事が……。す」
 上目遣いの顔は真っ赤だった。頬、耳、目、おでこ。告白ほど勇気のいる行動は無い。

「ごめん」
 アオイちゃんの目の端から涙がこぼれていく。こぼれるとすぐに次の涙が溜まって、また流れる。
「な、なんで……。勇人クンって彼女いないよね? 好みのタイプじゃないとか?」
「そうじゃないんだ。ごめんね」
 できる限り優しく言う。これは却って残酷だろうか。

「せめて理由を教えて欲しいの。できる事なら何でもするから」
「できる事は無いと思う」
 これくらいキッパリ言った方が良いのかもしれない。どうか諦めて欲しい。好きじゃないだけで、嫌いじゃないから。
 
 アオイちゃんは俯いて泣くばかりだ。声が詰まって苦しそうな嗚咽になる。それでも好きじゃない人に好きだとは言えない。
「もう行くね」
 そう言って立ち去るしかなかった。 
 屋上の扉から出る。扉は音が出ない様にそっと閉めた。階段を下りて教室に戻る。
 
 両親に紹介するならアオイちゃんだったかもしれない。戻る間にそう考えた。クラスのみんなはどんなリアクションをするだろうか。きっと残念がるに違いない。告白にOKを出していたらシュンも圭吾も喜ぶだろう。世間が望むのは男女間の恋愛だ。
 
 教室のドアを開ける。30人の視線が一気に集まる。いつだってこの瞬間は嫌な気分になる。まるで殺人犯にでもなった気分だ。
 
 黙って自分の席に着く。それが一番波風立たない報告の形だ。
 暫くして、扉が一気に開いた。そこに居るのはアオイちゃんだ。目の下を真っ赤にして泣いたままだ。

「勇人クンは……」
 そう言ってアクリル板をどかしてしまった。ドンという怒りの感情と一緒に両手を机に叩き落とした。

「勇人クンは何を考えてるの? 私の事は好きなの? 嫌いなの? 何にもわかんない! 誰が嫌いで誰が好きなの!? 理由くらい教えてくれてもいいじゃん!」
 
 教室中の視線が好奇の目に変わったのが背中でわかる。俺は暫く悪者だ。
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