死後の世界も生きづらい?

蓮見 七月

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死後の世界

母子。Ⅱ

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 ナオミが大きな声を出す。

「お母さんただいま!また降って来た人を連れてきたわ!」

彼女はうれしそうに言った。母にニュースを届けるのが楽しみだと言うことがありありと分かるような声色だった。

「でも今度はなんだか頼りなさそうな人よ。前に降って来た彼とは大違い!」

彼女はミノルのことを貶しながらもやはりうれしそうに伝えた。それは母に話を聞かせてあげられると言ううれしさとともに、前に降って来た彼について話すこともまたうれしそうだった。ミノルはこの話について門外漢で居るしかなかった。

そこで彼は礼儀正しく彼女の母親に挨拶することで自分がしっかり成人した人間だと言うことを母親と彼女に証明しようと試みる。

「お邪魔します。山口実ヤマグチ ミノルと申します。本日はお嬢様に助けられました。さらにご自宅まで案内していただいて。本当に助かります。」

彼はできるだけ信用を勝ち取るために恭しく話した。彼の警察官という職業上、本来は信頼をすぐに勝ち取るすべを身に着けていてしかるべきだが彼は悟の死後、”死”について考えるようになってから久しくこんなことに気を掛けなくなっていた。彼は久しぶりに信用を勝ち取るための挨拶を交わした。

「ヤマグチミノル?ずいぶん長い名前なのね。ご丁寧にありがとう。」

ナオミの母はやさしく声を掛けた。ミノルはナオミの母へ目を向けた。

彼の目には、質素な服装、均整の取れた体型、足は長く、腕は優しく丸みを帯びていた。色は少し白い、顔は穏やかで全体的に娘のナオミに似通っていた。ただ違うのはその美しく丸みを帯びて発達した大きな胸であった。年齢は30代後半くらいであるように映った。彼は元の世界でなら美熟女と呼ばれただろうなとぼんやり考えた。

そしてふと、自分が徐々にこの世界に順応しようとしていることに気が付いた。ナオミに手を引かれて草原から町へ来て風景を観察し、今こうして、母親に会って話しながら美熟女と呼ばれただろうななどとどうでもいい事を考えていた。

これは彼の心に余裕ができた事の証明でもあった。また、その心の余裕がこの世界は元の世界とは違うのだと認識させてくれたし、それについて不安に思うことも無かった。完全に不安が無いとは言い切れなかったが少なくともナオミの母を見て美しいと感じられるくらいには彼の心は余裕を取り戻していた。

「なぁに?じっと私を見て。とにかくあなたは名前が少々長いようですからミノル君でいいかしら?」

彼女はミノルにじっと見られていることを敏感に察知した。彼女の職業上の技術のひとつでもあったがそれと同時にこの身なりのひどい新しく降って来た男をからかってやろうと言う気持ちも含まれていた。

「スミマセン。ミノルです。本日はご厄介になります。」

彼はこの妙齢の女性に対して当意即妙の返事をなしえなかった。ただそのままからかわれたと思うにとどまった。

「お母さん彼、ひどい身なりでしょう。だからあの人が来たときと同じように身なりを整えさせてあげたいの。それから部屋もひとつ貸してあげましょう。」

ナオミはそういってくれた。あの人と言うのは必然的に前回降って来た人と同一人物であることは間違いなかった。
恐縮です。彼がそう呟くと彼女の母親は微笑んでいた。

「2階に二つ部屋がありますから、右のほうを使って下さい。それと、部屋にあるものはすべて自由に使ってかまいませんから。あの人の使い古しですけれど。」

 あの人と言うのは前回降って来たという男の事を指していた。ミノルは前回降って来た男と言うのは随分、この家の人に親しまれているし好印象を残していったのだなと思った。

 ミノルは感謝の言葉を二人に述べると早速、二階へ上っていった。
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