さよならVtuber

蓮見 七月

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さよならVtuber Ⅰ

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 これは私がVtuberだった頃の話です。
 Vtuberと言うのは実写ではなく、アバターを使って配信や動画投稿をして生計を立てる人たちへの抽象的な呼び名です。
 やっている事は実写の配信者や動画投稿者と同じだと思ってくださって結構です。
 現在でも沢山のVtuber。つまりバーチャルユーチューバーが活躍していますが、私もその端くれでした。
 生計を立てることをVtuberの定義とすると、厳密には私はVtuberではなかったのかもしれません。
 ですが灰色の社会生活から抜け出して、輝かしいクリエイター生活を送る。そんな生活を夢見て活動していた時期が、私にもあるのです。
 なぜ私はVtuberを止めたのか?
 この場をお借りして語らせて下さい。
 自分の慰めのために自分語りをするだけ。皆さんはそう思われるかもしれませんし、事実そうなのでしょう。
 ですが私の愚かなるVtuber生活を語ることで皆さんが卑怯な人間になることを抑止できる。そう思うのです。
 Vtuberになるな。クリエイター志向は止せ。安定した職に就きなさい。そう言った話では全くありません。
卑怯な人間になってはいけない。
 ただそれだけの明瞭な話です。
 どうか通勤時間の合間にでも、職場の休憩時間にでも、読んで頂きたい。そして私を笑うなり批判してほしいのです。
 これ以上私のような人間を作り出さないために。

 2019年ごろからでしょうか。Vtuberなるものが流行し始めました。
 Vtuberの黎明期、2016年ごろは、ほとんどの方が3Dアバターを使用していました。アニメ登場するような可愛らしいキャラクターが身振り手振りを使って話をする。ゲームをする。歌を歌う。
 ついに技術はここまで来たのか。私は未来を感じてトキメキました。
 見ているうちに私もやってみたい。自然とそう思いました。
 無謀だとは思いませんでした。活動している人はどうも素人なのではないか?と感じたからです。
 俳優や声優、お笑い芸人がやっている遠い出来事ではない。もっと身近だと感じました。またそれがインターネット上の視聴者に支持されている理由でもある。ならば私にもできるのではないか。そう思いました。
 ただこの時の問題はお金でした。
 3Dでキャラクターを動かすとなると高度なトラッキング技術が必要になります。それにある程度のスペックを持ったパソコン。マイク。
 当時は現在よりも価格が高く、一介の派遣社員である私にはとても手が出せるものではありませんでした。
 結局、私は冴えない派遣事務員のまま。
 会社での鬱憤と変えられない現実から逃避するためにVtuberの活動をひたすら追うだけ。
 誰にも認知されない日々。
 会社では営業職ばかりが褒められ、愚痴を言う友達も居ない。家に帰っても一人。彼氏ができるような気配もない。実家の母からは電話のたびに正社員に成れ、結婚しろとプレッシャーをかけられる。
 そんな日常が続きました。
 月日が経ち2019年頃。Vtuberの世界は黎明期から成長期へ変わっていきました。
 私の退屈な日常はやはりVtuberが壊してくれたのです。
 この時期に私はもう一度、Vtuberをやってみたいと思うようになったのです。
 時は業界の成長期。この時期に随分Vtuberが増えました。特に3Dモデルを使ったものではないVtuberが増えたのです。
 2Dの体を使って動くのはほとんど表情だけ。そんな新しいタイプのVtuberが流行しだしました。さらにVtuberのように表情をトラッキングしてくれるアプリケーションも登場したのです。
 つまり、安価になった。
 諦めの理由となった最大の障害が私の努力なしで取り除かれたのです。
 私の日常はつまらない代わりに浪費もありませんでした。蓄えはそれなりにあったのです。
 貯金を使って2Dのイラストを依頼しました。それから諸々の機材も準備しました。他人から見ればみすぼらしいのかもしれませんが、私の狭いマンションの一室がまるで事務所のように生まれ変わったのです。
 新しい事へのやる気、探求心のようなものが湧き上がりすぐに行動できました。
 TwitterとYouTubeのアカウントも作成して、配信の準備もしました。デビュー日を決めてSNSで宣伝。
 そうして私もVtuberになる日が遂に来たのです。
 女性の花である20代を寂しく過ごす地味な女性派遣社員、小川おがわあい。
 それがYouTube上ではロリータ服を着た17歳の女子高生、愛河あいかわアイカとして新たに誕生したのです。
 私の煌びやかなVtuber生活がここから始まる。
 そのはずでした。
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