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第3話 楽しいが一番②
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「要するに神、つまり俺だな!」
「は……?」
突然の和泉さんの話の帰結にぽかん、と口を開けてしまう。そんな私の反応を知ってか知らずか、全てを理解したかのドヤ顔で彼はうんうんと頷いている。
「全盛期の俺なら天に昇れば雨が降り、怒りのままに暴れれば鉄砲水で全て洗い流してやったもんだ。まさに絶大なる影響力!」
「そういう影響力の話じゃないんですが!」
武勇伝とばかりに天災レベルの話をされてしまう。
彼の脳内で一応、どういう思考の流れがあったのかは理解できたものの、私が今求めているのはそういう影響力では断じてない。
「で、俺がうちのたい焼き紹介すればいいのか?」
なぜかひどく乗り気になった彼は、身を乗り出すような勢いで尋ねてくる。
「えぇっと……こちょうってSNSのアカウントって持ってます?」
「えすえぬ、えす……あかうんと……?」
洗濯機をカラクリ、と呼んでいた和泉さんだ。たい焼き関連以外の現代の道具について、一体どこまで知識があるのか怪しい。
「おじいちゃんがこういうの使ってるところ見たことありませんか?」
自分のスマホを取り出してみせると、和泉さんは鼻先が擦れそうなくらいに顔を近付けてスマホを見つめた。眼鏡の向こうで何度か大きな瞳を瞬かせ、やがて思い出したように声を上げる。
「あー確か、この棚の中にそれに似た大きいやつがあったな」
乾物系の食品を仕舞っている棚の隙間から、片栗粉なのか何なのかところどころに白い粉が降りかかったタブレット型端末が仕舞われていた。
すっかり充電が切れていたそれは、どうやら新しいもの好きの祖父が使っていたものらしい。
「でも、最初の何日か触って飽きてたけどな。小さい方だけで十分! みたいなこと言ってたし」
さすがおじいちゃん。スマホもタブレット型端末も使いこなせていたらしい。充電しつつ起動してみれば、それなりにアプリなどを触っている気配があった。
老若男女問わずモテる祖父のことだから、使い方が分からなくても誰かに聞いて教えてもらっていたのかもしれない。
「あ、あった! こちょうのアカウント!」
「だから、あかうんとって何だよ」
「ネットの中で取得した権利というか、SNSだとアカウントを通して自分の代わりに何かを発信する分身みたいな感じですかね」
「分霊みたいなやつか。稲荷とかがやってる」
「そう、なのかな……?」
和泉さんの例えに曖昧に頷きつつ、ツベッター内に作られたアカウントを確認する。更新は一年前の投稿を最後に止まっていた。フォロワーはほとんどおらず、反応という反応をもらえていないところを見ると、うまく運用できていたというわけではないらしい。
「でも、アカウントがあるなら使わない手はないですね」
「お、ようやく俺の出番か!」
そういう嗅覚だけは鋭いらしい。眼鏡越しに目を輝かせながら、ぐいぐいと距離を詰めてくる。
「分かりました! ひとまず商品の写真を撮りましょう」
「俺が食べてるとこでいいだろ?」
「え、顔出しして良いんですか?」
「どうせ買いに来たら顔見られるんだし、何か問題あるのか?」
「いやぁ……」
本人がいいなら良いのだろうか。まぁ、そもそも神様だしな。
と、徐々に和泉さんに毒されてきたのか、神様だから、という雑な思考でそれ以上考えることを止めてしまう。
早速、和泉さんに高級たい焼きを作ってもらっているところや食べてもらっているところを撮影し始めたものの……
「あの、もう少し自然な感じで写った方が……」
「はぁ? いつもこんなだろ」
妙に意識されたカメラ目線。そして、大仰な腕の角度。謎に捻られた腰。
「いや、明らかに不自然です」
「いんふるえんさーの俺が良いって言ってるんだ。孫ももっと楽しめよ。これがえすえぬえすで生まれる俺の新たな伝説なんだからな!」
「どうかなぁ……」
訝しみつつも、こちらの要望はどうにも通る様子はない。諦めて和泉さんの言う通りに撮影しながら、そのうちの数枚をツベッターにアップするのだった。
「は……?」
突然の和泉さんの話の帰結にぽかん、と口を開けてしまう。そんな私の反応を知ってか知らずか、全てを理解したかのドヤ顔で彼はうんうんと頷いている。
「全盛期の俺なら天に昇れば雨が降り、怒りのままに暴れれば鉄砲水で全て洗い流してやったもんだ。まさに絶大なる影響力!」
「そういう影響力の話じゃないんですが!」
武勇伝とばかりに天災レベルの話をされてしまう。
彼の脳内で一応、どういう思考の流れがあったのかは理解できたものの、私が今求めているのはそういう影響力では断じてない。
「で、俺がうちのたい焼き紹介すればいいのか?」
なぜかひどく乗り気になった彼は、身を乗り出すような勢いで尋ねてくる。
「えぇっと……こちょうってSNSのアカウントって持ってます?」
「えすえぬ、えす……あかうんと……?」
洗濯機をカラクリ、と呼んでいた和泉さんだ。たい焼き関連以外の現代の道具について、一体どこまで知識があるのか怪しい。
「おじいちゃんがこういうの使ってるところ見たことありませんか?」
自分のスマホを取り出してみせると、和泉さんは鼻先が擦れそうなくらいに顔を近付けてスマホを見つめた。眼鏡の向こうで何度か大きな瞳を瞬かせ、やがて思い出したように声を上げる。
「あー確か、この棚の中にそれに似た大きいやつがあったな」
乾物系の食品を仕舞っている棚の隙間から、片栗粉なのか何なのかところどころに白い粉が降りかかったタブレット型端末が仕舞われていた。
すっかり充電が切れていたそれは、どうやら新しいもの好きの祖父が使っていたものらしい。
「でも、最初の何日か触って飽きてたけどな。小さい方だけで十分! みたいなこと言ってたし」
さすがおじいちゃん。スマホもタブレット型端末も使いこなせていたらしい。充電しつつ起動してみれば、それなりにアプリなどを触っている気配があった。
老若男女問わずモテる祖父のことだから、使い方が分からなくても誰かに聞いて教えてもらっていたのかもしれない。
「あ、あった! こちょうのアカウント!」
「だから、あかうんとって何だよ」
「ネットの中で取得した権利というか、SNSだとアカウントを通して自分の代わりに何かを発信する分身みたいな感じですかね」
「分霊みたいなやつか。稲荷とかがやってる」
「そう、なのかな……?」
和泉さんの例えに曖昧に頷きつつ、ツベッター内に作られたアカウントを確認する。更新は一年前の投稿を最後に止まっていた。フォロワーはほとんどおらず、反応という反応をもらえていないところを見ると、うまく運用できていたというわけではないらしい。
「でも、アカウントがあるなら使わない手はないですね」
「お、ようやく俺の出番か!」
そういう嗅覚だけは鋭いらしい。眼鏡越しに目を輝かせながら、ぐいぐいと距離を詰めてくる。
「分かりました! ひとまず商品の写真を撮りましょう」
「俺が食べてるとこでいいだろ?」
「え、顔出しして良いんですか?」
「どうせ買いに来たら顔見られるんだし、何か問題あるのか?」
「いやぁ……」
本人がいいなら良いのだろうか。まぁ、そもそも神様だしな。
と、徐々に和泉さんに毒されてきたのか、神様だから、という雑な思考でそれ以上考えることを止めてしまう。
早速、和泉さんに高級たい焼きを作ってもらっているところや食べてもらっているところを撮影し始めたものの……
「あの、もう少し自然な感じで写った方が……」
「はぁ? いつもこんなだろ」
妙に意識されたカメラ目線。そして、大仰な腕の角度。謎に捻られた腰。
「いや、明らかに不自然です」
「いんふるえんさーの俺が良いって言ってるんだ。孫ももっと楽しめよ。これがえすえぬえすで生まれる俺の新たな伝説なんだからな!」
「どうかなぁ……」
訝しみつつも、こちらの要望はどうにも通る様子はない。諦めて和泉さんの言う通りに撮影しながら、そのうちの数枚をツベッターにアップするのだった。
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