トラに花々

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日誌・76 逃げませんから(R18)

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雪虎が、言うなり。
布越しにも、分かった。秀のソレが、また一回り大きくなる。

…どこまで育つのか、どこが限界なのか。思わず青くなる。息を呑み、視線を下げれば。

秀の、何かを耐えるような声が落ちてきた。


「煽るな」


…確かに、雪虎の台詞はそう取れる。いや、そんな意図はなかった。誓って。
だが何をどう言っても言い訳になりそうだ。
どうもこのままだと話は、先へ進みそうもない。

きっぱり打ち切ることにする。

なんにしたって、この体勢でじっとしていても、何の解決にもならない。
「俺を少しだけ、放してくれませんか」
息を整えながら雪虎は言う。

だが、返されたのは沈黙。その上、秀は動かない。
不自然な姿勢が苦しいのだ。せめて、足を下ろさせてほしい。

秀は何を考えているのだろうか。


思うなり、脳裏に閃いたある考えに、まさかな、と思いながら付け加えた。




「…逃げませんから」




一拍、置いて。
秀は大きく息を吐いた。仕方なさそうに従ってくれる。

雪虎の足が、畳についた。ただしその間も秀の手は雪虎の腰から離れない。


(…いやこの状態で、俺が逃げると本気で思ってるのかこのヒト)


どれだけ雪虎に信用がないのか。いや、性悪と思われているのか?
―――――仕方がないとはいえ。

過去の自分の言動に、つい、泳いだ雪虎の視線が、ふと秀の帯に止まった。


そこに、先ほどまでなかったモノが挟まれていたからだ。目を瞬かせる。


「…それ…」
言えば、秀も目を落とし、
「ああ」

息を無理に抑えた声で応じた。



「奥の、風呂場から取ってきた」



―――――そうだった。この座敷牢は、風呂もトイレも冷暖房も完備だ。先ほど、秀が奥へ行ったのはこのためだったのか。
月杜家の風呂場なら、確かにソレが普通に置いてあって不思議はない。

雪虎の視線の先にあるもの。それは。




―――――潤滑剤だ。

暗くてよく見えないから、ローションかもしれないが、間違いなくその類のもの。




(…ってことは、わかってるんじゃないか)

いくら興奮していても、後先考えない十代でもないのだ。
お互いに、それなりの経験がある大人。

準備もなくいきなりつながることができないのは、分かり切っている。
ただし興奮しきった今、雪虎は自分でうまくほぐせる自信がない。

―――――それなら、今回は。


(このヒトに、やってもらおうか)


心を定め、雪虎は荒く息を吐いた。
腰を掴む秀の手に手を重ねる。

上目遣いに見上げれば、鈍い動きながら、放してくれた。

その場で雪虎は反転。秀に背を向けた。

片手を木格子につき、口を開く。


「俺の入り口は狭いので」


言った後で思う。



なんて台詞だ。



ただ、頭は興奮でのぼせ切っていた。そういった羞恥は、すぐ、流れ去る。
雪虎はうまく力が入らない片手で、浴衣の裾を持ち上げた。
それを腰のあたりで蟠らせた、上で。

一瞬、躊躇った、のち。


ぎこちなく、濡れた下着を下ろす。腿の、半ばまで。


頼りになるのが足元に転がるランタンの明かりだけでは、ソコがはっきり見えるわけでもないのに。
下半身を秀へ差し出すようにした自身の格好に、さすがに飲み込み切れない羞恥が湧いた。


「どうせ、する、なら」


声が小さくなる。
木格子の方を向いたまま、俯いた。顔が熱い。
「…一緒に、気持ちよくなりたいんで」

暗くて助かった。
きっと、耳から首筋まで真っ赤だろう。


ただ、秀から、強い視線を感じる。
それは普段、決して誰にもさらさない場所へ注がれていた。


勘弁してくれ、と思う。…そこから焼け焦げそうだ。

「―――――会長が、解して、くれませんか」
言うなり。
秀が、動く気配。畳の上に、何か、小さなものが落ちる音。直後。





とろり。


「…っ」





冷たい感触が、雪虎の尻の割れ目を伝う。
すぐ、体温でぬくもった、それを。

「あ、…!」

秀がその体格に見合った太い指で、雪虎のつぼみ、その入り口に強く塗り込めた。





全体で見れば、秀の指は神経質な繊細さを兼ね備え、細く見える。

だが、しっかりと大きく骨太い。





その感触が信じられないくらい心地よく、雪虎の意思に反して、腰がうねった。

対して、肩が竦む。
快楽の衝動に耐えるように。

入り口に触れられる、たった、それっぽっちの刺激で。


快楽の太い針が、雪虎の全身を貫いたようだ。前のめりに倒れ込みそうになる。
気力で、木格子にしがみついた。足元の畳を睨むようにした視界がボヤける。どうやら、生理的な涙がにじんできたようだ。


これほど、高ぶっているのは。





(祟りの影響、とか…言わないよな)

思えば、最初に秀を受け入れた時も、初めてとは思えないほど、快楽を強く拾った。
雪虎の身体は、よく知りもしない伝承に、支配を受けているのだろうか。

それとも。


本来、淫乱なのか。





「…トラ…!」

秀の、苦しそうな、声に。
雪虎はわずかに振り向いた。快楽に浮かんだ生理的な涙の膜のせいで、秀の表情ははっきり見えない。



だがきっと、―――――怖い顔をしている。極限まで水に乾いた人が、清水を目の当たりにしたような。



いくら入り口が解れても、その勢いのままねじ込まれては、雪虎が壊れてしまう。
なら、どうすれば一番いいか。

…一度、発散する必要がある。

「かい、ちょう、も…一回、出しましょう」
どこから何を、など。この場合に言う必要もないだろう。

そうすれば、少しは…ほんの少しだとしても、熱はおさまるはず。



「会長、の、その、…常識から外れた、モノ、を」

つい、大きさについて、皮肉気に言ってしまったのは、許してほしい。



木格子に向き直り、雪虎は息を弾ませながら、誘うように足を開く。
最初に秀の足を使って果てたのは、雪虎だ。だから秀も雪虎の足を使えばいい。


「俺の、内腿に、…当てて」


とたん、左の内腿に、濡れて、固く熱い巨きなモノが押し当てられた。
雪虎は大きく息を吐きながら、両方の内腿で、ソレを挟み込む。




そこから先は、―――――言う必要がなかった。




パンッ。
肉と肉が、ぶつかる音。

腿の間、突き込んでくる強さに、ガツ、と骨にまで衝撃が響いた。


快楽に、というより、その力強さに、すぐ、腰砕けになりそうになる。ただ。


突き込まれる瞬間は、分かりにくかった、が。
引き抜く動きに、腰が持って行かれそうになった刹那。

「―――――…ふ、ぁっ?」

腹まで反り返った雪虎の陰茎の裏側を、秀のソレが直接刺激した。





思わず雪虎の腰が跳ねる。







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