駆け出せ、メグミ 〜裸の性、裸の生き様〜

寸陳ハウスのオカア・ハン

文字の大きさ
10 / 24

第10話 元メーカー専属AV女優・レイ

 春。AV女優・〇〇メグミとして駆け出してから、1年が過ぎた。

 濃密な、でもあっという間の1年だった。

 立場は相変わらずの企画女優。下積みは続いている。でも最近では、現場での信頼を少しずつ積み重ね、ようやく企画もののパッケージに名前が挙がるようになってきた。

 次に撮影する『淫女たちの誘惑サロン』というシリーズでも、3人いる女優のうちのひとりとして、名前が入ることになった。

 ただ、共演者の名前を聞いた瞬間、メグミは思わずマネージャーの顔を見返してしまった。

「……レイ?」

 共演者のひとりは、かつては大手メーカーの専属AV女優として名を馳せた、あの〇〇レイだった。
 今は専属を離れて、企画単体女優として活動しているらしい。とはいえ、業界では知らぬ者のいない実力者である。
 正直、怖くなるかと思った。けれどメグミの胸の奥には、むしろ妙な落ち着きがあった。

(今の私なら、きっと大丈夫)

 レイに関しては、事前にざっと調べた。
 2歳年上の25歳。キャリア5年目のキレイめ路線。メーカー専属時代の華やかな戦績。SNSやリアルイベントはやらず、ネットにもプライベートな情報を一切出さないミステリアスな素顔。企画落ちしてもなお現場で名を残している女優……。
 ただ、メグミの中ではそれは単なる情報でしかなかった。

 ──でも、実際に目の前に立たれると、話は全く違った。


***


 撮影当日。
 現場は、都内のハウススタジオ。外観は洋館風で、内装は白と金を基調にした高級感のある空間だった。
 暖炉風の壁、重厚なソファ、奥にはベッド。まさに誘惑サロンのセット。スタッフの数は多く、現場にはすでに照明の熱気が立ち込めている。

 現場に入ると、すでにレイがスタッフと談笑していた。
 艶のある黒髪に、白い肌。身長は155cmとメグミより少し大きい程度なのに、四肢は引き締まっていて無駄がなく、スラっとしたモデルのように見える。

 メグミが挨拶すると、振り返ったレイが、にこりと微笑んだ。

「はじめまして、○○メグミさん? よろしくね」

 その一言だけで、周囲の空気が変わるのを、メグミは確かに感じた。

 なんでもない一言。でも、ふっと背中に風が通るような感覚。愛嬌と余裕が入り混じった笑顔。周囲を自然に包み込む雰囲気。
 ただ挨拶を交わしただけなのに、メグミの鼓動は早くなっていた。

(なんだろう……、この感覚……)

 威圧じゃない。でも、たった一言の挨拶だけで、「この人は格が違う」のだと、メグミは理解してしまった。


***


 最初の撮影は、女優3人が集まってのバイブオナニーパート。
 それぞれが高級ソファに座り、シルクのガウン姿でプレイするという演出。

 セッティングが終わり、カメラが回る。

「じゃあ、まずレイちゃん中心で……」
 そう監督が言った瞬間、レイは何の気負いもなくポーズを決め、滑らかに指を這わせ始めた。

(見せ方……うますぎる)

 微かな喘ぎ、指先のリズム、表情の移り変わり……どれも計算されているようで、でも自然。カメラの前で膣口マンコをくぱぁと開く姿さえ、美しい。

 そんな姿に、メグミは妙な焦りを覚えた。

(負けたくない……)

 気づけば、メグミはわざとらしい声を出し、濡れてもいないのに強引に膣内なかにバイブを当てていた。
 自分でもわかっていた。不自然なまでにエロく見せようとしていることに。

 空回りしていた。でも、止められなかった。


***


 続く撮影は、男優1人に対する女優3人の痴女プレイ。
 段取り確認の段階で、レイは「私は控えめにいくね」と笑いながらも、自然と進行の中心にいた。

「アオイさん、後ろから来たら見えにくいから、こう回ろうか」

「ここで私が口にいくから、次メグミさんお願いね」

 それは押しつけでも支配でもなかった。でも、気づけば全員がレイの動きに合わせて動いていた。

 撮影が始まると、もうひとりの女優、アオイは、完全にレイに誘導されていた。
 キスも、フェラも、挿入のタイミングも、全てがレイの掌の上。

(私ができると思ってたのって、こういう役割じゃなかったっけ……?)

 男優の顔に跨がるレイ、脚を絡ませてうっとりと腰を振るアオイ。
 メグミは男優に手マンされながら、遅れを取るまいと、前に出ようとした。

 ──けれど、レイが目線で合図を送り、それを制した。

 軽くキスされる。レイの舌先がメグミの唇を舐める。たったそれだけで、メグミは元の流れに乗せられたまま、腰を振っていた。
 男優の指が膣内なかに当たり、レイの声が耳元に届く。

「もっと……気持ちよくなっていいんだよ」

 その瞬間、体の奥が痺れる。焦りと混乱でスリップする感覚。声が漏れ、膝が震える。

「あ……!」

 絶頂。
 想定外。演技ではなかった。
 ただの手マンで絶頂まで導かれたことに、メグミは動揺を隠せなかった。


***


 休憩中。控室の空気は緩やかだった。
 もうひとりの女優、アオイは、顔を火照らせながら、楽しそうにレイと話していた。

「レイさんすごいですね~! 私、マジで気持ちよくなっちゃって~」

 レイは笑って「ありがとう」と言いつつ、メグミの方にも視線を向けた。

「メグミさん、大丈夫だった?」

 自然な気遣い。でも、そのやさしさが、逆に胸に刺さった。

(なんなんだろう、この落ち着かなさ……)

 さっきの絶頂が、ずっと身体に残っていた。メグミの心は、ざわついたままだった。


***


 ラストは、男優3人との乱交。

 レイは開始早々から、空気を握っていた。演技の質、目線の運び方、男優との距離感。そのどれもが自然で、流れるようで、意識せずに惹きつけてしまう。

 アオイはやはり完全にその流れの中。それでもメグミは、何とか自分の見せ場を作ろうと頑張った。
 しかし、男優に抱かれ、腰を振らされ、突かれながら、メグミの視線はレイの背中に釘付けだった。

(……完璧すぎる)

 レイはその場を舞うように動いていた。男優の間をすり抜け、女優たちの快感の呼吸を測るように、リズムを作っていた。

 そのときだった。

「メグミさん、もうちょっと腰落としてみて?」

 レイの声が飛んできた。
 一瞬、戸惑った。だが男優はすぐに理解したように、上に跨るメグミの背中を支えて、角度を変える。

 レイは、続けて言った。

「そう、それでゆっくり突いてあげて。奥の……ここ、ね?」

 そう言いながら、レイは自分の指を舌先で舐めると、下腹部をなぞって見せた。
 その指先の動きは──あまりにもエロかった。まるで、見る者を快楽へと導くような動きだった。

(……わかってる。全部、わかってやってる)

 男優の突き上げが、さっきとは違う。骨盤がぶつかり合うような、粘り気のあるピストン。角度が深く、当たりが鋭くなる。
 突かれるたびに、腰が勝手に逃げそうになる。しかし、男優の手はそれを許さない。

「ダメ……あっ、やば……レイ、さ、んっ……!」

 顔を上げると、レイが正面にいた。
 レイはアオイとねっとりとキスを交わしていた。そして、ちらりとメグミに目線を送った。

 その目は、確かに笑っていた。

 ──現場を支配し、快楽を演出する、『蛇の目線、蛇の舌先』。

 瞬間、脳が焼けるような閃光が走る。
 腰が震え、脚が引き攣る。
 騎乗位で突かれながら、メグミは叫んでいた。

「ヲ゛っ……イ……くっ、イく、や、ああっ……!」

 汗と涙が混じり、視界がにじむ。快感が、恥ずかしさを突き抜けて身体を支配する。
 
 再び、メグミはイってしまった。しかも今度は、失禁までして。

 緩みきった股間アソコから、じょろじょろと、情けない音が漏れる。
 カメラがぐっと近づいてくる。メグミの膣口マンコから表情を舐めるように抜き、そしておしっこの水溜まりまでを映す。

(また……またこの人に……イかされた……)

 自分の意思ではない。誘導され、演出され、完全に使われた。
 絶頂の波が去っても、身体の奥には震えが残っていた。

 そこからはもう何もできなかった。
 ただ男優たちに抱かれ、責められ、喘ぐしかなかった。気色ばむ男優たちに「おしっこ、すごかったね」とか「おしっこ、エロかったよ」と囁かれても、何も言えなかった。

 最初から最後まで、カメラが抜いているのはレイだった。
 おしっこを漏らした一瞬こそがっつり抜かれたものの、そこまで晒しても、メグミはレイの掌の上だった。


***


 撮影後。レイは疲れた様子も見せず、スタッフと談笑していた。現場の中心にいたのは、最後まで彼女だった。

 メグミはひとり、シャワー室へ向かった。
 下を向く。濡れた髪が頬を伝い、お湯と一緒に、涙なのか汗なのかわからないものが流れ落ちた。

(レベルが違いすぎる……)

 声にならない声が漏れた。

 ルックス、笑顔、演技、技術、現場の空気……全てにおいて、レイはメグミを凌駕していた。

 少しずつ築いてきたメグミの自信は、たった1日で粉々にされた。

 水音だけが響く中、メグミは唇を噛みしめた。

 でも、それでも──。

 1年前、決めたはずだ。自分は、この世界で、生きていくと。の中で、AV女優のメグミとして生きていくと。

 華やかに見える世界で、売れずに立つ恥も、評価されない痛みも、全て裸で受け止めてきた。
 逃げ場はない。だから、前へ進む。それしかできない。いや、それでいい。

 駆け出せ──メグミはひとり、拳を握り締めた。
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

義姉と押し入れに隠れたら、止まれなくなった

くろがねや
恋愛
父の再婚で、義姉ができた。 血は繋がっていない。でも——家族だ。そう言い聞かせながら、涼介はずっと沙耶から距離を取ってきた。 夏休み。田舎への帰省。甥っ子にせがまれて始まったかくれんぼ。急いで飛び込んだ押し入れの中に、先客がいた。 「……涼介くん」 薄い水色の浴衣。下ろした髪。橙色の光に染まった、沙耶の顔。 逃げ場のない暗闇の中で、二人分の体温が混ざり合う。 夜、来て。 その一言が——涼介の、全部を壊した。 甘くて、苦しくて、止まれない。 これは、ある夏の、秘密の話。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。