駆け出せ、メグミ 〜裸の性、裸の生き様〜

寸陳ハウスのオカア・ハン

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第20話 マイちゃん

 リビングの窓際に置いた観葉植物が、朝の光を受けて、柔らかく揺れている。

 メグミはソファの上で軽く背筋を伸ばすと、スマホに届いていたスケジュール通知を開いた。
 今度は、企画単体女優4人の共演作。最近は、安定してタイトルに自分の名前が入るようになった。

(ちゃんと評価されてるってことかな……)

 ちょっとだけ笑顔がこぼれる。
 もうすぐ25歳。AV女優・〇〇メグミとして活動を始めて3年目。素人時代も含めれば5年になる。
 誰かと競い合う気持ちはもうない。売れっ子ではないし、上を見ればキリがなさ過ぎる。ただ、現場での信頼は得ているという自負はある。それに、AV女優という仕事を自分なりに誠実にこなしてきたという実感も、確かに持っている。

「……頑張ってるね」

 不意に、隣から声が聞こえた気がした──スマホの画面に映っているのは、自分と、もういない誰か。

 通知を閉じようとした指が、一瞬止まる。

(レイさん……)

 何もわからないままだった。レイは、メグミの手のひらからするりと抜けるようにして、静かに引退していた。
 現場で、関係者の噂から知った引退の事実。インタビューも、SNSも、引退作品もない。あまりに静かで、まるで最初から存在していなかったみたいだった。

 メグミはスマホを置いた。
 認められたはずの自分と、置いていかれたような自分。その両方を抱えながら、メグミは日々を過ごした。


***


 企画『変態痴女ハーレム』の、撮影当日。
 都内のスタジオの控室は、メイクの匂いとライトの熱気でむんとした空気が漂っていた。

 メグミは共演する女優、監督やスタッフたちに一通り挨拶をし、メイクルームで自分の準備を始めた。すると、後ろから声をかけられた。

「……あの、メグミさん。ちょっといいですか?」
 話しかけてきたのは、同じ事務所の後輩、○○マイ。年齢は1つ下。セミロングの茶色のウィッグを被ったまま、落ち着かない様子で立っている。
「どうしたの?」
「今日の衣装なんですけど……。その……この謎のひもの着け方っていうか……。メグミさん、どうしてるのかなって」

 マイは思い悩んでいたが、謎のひもという言葉に、メグミは思わず笑ってしまった。

「あぁ、それね。ちょっと見てて」
 メグミはバスローブを脱いで裸になると、マイと同じように自分にも与えられた衣装を着た。
「この衣装、こうやって胸や腿のラインを強調するの。アソコ、最初はちょっと食い込んで痛いかも。でも、撮影中はローション使うから、擦れる感じは減るよ。それとね、こうやって下を出してみるとね……」
 メグミはひもの隙間から、アンダーヘアをちょろちょろとはみ出させた。
「うわ……、どエロいですね」
 マイは驚いていた。メグミはマイに衣装を着せ方を教えると、彼女のひもブラをそっとずらし、にこりと笑った。
 マイは少し照れながらも、鏡を見て小さく頷いた。

「今日の監督は元々フェチ向け撮ってた人だから、衣装はちょっとずつ脱いだ方がいいよ。おっぱいを出すときもいきなりは全部見せないで。乱れてく構図が好きだから」
「あっ、そうなんですか?」
「うん。あと、最初の撮影の男優さん、左利きだから、立ち位置はそこを意識して。女の子が4人もいると、どうしていいかわからなくなるかもしれないけど、まずはそこを覚えておけば大丈夫。相手もベテランだし、きれいに映るように動いてくれると思うよ」
 メグミが説明すると、マイはお辞儀をした。
「ありがとうございます……。私、この業界入ってそろそろ1年経つんですけど、複数プレイって初めてで……。だからこういうの、慣れてなくて」
「大丈夫。最初はみんなそんなもんだよ。私だって、最初はカメラどこにあるかすらわかんなかったし」
 メグミが笑うと、マイも小さく笑った。その笑顔が少しだけほぐれたのを見て、メグミは安心した。

「現場で困ったら、ツンツンって私のおしり触って。一緒に頑張ろう!」

「……はい!」


***


 カメラのランプが灯る。

 ベッドセットに女優4人、男優1人。最初のカットは4人が1人に群がる構成。複数人が絡み続ける中で、それぞれの女優を目立たせる必要がある。

 思えば、デビューから最初の6本を除けば、メグミのキャリアのほとんどはいろんな女優たちとの絡み合いだった。
 素人として出演したAVで掴んだ「何かできるかもしれない」という感触。
 売れない下積みの中で学んだ「自分にできることを、自分にしかできないことを、ちゃんとやる」という意識。
 レイさんとの出会いで教えられた「本気で挑む」こと、「進み続ける」ことへの覚悟。
 不安と迷いの中で見つけたそれらは、やはり間違ってなかったと今は思える。

「ほらぁ~。チンポのテンポ、もっとビクビク上げないとぉ~!」
 メグミはおちんちんを欲するとろけた笑顔を作りながら、テンポと視線を調整し、男優の動きに合わせて他の女優との距離感も計った。
 胸を触られるタイミング、カメラに抜かれる角度、喘ぎ声の出し方……その全てが自然に映るように動き続ける。

「う、うぅん……、気持ちいい……です」
 女優4人の中で、マイの動きだけはやはり固かった。ローションまみれの男優の手が4人の体をまさぐる最中、メグミはさりげなくマイの体にローションを塗った。

 Fカップはあるであろう、いいおっぱい。男の目を惹くぷっくりとした乳首は、単純にエロい。ややふくよかな身体は柔らかく、それでいて指が埋もれない程度に張りもある。顔も可愛らしく、笑顔にはほんわかとした優しさが溢れる。
 メグミにはない、抱きしめたくなる女性らしさ──ちゃんとできれば、この子は伸びる。

「マイちゃん……。乳首、かわいいね……」
 騎乗位。ひとりが挿入、もうふたりが手マンをされる中、メグミは男優の指先に喘ぐマイの乳首に吸い付いた。
 身体がビクッと震え、「ひゃん」と可愛らしい声が漏れる。
 謎のひもからこぼれるおっぱいを持ち上げ、ぷくっと勃った乳首をカメラに見せつける。おっぱいは重く、今にも暴れ出しそうな勢いがある。

 順番に絡みを続ける中、時折、マイの指先がツンツンとメグミに触れる。
 メグミはちょっとしたアイコンタクトと指の動きで、マイを男優の体に、そして他の女優の体に導いた。

(よし、いい感じ……)

 女優としての本領が出るのは、こういう瞬間だ。自分の快楽のためじゃなく、自分だけが目立つためでもなく、作品としての仕上がりと空気を感じ取りながら、現場を動かすこと。それが、今のメグミにとっての「演技」だった。

 ラスト。男優の中出しを受ける女優はメグミ。
 正常位でメグミがピストンを受けているとき、またマイがツンツンした。
 見れば、メグミの両側は他ふたりの女優で埋まっており、マイは完全にフレームの外に弾かれている。

「マイちゃん。おチンポイクとこ、一緒に見よぉ~♡」
 メグミはマイを呼び、膝枕をしてもらった。
 顔の上には、あの勢いのあるおっぱい。メグミが正常位で突かれるたび、身体の振動がマイにも伝わり、おっぱいがぷるぷる震える。

(でも、私の顔も映るようにね)

 メグミはマイの身体を少しだけ傾けて、ちゃんと顔が映る角度で中出しを受けた。膣奥おくに届いた精液は、なんだかいつも以上に熱く感じられた。


***


 カットの声がかかる。

 演者とスタッフがベッドセットから離れていく。
 まず、男優から、続いて監督からお礼を言われた。嬉しかった。共演の女の子たちとも「お疲れ様」と声を掛け合った。

 最後に、マイが顔を紅潮させながら、そっとメグミのそばに来た。
「……ありがとうございました。なんて言うか、すごく、安心できました」
「うん、マイちゃんよかったよ。次のカットも頑張ろう」
「なんか、初めてちゃんとできた気がします。次のカットは、ちょっとでもメグミさんの役に立てるように頑張ります!」
 マイの屈託のない笑顔を見て、メグミは自分の胸の奥があたたかくなるのを感じた。

 まだ自分の「表現」に迷い悩んでいたあのころ、メグミは誰かの助けを求めていた。支えてくれる何かを探していた。

 この業界に入ってから、かつての自分に誰かがしてくれたように、今は自分が誰かを支えている。
 そう思えたこの日が、心を潤す小さなぬくもりが、これからの道を照らしているような気がした。
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