おせっかい転生幼女の異世界すろーらいふ!

はなッぱち

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プロローグ 

「ここあおそと(ここは外ですか)?」

 くるりと周囲を見まわしながらウサギに尋ねる。見上げれば天井があり、遠く離れているが左右には壁がある。外でないのは明らかなのだが、パチパチと火が爆ぜる音がすると思ったら簡易的なかまどに薬缶のような物がかけてあったり、止まることなく水が湧いている(のに辺りは水浸しになっていない)苔むした岩が目を引く。

「ここは城の中だ。外ではない」

 ウサギは大きくなった鼻をフンフンと動かしながら、時折驚いたように動きを止め、器用に溜め息のような呼吸をしている。興味深く眺めていると、気まずそうに違う方向へ顔を向けられてしまう。

「久しぶりに無茶な力の使い方をしたからな、主人はしばらく目を覚さないだろう……丁度よく巨大化したことだ、自分が城内を案内しよう」

 諦めたように顔を元の位置に戻してくれたウサギは、そう言うと「行くか?」尋ねてくれた。元気よく返事をすると、またひょいと頭の上に乗せてくれる。ウサギの毛は薄汚れた色をしているのにふかふかで、誘惑に負けてうつ伏せで寝転んでみた。

「やぁらかー(柔らかい)」
「そりゃなによりだ」
 
 ウサギは少し呆れているのか投げやりに呟くと、ぴょんぴょん跳ねて、あっという間に妖精さんたちが吹っ飛ばした扉まで戻ってきた。軽自動車ほどの巨体が飛び跳ねるのだから当然とも言えるけれど、後ろを見ると埃が霧のように舞い上がっている。
 
 軽自動車サイズのウサギの上から見ても、廊下は広く天井は高い。ウサギ自身が『城内』と言っていたので、ここはお屋敷ではなくお城なのだと認識を改めてみる。そう思って改めて眺めれば、経済的に破綻した名残が散見できた。

 装飾品の類が一つもない。単純に置かれた物がないだけでなく、壁や手摺りに故意に削り取ったような箇所が規則的な間隔をあけて無数にある。きっと元は美しい細工が施してあったに違いない。

「案内と言っても、見ての通り何もないんだがな。山ほど部屋はあるが使っているのは、さっき見た主人の部屋とあんたの部屋くらいだ」

「あるぅー?」

 ウサギはどこに住んでいるの? という雰囲気を込めて尋ねると、一応は伝わったらしく「自分の寝床は外にある」と教えてくれた。

「……本当なら自分がする必要はないんだが……本人が出来るのを待てばいつになるか分からんので、自分が主人について簡単に説明しておく」

 あまり気乗りしないのか、ウサギは申し訳なさそうな声で言った。廊下を勢いよく飛び跳ねて進んだ先は、さっき吹っ飛ばした扉と同じ幅の階段が上へと続いている。ウサギは私を落とさないよう器用に爪先でゆっくりと階段を登り始め(私の父ではないらしい)このお城の旦那様について話してくれた。

「グラハムは元人間だ。二十年ほど前に侵略者の掃討で功績を上げ、枷を外されて精霊府に召し上げられた。その時からこの土地を自身の領土として管理している。まあ簡単に言えば、人間から外れて、貧乏くじを一手に引き受ける羽目になったんだ」

「かせぇー?」

「自分も詳しくは説明出来ないが、主人はもう人間ではないんだ。見た目は人であった頃と変わらないがな。その姿が二十年変わっていないって言えば分かるか?」

「ふろおー!」

「そうだ不老だ。下界に生きるものには逃れられない『老い』から解放されている」

 どうやら旦那様は同年代っぽい。せっかくなので不老とセットで語られる不死についても聞いてみると、ウサギは少し悩んでから口を開いた。

「下界でならば不死と呼んでも問題ないだろうが、ここでは難しいだろうな」

 何かを苦々しく思っているのが声から伝わってくる。

「グラハムの枷を外した連中がいる世界だからな。与えることが出来るなら、奪うことも容易いだろう」

 多分違うと思うけど、会社で言う上司みたいな存在がいるのかもしれない……そう言えばハムの人は疲れ果てた顔をしていたので、あながち外れてはいないのかな。それなら、暫く放置されていたのも頷ける。かなりブラックな環境であることは確定しちゃうんだけど。

「外に出るぞ。眩しいから気をつけろ」

 ハムの人の事情を頭の中で整理していると、ウサギにそう声をかけられた。長かった階段の終点が眩しく見えてきた。埃とカビが蔓延る建物の中から飛び出すと、文字通り空気が一変する。

「うわぁー」

 薄暗い階段の先に広がっていた景色を見て声も弾む。お城の頂上からの、部屋の窓からは見えなかった見晴らしは真っ青な髪よりも間違いなくファンタジーだった。

 淡い色の水面がどこまでも続いている。そして、その先には輝く光の柱が宙に向かって伸びていた。光の柱には大小様々な円盤のようなものがあったが、それ以外は何一つない。見上げても見下ろしても、それ以外のものは見つけられなかった。

 屋上に出た途端、別の世界に繋がっていたとしか思えない。澄み渡る空気は少しあたたかく春の陽気を思わせ心地いい。どこからか優しく風が吹き抜けると、私の周りを無数の光が祝福するように舞い上がった。いつも見えていた光たちは、この場で見ると光の柱と同じ色をしていた。それを不思議に思っていると、私の混乱にトドメを刺すようなウサギの声が聞こえた。

「ここがあんたの世界だ。最も神に愛されし子供よ」

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