おせっかい転生幼女の異世界すろーらいふ!

はなッぱち

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第一章

 ハムの人は初めて対面した日から三日間、全く目を覚さなかった。モモに頼んで何度か様子を見に行ったけれど、病的に白い顔色のせいか生きてるように思えなかった。

「大丈夫だ。枷を外された人間は過労では死なない。体力が回復するまで待ってやってくれ」

 ハムの人を看病しているウサギは、軽自動車サイズから更に変化して今度は人と同程度のサイズ、と言うかウサギを無理やり人型に伸ばしたみたいな姿でそう言う。顔はもちろん足も手もウサギのもので、サイズだけが人間規格という悪夢みたいな姿に驚く。屋上で見た景色だけでなく、そこにいる人? まで今までの常識とは違っているのを改めて目の当たりにして、やっていけるかなと不安にもなる。喋る人間サイズのウサギを見ても、一緒に同行していたモモは顔色一つ変えなかったので、こちらの世界では当たり前なのかもしれないけれど、どうにも慣れない。城の外に出たことはないので、外の世界、あの屋上で見た世界に住んでいる人たちが、どんな姿形をしているのか想像するのも難しかった。

 日課になりそうだったお見舞いも4回目はなくなった。モモが私の身支度を済ませてくれたタイミングで、小さく部屋の扉を叩く音がしたからだ。
 
「またお待たせしてしまったようで……申し訳ない」

 扉を開けると、私たちが初日に持参したお見舞いの品を詰めたカゴを携えた顔色の悪い青年が立っていた。カゴの中身は私たちが詰めたありあわせの物ではなく、見たことのない華やかな果物(だと思う)がたくさん並んでいる。
 モモは手土産を受け取ると、静かに一礼して部屋を出て行ってしまった。前回もそうだったけれど、同席してはいけないのだろうか。ぼんやりモモの出て行った扉を眺めていると、真っ黒ではなくなった、ハムの人が私の前に跪いた。まだ少し見上げる必要はあるが、しっかりと目が合った。

「フィーネ様はご自身について、どの程度ご理解されているのか伺ってもよろしいでしょうか」

 病み上がりで更に不健康度が増した青白い顔を見つめながら、質問の意味を考える。自分自身については嫌気が差すほど理解していると思う。なんせうん十年の付き合いだから。中身である私については分かっている。

 自分の小さくなった手のひらに視線をやり、首を左右に振って答えると、大きな手が優しく重ねられた。その手は青白い肌や小綺麗な顔立ちからは想像できないくらい、働き者の手だった。

「我々は神のもとへと至るために存在していると言われています」

 人や車サイズに伸びたり縮んだりするウサギがいる世界、そりゃ神様の一人や二人いて当たり前な気もする。改めて訪ねて来ていきなり神様のお話、どう考えても五分では終わりそうにないので、重ねられた手を握り返し、部屋にあるテーブルへと引っ張って行く。こちらの意図を察してくれたのか、ハムの人は「ありがとうございます」とお礼を言うと、先に私を椅子の上に座らせてくれる。モモが用意してくれた私専用のクッションが敷かれた椅子に座ると、きちんとテーブルの高さに体が合うようになっていたので、綺麗な所作で椅子に腰掛けるハムの人を眺められた。

 改めて観察してみると、ハムの人、グラハムは育ちの良さそうな顔立ちをしていた。それだけでなく、地方に住んでいた私の周りでは滅多にお目にかかることないレベルのイケメンだった。けれど、デフォルトらしい疲れに病み上がりというスパイスが加わり、高級な鰻にマスタードやケチャップを塗りたぐったような残念感が凄い。もっと自分を大事にした方がいいよと言いたくなる。

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