圏ガク!!

はなッぱち

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新学期!!

やっかいな保険

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 教室に戻ると、オレの席に皆元が一人で座っていた。少しだけ気まずかったが、変な空気のまま昼休みを終わらせたくなかったので、真っ直ぐ自分の席へ向かう。

「ほったらかしのパン、二個とも食ったぞ」

 放置していたパンについて報告してやると、オレが持ってくる事を期待していたのか、皆元は馬鹿でかい溜め息を吐きながら机に突っ伏した。

 後ろのスバルの席から椅子を引っぱり出して座る。あんな状態で目の前に置かれたら、食う以外の選択肢ないだろ。今日の配給、缶詰だったし……そう小声で言い訳していると、ムクッと伏せていた皆元が起き上がった。怒っているのか呆れているのか判断し辛い顔だった。

「……誰にも絡まれなかったか?」

 質の悪いのに絡まれた。即答しそうになったが、皆元が聞いているのは、その事じゃあないってのは分かる。

 大丈夫だと答え、ついでに山センたちから聞いた旧館が安全だという事情についても軽く説明した。当事者ではない皆元も、当然のように知らなかったらしく「そうなのか」と驚いた顔を見せる。

「………………」

 そして無言の視線。『それはそれで大丈夫なのか?』と言いたそうな顔だ。って、どういう意味だ! 大丈夫だよ、べ、別にオレはそうゆうのじゃねぇし! 先輩とはその普通に? 遊んでやってるだけだし!

「なら、相手は三年だけか」

 軽く笑いながら皆元は言う。なんで笑うんだ。くそ、なんかちょっと不安になるだろ。

「そうだよ。それも髭とは連んでない奴だけだと思う」

 髭? と首を傾げられてしまったので、番長の事だと補足する。あまり詳しくはないが、三年は髭に一目置く奴が大半を占めているはずだ。ふらふら興津になびく奴は少ないと見ていいだろう。

 残る一年も、オレと同様に闇市と接点ある奴の方が少ないんじゃないか? 鼻先に十万が吊されている雰囲気は感じない。仮に闇市との接点があったとしても、一年が相手ならオレにとって自分のテリトリーでもある。少し騒げば暴れたいだけの奴がわんさと湧いて出る。まあその辺は平常運転だ。

 矢野君たちのおかげで、だいーぶハードルは下がった。油断は出来ないが、それは皆元の不安を少しは取り除いてくれたらしい。

「分かった。おれは放課後、お前の望む通り、由々式たちの所にいる」

 オレが別行動を取る事を納得してくれたと思ったのだが、皆元は「ただし」と少し強めの口調で付け加えた。

「保険はかけさせて貰うぞ。お前が思ってる事と同じだ。おれらだってお前が胸糞悪い奴らにいいようにされるのなんて見たくないんだ」 






 放課後、皆元はオレの方を一瞥すると、迷いのない足取りで教室を出て行った。そして、入れ代わるようにタイミングよくやって来た奴の顔を見て、皆元の言う『保険』の意味を理解した。

「えべっさん、助っ人に来たよん」

 何が楽しいのか、真っ直ぐオレの元へやって来たコウスケは上機嫌にヘラヘラ笑っている。一見、人好きしそうな顔をしているが、実際は暇つぶしに暴れたいだけという、ストレッチや筋トレ代わりに人を殴る危ない奴で、何を期待しているのか丸わかりだ。

 皆元が事情を話したのだろう。教室の空気が一瞬で変わるくらい、やる気に満ちている。オレは皆元のかけた保険をどうしたものかと、悟られないよう溜め息を飲み込んだ。

「それなら間に合ってる。お前らの世話になる気はねぇよ」

 出来れば無駄に血の気の多い奴らとは距離を置きたい。てか、オレがやたらと目の敵にされるのは、元はと言えばこいつらのせいでもある。暇を持て余したこいつらが、憂さ晴らしでふっかけてたケンカに散々巻き込まれたのだ。

「まあまあ、そう言わないでよ。絶対えべっさんにとっても悪い話じゃないからさ」
 オレが断るであろう事は予想していたのか、コウスケは肩を竦めた。

「相手って三年なんでしょ。めんどくさいのはお受験で忙しそうだから、そうだな……余裕で今日中に片付けられるんじゃない」

「ッ今日!?」

 魅力的な提案に思わず反応してしまった。矢野君たちのおかげで安全地帯が増えたとは言え、簡単に諦めてくれるほど甘い相手とは思えないので、興津との根比べになると覚悟していた。それが、今日中に解決とは……一体どんな魔法を使う気なんだ。

「あはは、えべっさんもテンション上がってきたね。そうだよ、こういうイベントは楽しまなきゃ」

 他人事だと思いやがって。こっちはケツ狙われて追いかけ回されてんだぞ、それをイベントってどんな強靱なメンタルしてんだよ、お前の中のオレは。

「じゃあ、早速行きますか。オレたちの秘密基地へごあんなーい」

 コウスケが更に魅力的な単語を重ねてくる。『秘密基地』か。いや、ロクでもない場所なんだろうけど、興味はちょっと……ん、結構ある。一度そう思ってしまうと、ついて行かないという選択肢はなくなってしまった。
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