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蜜月
品行不良少年!
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大男である先輩と、オレより小柄な小吉さんが押す(モップを押すって変な表現だが、人が一人乗っていると押すってのがぴったりくる)のでは、事情が違うのは当たり前で、小吉さんが思っていたような勢いでモップが走りだすまで暫くかかった。
先輩の時は真っ直ぐ走っていたが、オレが片足で助力したせいか、モップは勢いよく蛇行してしまった。
そこに運悪く三馬鹿の一人が飛び出してきて、オレらは正面から衝突、事故が起こった。三馬鹿もオレらと同じく遊び半分でふざけていたらしい。
どちらともなく『とにかくお前らが悪い』と言い合いになり、掃除用具で互いの主張をぶつけ合った。簡単に説明すると、モップや箒でちゃんばらをやらかした。
元々古かったのか、オレらの力加減がヤバかったのか、双方の武器は破壊され、騒ぎを聞きつけて怒鳴り込んできた担任に教育的指導をされそうになったのだが、先輩がそれを見事に受け止めてしまった。
「庇う気があるなら、迷惑かけるような事をさせるな!」
そして、当たり散らすような担任の指導は先輩にも及んでしまった。自分に対するものは止める気はなかったのか、バチーンと大きな音で先輩の頬が叩かれた。
「ちょっ、先輩は関係ねぇだろ! 馬鹿やってたのはオレらだけだろ!」
慌てて担任に食って掛かったが、それを先輩の腕が遮った。そのおかげで、速攻で振り下ろされた担任の拳骨は空振りに終わる。
「関係はあるな。原因を作ったのは俺だから、今回の責任は全部俺にある」
不満そうなオレを困った顔で見た後、先輩は担任に「すみませんでした」と頭を下げた。小吉さんがそれに続いて大声で謝罪し深々と頭を下げたので、一年のオレと三馬鹿も(テンションこそ下がるが)同じように続けると、担任は面倒臭そうにデカイ溜め息を吐いた。
圏ガクの中では、生徒が注意を受けて反省すると、更に激しくなじる教師とクールダウンする教師がいる。前者は頭おかしい奴らだが、後者はしっかり反省し終わるまで付き合う律儀な奴らで、担任は後者だった。
ちなみにどちらも面倒だったりする。
前者は満足するまで怒鳴り散らせばそこで終了するが、後者は生徒が反省する過程を用意しやがるのだ。
「全員でここの掃除を終わらせろ。終わるまで飯抜きだ」
まともな掃除道具は取り上げられ、オレらに手渡されたのは、人数分の雑巾とブリキのバケツのみ。担任は先輩がオレを座らそうと用意していた椅子にドカッと座り、早く始めろとばかりにオレらを睨み付けた。
やる以外の選択肢はなく、オレらは雑巾を手に取る。お湯なんて上等な物で掃除は出来まい。氷のような冷たい水で、何度も雑巾を絞るのかと、始める前から溜め息が出そうになるが、監視が居るので逃げられないと覚悟を決めた時、ひょいとオレの雑巾が誰かに奪われた。
「セイシュン、お前の分も俺が動くから心配するな」
「先輩……」
二枚の雑巾をバケツに放り込み、濡らした雑巾を引き千切るくらいの勢いで絞る。床に雑巾を放り投げ、何故かくるりと背中を向けた。
そして、何を思ったのか担任の隣にもう一つパイプ椅子を並べた。
「お前もここに座って見てればいい」
無茶言うなと、オレが口にする前に、担任が先輩の頭に拳骨を食らわせた。オレの体調が悪いんだと、必死で訴える先輩だったが、モップをへし折るくらい振り回す奴なら掃除くらい出来ると、バッサリ切り捨てられた。
そんなやり取りを聞き流しながら、自業自得のオレは、小吉さんと並んで雑巾掛けをやりきった。気合い入れて駆け抜けた訳だが、何故かまた三馬鹿と事故って、無駄に時間がかかり、昼食が夕食になってしまった。
夏休みと違って楽勝だと思った奉仕作業だったが、疲労と空腹と底冷えする寒さで本気で死にそうだった。
唯一の救いは、帰校するバスに間に合わなかったおかげで、温かい夕食をご馳走になった事くらいだ。
「適当でいいって言ったのに随分とキレイにしてくれたのねぇ」
雑巾で磨き上げた床を見て、村主さんが呆れ半分で笑う。モップをへし折った件を先に報告したので、多少の嫌味も含まれている訳だが、その後オレら六人の生徒と担任を連れて、ラーメン屋に連れて行ってくれた。
なんでも注文していいと言われたので、遠慮の欠片も持ち合わせていないオレらは、食いたい物を食いたいだけ頼んだのだが、注意もされなかった。担任は申し訳なさそうにしていたが、さすが村長を名乗るだけあって、会計を持ってくれる村主さんは涼しい顔をしていた。ついでに晩酌用にと、担任に土産まで持たせたほどなので、村長の懐具合を心配する必要はなく、遠慮せずインスタント以外のラーメンを堪能した。
そして、いつもより遅く帰校し、その足で風呂に直行。冷えた体を芯から温める湯船など期待できるはずもなく、湯を浴びるだけの風呂を済ませた。
汚れを落とすだけの風呂で、いちゃつく為の体力が回復するはずもなく、その日は部屋に戻るなりコタツの心地よさに身を任せ、意識を失ってしまった。
先輩の時は真っ直ぐ走っていたが、オレが片足で助力したせいか、モップは勢いよく蛇行してしまった。
そこに運悪く三馬鹿の一人が飛び出してきて、オレらは正面から衝突、事故が起こった。三馬鹿もオレらと同じく遊び半分でふざけていたらしい。
どちらともなく『とにかくお前らが悪い』と言い合いになり、掃除用具で互いの主張をぶつけ合った。簡単に説明すると、モップや箒でちゃんばらをやらかした。
元々古かったのか、オレらの力加減がヤバかったのか、双方の武器は破壊され、騒ぎを聞きつけて怒鳴り込んできた担任に教育的指導をされそうになったのだが、先輩がそれを見事に受け止めてしまった。
「庇う気があるなら、迷惑かけるような事をさせるな!」
そして、当たり散らすような担任の指導は先輩にも及んでしまった。自分に対するものは止める気はなかったのか、バチーンと大きな音で先輩の頬が叩かれた。
「ちょっ、先輩は関係ねぇだろ! 馬鹿やってたのはオレらだけだろ!」
慌てて担任に食って掛かったが、それを先輩の腕が遮った。そのおかげで、速攻で振り下ろされた担任の拳骨は空振りに終わる。
「関係はあるな。原因を作ったのは俺だから、今回の責任は全部俺にある」
不満そうなオレを困った顔で見た後、先輩は担任に「すみませんでした」と頭を下げた。小吉さんがそれに続いて大声で謝罪し深々と頭を下げたので、一年のオレと三馬鹿も(テンションこそ下がるが)同じように続けると、担任は面倒臭そうにデカイ溜め息を吐いた。
圏ガクの中では、生徒が注意を受けて反省すると、更に激しくなじる教師とクールダウンする教師がいる。前者は頭おかしい奴らだが、後者はしっかり反省し終わるまで付き合う律儀な奴らで、担任は後者だった。
ちなみにどちらも面倒だったりする。
前者は満足するまで怒鳴り散らせばそこで終了するが、後者は生徒が反省する過程を用意しやがるのだ。
「全員でここの掃除を終わらせろ。終わるまで飯抜きだ」
まともな掃除道具は取り上げられ、オレらに手渡されたのは、人数分の雑巾とブリキのバケツのみ。担任は先輩がオレを座らそうと用意していた椅子にドカッと座り、早く始めろとばかりにオレらを睨み付けた。
やる以外の選択肢はなく、オレらは雑巾を手に取る。お湯なんて上等な物で掃除は出来まい。氷のような冷たい水で、何度も雑巾を絞るのかと、始める前から溜め息が出そうになるが、監視が居るので逃げられないと覚悟を決めた時、ひょいとオレの雑巾が誰かに奪われた。
「セイシュン、お前の分も俺が動くから心配するな」
「先輩……」
二枚の雑巾をバケツに放り込み、濡らした雑巾を引き千切るくらいの勢いで絞る。床に雑巾を放り投げ、何故かくるりと背中を向けた。
そして、何を思ったのか担任の隣にもう一つパイプ椅子を並べた。
「お前もここに座って見てればいい」
無茶言うなと、オレが口にする前に、担任が先輩の頭に拳骨を食らわせた。オレの体調が悪いんだと、必死で訴える先輩だったが、モップをへし折るくらい振り回す奴なら掃除くらい出来ると、バッサリ切り捨てられた。
そんなやり取りを聞き流しながら、自業自得のオレは、小吉さんと並んで雑巾掛けをやりきった。気合い入れて駆け抜けた訳だが、何故かまた三馬鹿と事故って、無駄に時間がかかり、昼食が夕食になってしまった。
夏休みと違って楽勝だと思った奉仕作業だったが、疲労と空腹と底冷えする寒さで本気で死にそうだった。
唯一の救いは、帰校するバスに間に合わなかったおかげで、温かい夕食をご馳走になった事くらいだ。
「適当でいいって言ったのに随分とキレイにしてくれたのねぇ」
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そして、いつもより遅く帰校し、その足で風呂に直行。冷えた体を芯から温める湯船など期待できるはずもなく、湯を浴びるだけの風呂を済ませた。
汚れを落とすだけの風呂で、いちゃつく為の体力が回復するはずもなく、その日は部屋に戻るなりコタツの心地よさに身を任せ、意識を失ってしまった。
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