圏ガク!!

はなッぱち

文字の大きさ
399 / 411
蜜月

真冬の真心

しおりを挟む
 先輩の所へ行く前に内容を確認しようかと思ったが、一度見たからと言って映像を見ながら解説出来る自信は全くない。それなら先輩と一緒に見る方がいいと、オレはすぐに由々式と一緒に部屋を出た。

 約束の時間には早かったが、変に待ち時間があるとタブレットを開いてしまいそうだったので、待ち合わせ場所の旧館自販機前を素通りして校舎へ向かう。すると「セイシュン」と聞き慣れた声がオレを呼び止めた。

 振り返ると、驚いたような顔をした先輩と目が合った。

「すげぇ早いじゃん」

 オレが言うと、先輩は少しだけ不安げな表情を浮かべる。

「お前だって早いだろ。何か他に用事でもあったか?」

「用事なんてないよ。今から先輩の部屋に行こうと思ってた。一緒に見たい物があってさ」

 しっかり否定してやると、先輩から不安が消えたのが分かった。必要な事だったとは言え寮長の元へ足繁く通い、大事な恋人を不安にさせたのだなと改めて反省する。本当だったら手を繋いで部屋まで歩きたかったが、今は休日の真っ昼間だ。少しだけ先輩の腕を叩いて「行こう」と歩き出す。

「見たい物ってなんだ? それか?」

 不自然にならない距離で歩く先輩が、オレの手元のタブレットと数枚の紙を見ながら聞いてくる。内容には触れず簡単に頷くだけで答えると「何か必要な物とかあるか?」と重ねて聞いてきた。欲しい物があるなら買ってくるぞと、太っ腹な顔を見せる先輩に思わず「コタツ」と返してしまった。

「セイシュンはちょっと可愛げがないな」

「なんでだよ。素直で可愛いだろ」

 図々しく反論してやると、溜め息を吐かれてしまった。呆れたと言うか、諦められたような顔で先輩は何か食べたい物はないかと、改めて具体的に聞いてくれる。冬休みに食べきれなかった食料がいくつか残っていたので、昼飯はそれにしようと提案すると、少しだけ残念そうな声で「分かった」と先輩は頷いた。

 言い方は微妙だが、先輩から甘えさせたいオーラみたいなモノがダダ漏れなので、ちょっとくらい無茶振りしてもよかったかもしれない。まあ、今は正直その余裕がないので、可愛げのない返事しかしてやれなかった。
 今から本当の理由も言わず、先輩の名前の元ネタになった子供番組を二人で鑑賞するのだ。どんな感想が聞ければ、自分が満足するのかさえ分かっていないのに。

「当たって砕けろだな」

 オレが一人で気合いを入れていると、寄り道もせず寒さに任せて歩いていたせいで、あっという間に先輩の部屋にたどり着いてしまった。ぐだぐだと考えていても仕方がない。思い切って部屋の扉を開けると「え?」思わず間抜けな声が出てしまった。

「驚かせたかったのに先に言い当てられると複雑だな」

 困ったように笑って言う先輩の声を聞きながら、オレは冬休みの間に染みついた奇行に走る。

「コタツだー‼︎」

 荷物を抱えたまま、頭からコタツの中へスライディング。冷たい空気を遮るコタツの中は多少寒さはマシだったが、懐かしい心地良さは不在だった。

「まだ電源入れてないから、ちょっと待ってろ」

 そう言いながら布団をめくって中を覗き込んだ後、先輩が部屋の隅でゴソゴソし始めたら、カチッと音がしてコタツの中がほんのり明るくなった。じんわりと温かいが降ってきて、オレはようやく床を少しばかり匍匐前進して布団から顔を出す。

「なんで先輩の部屋のコタツ復活してんの?」

「ん、真山に借りたんだ。夜以外は別の場所で勉強してるから無理を言った。夜は返さないと駄目なんだけどな」

 冷蔵庫からレンタルしたのか。冷蔵庫のコタツは冬休みに借りたじいちゃんのコタツより大きめで、よく見ると先輩の部屋はコタツに占拠されている状態だった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...