57 / 59
第三章
割り切って信頼してやりました。
しおりを挟む
「別に何もしていませんわ。ユリア様、いい加減になさいまし。泣きたいのは私の方ですのよ」
一週間、監禁されていた事を告げると、サリー様は表情を曇らせ、ユリア様を胸元から引き剥がしました。
「違うの、違うのよ。この子の方こそ何もしていないなんて嘘ばっかりなんだから!」
ご自分のお年を考えて発言なさったらと、注意してさしあげるべきでしょうか。聞き苦しく見苦しいユリア様は、私をやたらと指さしながら、サリー様と別れてからの事情を説明しました。
色々と訂正も致しましたが、概ね事情を理解して頂けたらしいサリー様は、これまた大きな溜め息を吐いて私を睨みました。
「ババアの兵隊相手に大立ち回りとは……恐れ入ったね。アンタの美貌なら、その辺の女なんて数に入らないだろうに」
「勘違いなさらないで。別にあの方たちに同行して欲しくなくて排除した訳ではありませんわ。と言うか、排除ってなんですか、失礼な! 私は彼女たちを更正させるべく、少々手荒ですが手を差し伸べたにすぎません」
「呪術院って言ったね。アレが何であるか知ってたとは意外だよ」
「……少し、調べれば……誰でも分かる事ですわ」
「いいや、多少の心得があっても気付けないもんさ。呪いとして形になってないからね」
サリー様は鋭い視線を私に向けてきます。それを私は真正面から受け止めます。それは私が受け止めなければならない批難。そして、今の私には、受け止めた批難を投げ捨てられる理由があります。今の私は、あの家で育ったアリシアではないのですから。
「あのような不健全なモノは燃やし尽くしてしかるべきです。私は何か間違っていまして?」
「いいや、胸がすくねぇ。さぞや、ババアはお怒りだろうよ。二人共、よく首と胴体が繋がったまま教会を出られたもんだ」
私の言葉に納得してくれたのか、サリー様は豪快に笑い出しました。そして、スッと真面目な顔を見せたかと思うと「安心しな」と私とユリア様の肩に手を回して不敵な表情を浮かべます。
「あんたらはアタイが守ってやるよ。ババアには指一本触れさせやしないさ」
私のナイト様は、またもユリア様を号泣させ、ほんの少し私の心も軽くさせました。まあ、贅沢を言わせて頂くなら、やはりこういった台詞は殿方に……いえ、止めておきましょう。
エイダンとのご縁が成就するまで、このお人好しのナイト様に私の貞操を守って頂かねば。男所帯の大遠征。いくら高嶺の花とは言え、おかしな気を起こす輩がいないとも限りません。
「頼りにしておりますわ、サリー様」
「おお? あんたが頭を下げるなんて、こりゃ珍しいこともあるもんだ」
一応、礼を尽くしてお願いしておりますのに、サリー様は失礼にも、鳩が豆鉄砲を食ったようなお顔をなさいます。けれど、どうしてか腹もあまり立ちません。
「任せな。アンタに降りかかる火の粉は、全部アタイが振り払ってやるよ」
乱暴な口調がこれ以上なく頼もしく聞こえます。私はサリー様の事を何も知らないというのに……不思議な方です。
一週間、監禁されていた事を告げると、サリー様は表情を曇らせ、ユリア様を胸元から引き剥がしました。
「違うの、違うのよ。この子の方こそ何もしていないなんて嘘ばっかりなんだから!」
ご自分のお年を考えて発言なさったらと、注意してさしあげるべきでしょうか。聞き苦しく見苦しいユリア様は、私をやたらと指さしながら、サリー様と別れてからの事情を説明しました。
色々と訂正も致しましたが、概ね事情を理解して頂けたらしいサリー様は、これまた大きな溜め息を吐いて私を睨みました。
「ババアの兵隊相手に大立ち回りとは……恐れ入ったね。アンタの美貌なら、その辺の女なんて数に入らないだろうに」
「勘違いなさらないで。別にあの方たちに同行して欲しくなくて排除した訳ではありませんわ。と言うか、排除ってなんですか、失礼な! 私は彼女たちを更正させるべく、少々手荒ですが手を差し伸べたにすぎません」
「呪術院って言ったね。アレが何であるか知ってたとは意外だよ」
「……少し、調べれば……誰でも分かる事ですわ」
「いいや、多少の心得があっても気付けないもんさ。呪いとして形になってないからね」
サリー様は鋭い視線を私に向けてきます。それを私は真正面から受け止めます。それは私が受け止めなければならない批難。そして、今の私には、受け止めた批難を投げ捨てられる理由があります。今の私は、あの家で育ったアリシアではないのですから。
「あのような不健全なモノは燃やし尽くしてしかるべきです。私は何か間違っていまして?」
「いいや、胸がすくねぇ。さぞや、ババアはお怒りだろうよ。二人共、よく首と胴体が繋がったまま教会を出られたもんだ」
私の言葉に納得してくれたのか、サリー様は豪快に笑い出しました。そして、スッと真面目な顔を見せたかと思うと「安心しな」と私とユリア様の肩に手を回して不敵な表情を浮かべます。
「あんたらはアタイが守ってやるよ。ババアには指一本触れさせやしないさ」
私のナイト様は、またもユリア様を号泣させ、ほんの少し私の心も軽くさせました。まあ、贅沢を言わせて頂くなら、やはりこういった台詞は殿方に……いえ、止めておきましょう。
エイダンとのご縁が成就するまで、このお人好しのナイト様に私の貞操を守って頂かねば。男所帯の大遠征。いくら高嶺の花とは言え、おかしな気を起こす輩がいないとも限りません。
「頼りにしておりますわ、サリー様」
「おお? あんたが頭を下げるなんて、こりゃ珍しいこともあるもんだ」
一応、礼を尽くしてお願いしておりますのに、サリー様は失礼にも、鳩が豆鉄砲を食ったようなお顔をなさいます。けれど、どうしてか腹もあまり立ちません。
「任せな。アンタに降りかかる火の粉は、全部アタイが振り払ってやるよ」
乱暴な口調がこれ以上なく頼もしく聞こえます。私はサリー様の事を何も知らないというのに……不思議な方です。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる