4 / 59
第一章
後悔してやりました。
しおりを挟む
学舎を無事に卒業すると同時に、その時はやってきました。
エイダンが見識を広げる為、旅に出ると言い出したのです。
私には分かってしまいました。見識を広げるなど聞こえのいい言葉は立て前で、本音ではつまらないお家の仕事を手伝うのが嫌で、大好きな剣を振って気ままに生活したかったのでしょう。
正直な所、エイダンが幼い頃に語って聞かせてくれた夢を思い出し、自分の描いていた未来図がガラガラと音を立てて崩れていく気がいたしました。
彼の夢は『悪い奴を倒す勇者になること』だったからです。
ちなみに私の夢は、慎ましくもお家の商売をお婿さんであるエイダンに継いで頂き、何不自由ない環境の中で、家族みんな健やかに、ささやかな幸せを噛みしめながら大往生することでした。
もちろん、エイダンの将来設計を軌道修正しようと試みましたが、彼の思惑の前にその可能性は潰えました。
なんと私も一緒に行こうと、駆け落ちのお誘いを受けてしまったのです。
そこで私の頭は即座に切り替わりました。『どうやってエイダンを引き止めるのか』から『どうやって駆け落ちをお断りするのか』へと。
そうです! これが私の犯した最初の過ちでした。
二人で旅行に行くようなものだよ、そう楽しそうに語る彼の横顔を見ながら、私は世に言う冒険者家業に身を投じる、大叔父様のお話を思い出しておりました。
まるで浮浪者のようなお姿で、お父様に無心される大叔父様は、日々の生活の悲惨さを大盤振る舞いされ、こっそり部屋を覗き見ていた私に衝撃を与えました。
毎号楽しみに購読していた雑誌に載っている小説とは、天と地ほど違うリアルなお話。ほんのちょっぴり夢見ていた憧れの冒険譚が、空恐ろしくなり全て暖炉に放り込んでしまったほどです。
冒険という言葉に感じる恐怖を切々と訴え、なんとかエイダンに同行は出来ないと納得して頂いたのですが、ならば一人で行ってくると無茶を言われるので、私には他に選択肢がなく、二つ目の過ちを犯したのです。
エイダンが見識を広げる為、旅に出ると言い出したのです。
私には分かってしまいました。見識を広げるなど聞こえのいい言葉は立て前で、本音ではつまらないお家の仕事を手伝うのが嫌で、大好きな剣を振って気ままに生活したかったのでしょう。
正直な所、エイダンが幼い頃に語って聞かせてくれた夢を思い出し、自分の描いていた未来図がガラガラと音を立てて崩れていく気がいたしました。
彼の夢は『悪い奴を倒す勇者になること』だったからです。
ちなみに私の夢は、慎ましくもお家の商売をお婿さんであるエイダンに継いで頂き、何不自由ない環境の中で、家族みんな健やかに、ささやかな幸せを噛みしめながら大往生することでした。
もちろん、エイダンの将来設計を軌道修正しようと試みましたが、彼の思惑の前にその可能性は潰えました。
なんと私も一緒に行こうと、駆け落ちのお誘いを受けてしまったのです。
そこで私の頭は即座に切り替わりました。『どうやってエイダンを引き止めるのか』から『どうやって駆け落ちをお断りするのか』へと。
そうです! これが私の犯した最初の過ちでした。
二人で旅行に行くようなものだよ、そう楽しそうに語る彼の横顔を見ながら、私は世に言う冒険者家業に身を投じる、大叔父様のお話を思い出しておりました。
まるで浮浪者のようなお姿で、お父様に無心される大叔父様は、日々の生活の悲惨さを大盤振る舞いされ、こっそり部屋を覗き見ていた私に衝撃を与えました。
毎号楽しみに購読していた雑誌に載っている小説とは、天と地ほど違うリアルなお話。ほんのちょっぴり夢見ていた憧れの冒険譚が、空恐ろしくなり全て暖炉に放り込んでしまったほどです。
冒険という言葉に感じる恐怖を切々と訴え、なんとかエイダンに同行は出来ないと納得して頂いたのですが、ならば一人で行ってくると無茶を言われるので、私には他に選択肢がなく、二つ目の過ちを犯したのです。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
【完結】私が愛されるのを見ていなさい
芹澤紗凪
恋愛
虐げられた少女の、最も残酷で最も華麗な復讐劇。(全6話の予定)
公爵家で、天使の仮面を被った義理の妹、ララフィーナに全てを奪われたディディアラ。
絶望の淵で、彼女は一族に伝わる「血縁者の姿と入れ替わる」という特殊能力に目覚める。
ディディアラは、憎き義妹と入れ替わることを決意。
完璧な令嬢として振る舞いながら、自分を陥れた者たちを内側から崩壊させていく。
立場と顔が入れ替わった二人の少女が織りなす、壮絶なダークファンタジー。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる