転生令嬢の幸福論

はなッぱち

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第一章 

信用を引き裂いてやりました。

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 静かに流れる涙をそのままに、私は鍵の付いた引き出しを開きます。中から、私の足形が幾重にも刻まれた表紙の報告書と、丁寧に切り抜いた新聞記事をスクラップしたノートを取り出しました。

 エイダンが都を旅立ってから、日ごとに届く活躍を面白可笑しく書いた新聞の記事に目を落とします。

 まるで幼い頃に読んだ雑誌に連載されていた冒険譚そのままが、毎日のように彼の安否を知らせてくれていたのです。

 新聞記事に書かれているエイダンは、誰もが褒め称える勇者でしたが、私の知っているエイダンは、誰もが顔を顰めるような変わり者でした。

 でも、私だけは、そんな彼が大好きでした。

「きぃエいッ!」

 一声叫び、気合いでノートを切り裂くよう真っ二つに破ります。床に残骸をばらまき、次の獲物に手をかけたのですが、一瞬躊躇ってしまった私は、きっと怒りに目を血走らせながら、報告書のページをめくりました。

 それは泥棒猫の素性を調査させた探偵さんが寄越した報告書です。

 お父様が大事になさっている悪趣味な絵画を三点ほど質に入れ、私が裏路地に居を構える探偵事務所なる場所を訪れたのは、エイダンが旅立ってから三月ほど経った頃でした。

 毎日のように届く勇者ご一行の記事にこんな一文を見つけてしまったのです。

『エイダン氏の傷を癒やすは、美しき聖女フィアが起こす奇跡の力』

 あのむさ苦しい、いえ、少々粗野が目立つ紳士方を『美しき聖女』などとは呼びません。勇者ご一行に新たな仲間、それも女、しかも美しき聖女様が加入されたなどと、そんな記事を見て、優雅にお茶などやってる場合ではございません。

 普段は必ず避けて通る、治安の悪い裏路地に私は駆け込みました。

 無礼にも下卑た声をかけてくる殿方を何名か張り倒しましたが、自力で見つけた探偵事務所に踏み込むと、私は握り締めた新聞記事を突きつけ、この女の素性を全て洗い出すよう、探偵さんにお願いしたのです。
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